第15話 徐州制覇のために
「こんな所にも兵を伏せていたか。」
逃げる劉備が見たのは街道を塞ぐ臧覇の軍であった。
現在劉備軍は壊走中、臧覇とやり合うには兵が足りない。
「兄貴追いついたぜ。」
「張飛無事だったか。」
「当たり前よ、この張飛様が簡単にやられるかよ。」
「張飛、袁紹の所に逃げるぜ。」
「袁紹だと!下邳に逃げるんじゃねえのか!」
「駄目だ駄目だ、既に下邳へ道は塞がれた、アレを突破する前に陳宮の本隊が来ちまう。」
「関羽の兄貴はどうすんだ!」
「関羽ならキッチリ逃げてくるさ、それより急ぐぜ、ノンビリしてたら捕まっちまう。」
劉備はそう言うと方向を袁紹がいる北へと向きを変える。
「くっ、情けねえ、逃げるだけか。」
張飛は悪態をつくものの、戦としては負けている事を自覚している。
ここは何よりも撤退すべきということは理解できていた。
「逃げたか。」
俺は劉備の決断の早さに驚いていた。
まだ戦うすべがあっただろうに兵士を捨てて逃げ出す姿に嫌悪感を抱く。
「陳宮殿、追撃すべきだろ。
何なら私が兵を指揮してやってもいいぞ。」
俺の隣にいた典満がふと進言してくる。
近衛でありまだ若い典満にとってこの戦は初陣でもあった、戦場の空気に当てられ、昂揚感に包まれ、逃げていく兵を見て手柄を立てたいとも思いだしていた。
「いや、それより下邳を取りに行く、深追いせぬよう徹底する。」
「何だと!この戦は曹操様を裏切った劉備を始末する戦だ、奴を捕まえずして戦の勝利などありえぬ!」
典満の昂揚感が変な方向に向っていく。
「あれ程早く撤退したのだ、安易に追っても捕まえれない。
それに兵は徐州の民でもある、無闇に減らすのは今後の統治に関わる。」
俺は興奮する典満に追撃しない理由を伝えるのだが・・・
「貴様!!さては劉備に通じて手心を加えたな!」
全く話が通じない。
「そんなはずが無いだろ、見ての通り劉備軍を撃退したのだ、これより小沛と下邳を落として徐州を制圧する。」
「徐州などより劉備を討つべきだ!」
「典満殿、この軍の指揮権は私にある、これ以上の進言は無用である。」
俺は興奮して理解しない典満にこれ以上説明するより、軍を動かす事を優先に考える。
「伝令を、高順に小沛を落とすように、ただ劉備が逃げた事を伝えれば開城するだろうから無理な城攻めはしないように伝えてくれ。
張遼は軍を纏めるように、準備が出来次第下邳へ向うと、臧覇は先行して下邳へ向かうように。」
俺は典満を無視して伝令兵に指示を出していく。
劉備がいないうちに完全に制圧すること、これが出来ていれば劉備が何処に逃げても徐州は安泰である。
俺は矢継ぎ早に伝令を各将に送り、曹操への報告を考えていた。
「この俺を無視するな!」
典満の声に振り返った俺が見たのは激怒する典満の顔と振りかぶられた拳が俺の目の前に迫っていたのだった。
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