第14話 対劉備

俺は劉備軍と対峙していた。

劉備が前に出てきていたので、俺も前に出て舌戦となる。


「劉備!曹操を暗殺しようとした罪によりお前には出頭命令が出ている。

大人しくすれば命だけは助かるようにはからおう。」

「逆賊曹操に降るなど、帝室の血をひく私にできるか!

それより陳宮!お前は主を曹操に殺されておいてよくも従っているな!

主への忠義を思うなら、私と共に逆賊曹操を討とうではないか!」

「我らは主の命令に従うのみ!コソコソ暗殺を企むようなら奴が忠義を語るな!」

「曹操を討つのは天命である!

大義は吾に有り!」

「ほざけ、出自のわからぬを良いことに皇室の血を騙り天下に大乱を招く者よ!今我らが天に代わり誅してくれよう。

張遼!」

「おう!突撃だ!」

張遼は合図と共に軍を動かし劉備に向かっていく。


「兄貴下がりな!」

張遼に向かい張飛も軍を動かし、両軍が激突する。


「張飛!」

「張遼!」

張遼と張飛は互いに姿を確認すると一騎討ちを始める。


「ぬおぉぉぉぉ」

張飛がチカラに任せて繰り出す攻撃に張遼は捌くものの馬ごと吹き飛ばされる。

初撃の攻防は張飛の勝ちである、周りの劉備軍の士気が上がる。


「何という剛力だ。」

「張遼軽いな、その程度でこの張飛様とやり合えると思っているのか!」

「チカラだけが武勇と勘違いしているようだが・・・」

今度は張遼の槍が素早く繰り出される。

「ぬっ!」

素早い張遼の槍さばきに今度は張飛が遅れをとる。


「やるな。」

張飛は舌なめずりをする。

張飛にとって強者との戦いが何よりの娯楽であった。

張遼は張飛に認められたのだった。


これにより二人の一騎討ちは激化していく。


「張遼が張飛を止めているうちに動くぞ。」

既に孫観・呉敦・昌豨・尹礼の四人が劉備軍と戦っているが一進一退であり、戦況は停滞している。

「あいつら、手を抜いているな。」

俺は四人が本気で戦っていない事に気付く、臧覇の推薦で味方についたものの、本気で味方をするつもりは無いように見受けられた。


「成廉、魏越、騎兵を率いて両翼から劉備を討て!」

「おう!やっと出番か!」

俺は呂布軍の古参でもある、成廉、魏越に命じて側面からの攻撃を開始する。


二人が指揮する兵は呂布軍が誇る騎馬隊である、呂布の武勇と彼ら騎兵隊が呂布軍の強さであった、呂布の人並み外れた武勇が無いとはいえ、一般兵が多く訓練の行き届いていない劉備軍など敵では無かった。


「劉備様、敵騎兵が両横から迫っております!」

「糜芳は右、簡雍は左に当たれ!」

劉備は命じるものの、糜芳、簡雍の軍才で抑えられるものではない、ましてや前方から昌豨達の四人がジワリジワリと押してきている、張飛を抑えられた劉備軍に指揮を取る将がいない。

均衡が崩れる、劉備が焦る中、後方から知らせが入る。

「小沛の城に敵軍が迫ってます!」

「なっ!ここにいるだけじゃなかったのか!」

「劉備様如何になさいますか!」

「よし、張飛!逃げるぞ!全力だ!全軍下邳に撤退しろ!」

劉備の判断は早かった、逃げると決めた以上一瞬たりとて後ろを振り向かない。陳宮軍の手が届いていない、場所を見つけて全力で駆ける。


「張飛、逃がすと思うのか?」

張遼は対峙する張飛を逃がすつもりは無かった。 

「へっ、お預けだな、命拾いしたな。」

張飛は近くの兵士から槍を奪い張遼の馬に目掛けて投げる。

あまりの速さに張遼は弾くのがやっとであった。


「おら!!」

そこに張飛の上からの剛撃が降り注ぐ。

張遼は槍を構え受け切るが、乗る馬の足が折れてしまう。


「それじゃ追えないだろ、アバヨまたやろうぜ。」

張飛は劉備の後を追いかけていく。


「くっ!俺の負けか・・・」

張遼は悔しさに震えていた。

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