第12話 指示を出す

「そうか曹清様の御配慮で兵を増やしてくだされたか。」

「そうだ、帰ったら礼を言えよ。」

「わかっている高順、曹清様の優しさに感謝している。」

「あー、まあお前ならそうだな、だが少し洒落た物を礼に用意したほうがいいと思うぞ。」

「そういうものか?」

俺の答えに高順は肩を落として返答してくる。

「はぁ、まあそういった物は張遼が詳しい、一緒に選んでもらえ。」

「よくわからんが、お前が言うならそうなのだろう。」

俺は高順が好意的に言っている事を否定する気は無く大人しく従うことにしたのだった。


軍の準備も終わり、俺は全軍を率いて劉備が待つ小沛に向かっていた。

「申し上げます。

劉備は城外に布陣、その数、1万、我らを迎え討つつもりの様子にございます。」

「城外に全軍を布陣か、奴め一当てして逃げるつもりか・・・

臧覇、兵2千を持って下邳への道を塞いでくれ。」

「わかった。」

「高順は4千を迂回させ小沛に向かってくれ。城は落とすフリで構わないが、劉備軍が崩れたら後ろより攻め立ててくれ。」

「落とさなくていいのか?」

「落とすと鎮めるのに時間がかかる、先に劉備軍を撃破したい。」 

「わかった。迂回して後方に回ろう。」


「張遼、本隊の先陣を任せる、関羽か張飛どちらかの相手になるがやれるか?」

「関羽と張飛か、面白い俺の敵として不足はない。」

「張遼のことだ、心配は無用だと思うが、相手は天下に名を轟かす豪傑だ、油断はするなよ。」

「当然だ、くく、楽しみだ。」

張遼は強敵が相手と聞き不敵に笑う。

自らの武がどれほどの物なのか試したくて仕方がないのだ。

俺も張遼の武勇に疑いは無い、その上高揚している張遼を信じていた。


「孫観・呉敦・尹礼は各自千を任せる、先陣の掩護をしてくれ。

「かしこまった。」

「やってやるぜ。」

俺は指示だしたあと本隊中央に入る。


「陳宮殿、貴方は如何に劉備を討つつもりだ?」

俺の警護に付きつつ典満が疑問を投げかけてくる。

「張飛か関羽を張遼が引き受けてくれれば、劉備に我が軍を防ぐすべはない、そうなればこの戦、勝つのは時間の問題だ、あとは如何に劉備を討ち取るかだが・・・」

俺は負けた劉備の行動を想定する、拠点の下邳に逃げる事はできないであろう。

俺は思考を巡らせる。


「陳宮殿、貴方は勝つことばかり考えておられるが、戦は水物、負けた時の事も考えておくべきでは?」

「負けた時か?それは俺は責任を取るだけだ。

まあ、その可能性は低いと思うが。」

「責任?」

「ああ、私の役目は戦に勝つこと、勝つために最善は尽くした、負けた時は私のチカラが足りない時だ、潔く責任をとる。」

「文官のクセに潔が良いですな。」

「典満、覚悟に武官も文官もない、そこを間違えるな。」

俺は文官を軽視している典満に釘を刺す。


「・・・これは失礼。」

それ以上話す事は無かったが典満からは不満そうな表情が見えた。

典韋殿のご子息がこの有様か・・・


かつて天下に名を轟かせた豪傑にして、曹操の命を守る為に、命を捨てて守りきった忠義の漢の子が曹操幕僚の文官を卑下する言葉を吐く。


典韋殿は自身の武勇を鼻にかけたりすることはなかった。

同じ曹操を守る仲間だと、対等にむしろ敬意を持って付き合ってくれていた。

そのため、文官で典韋を軽んじる者は誰もいなかったのだが・・・


典満の実力は知らないがその器の小ささに落胆を覚えるのだった。

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