第11話 曹清のはからい。
「陳宮、少しお前に会わせたい者がいる。」
「どうした高順?会うなら構わないが。」
軍を出発する段階になった所で高順が一人の若者を連れてやって来る。
「俺は典満、姫様の命を受けて陳宮殿の警護にやって来た。宜しく頼む。」
「典満殿といえば、曹操の警護役だった典韋殿の御子息?それに姫様の命令とは?」
「それは俺から説明しよう。」
俺は高順から説明を受けることする。
時は少し戻り、高順と張遼が軍の編成を行っている所に曹清がやって来ていた。
曹操から陳宮が軍を任され出陣すると聞いて心配になり様子を見に来ていたのだった。
「高順様、陳宮様は何処にいらっしゃいますか?」
「これは曹清様、このような所に足をお運びになられるとは。」
高順は曹操の令嬢たる曹清に礼をとる。
「礼は構いません、それより陳宮様は?」
「陳宮なら一足先に出発致しました。」
「えっ、軍の指揮官に任じられたのでは?」
「ええ、ですが、軍の編成が終わる前にやることがあると先行して出立したしだいにございます。」
「そんな、まだ御身体も癒されていないのに・・・」
曹清は陳宮の身体が心配だった。
先日、寝台で寝ている様子を見てからずっと気になっていた、ましてや軍を率いるなど止めてもらいたい。
だが、それを声に出すのは曹操の娘としては許されない、それがわかる故に、曹清はモヤモヤしたものを心に抱えていた。
「陳宮にはそう伝えておきます、曹清様が気になされていたと聞けば陳宮も喜ぶ事でしょう。」
「高順様、陳宮様に御身体を御自愛なされるようにお伝えくださいませんか?」
「わかりました、まあ戦場ですからね、病気になっている暇はないでしょう。」
高順が雰囲気を変えるために軽く笑い話に持っていこうとするところに張遼がやって来る。
「高順、まずい、旧呂布軍が合わせても5千しかいない。」
「おいおい、劉備相手に5千か?少し厳しいよな。」
「あの?厳しいとは?」
「いえ、曹清様、劉備を討つためには5千だと心許ないという話です。
陳宮が説得している臧覇が味方についてくれても、厳しいかと。」
「厳しいとは、負けるということでしょうか?」
「安易に言えませんが、まあそういった可能性もあるとのことです。」
高順の言葉に一瞬目の前が暗くなる、戦に負けるということは陳宮が死ぬ・・・
曹清としては考えたく無いような事だった。
「・・・ダメです。
待っててください、すぐにお父様から兵を用意してもらいます。」
曹清は急いで曹操の元に向かう。
「お父様、陳宮様の軍に兵士をお与え下さい。」
「曹清、いきなりなんだ、兵士を与えろと言われてもな、奴らを信じていない者も多いのだ、簡単には兵を渡せん。」
「お父様はいつからそんな狭量になったのですか!勝つために最善を尽くすのがお父様だったはずです。」
「ああ・・・」
「お父様が陳宮様を信じられないと言うなら、私が軍を率いて陳宮様の援軍に向かいます。」
「それはいかん!お前が軍を率いても何もできないだろう。」
「陳宮様に指揮してもらえばいいのです。」
「・・・わかった、5千の兵を追加する。
それでいいか。」
「わかりました、それと陳宮様の護衛を出したいのですが。」
「あーわかったわかった、典満に百の近衛を付けて送る、まあ典満も経験を積むのにいいだろう。」
「ありがとうございます、お父様。」
曹清は満面の笑顔を見せる。
そして、その事を高順に伝えるために足早に向かうのだった。
「くく、曹清色気づいたか。
まさか陳宮相手とはなぁ・・・
面白い事になるか。」
曹操のいたずら心は娘に対しても同じだった。
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