第4話ピンチ
女性は夢を見ていた。自分が空を飛んで自由に動き回り風や鳥と戯れながら世界を巡る。
風が光を纏い雲の隙間から伸びる梯子を駆け上がる、雲の絨毯の上で踊り飛び跳ねるように舞う。
一通り遊んだあとは空を上へ上へと太陽を目指すかのように進む。何時しかそれは陽という坑に吸い込まれて行くような錯覚さえ覚える。碧い碧い空に空いた光の坑へ呑み込まれて…
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女性は傍と目を覚ます。何時もよりは多分少し早いと感じた。空気が落ちついていて、でも僅かに活動し始めた生き物達の気配。今日はスッキリとした目覚めだったのに何だか不思議な気分で堪らなかった。
体を起こすと足元に何かいる事に気が付いた。
人だ。おっさんだ。死んでいる。
彼女の願望がそう思わせたのかもしれない。
…いや呑気に寝ていた。分かった瞬間身体がビクッとして思わず引く。身を縮こませるようにして思わず自分の手をもう一方の手で包む。自分の体温を感じたことによって思考が、回り始めた様だ。
衣服を確認する。乱れはない。あらされた形跡もなさそうだ。部屋はどこも壊れていない。
何かないかと辺りを見渡すとナイトテーブルの上に本と水差し、ペンがあった。そっと静かに体をずらしてペンを掴む。コレが唯一の武器だ。心細くもあるが頼りにもなる。ヨシと心を奮い立たせる。
そ~とそ~とおっさんの方へ寄って行く。動かない足がこの時ばかりは少し憎くなる。動けばこんな怯える様に近づく事もなかっただろう。僅かな衣擦れによる音はするものの無事バレずについた。
おっさんの頭側からゆっくりと近づいて喉にペンを添えた。すぐには反撃も誰何もされない位置に。
彼女はおっさんの姿を確認する。細身の男で歳は中年か、武器になりそうな物は持っていない様だった。よく見ると、男の服装に見覚えがあった。昨日見た空飛ぶおっさんだ。少しだけ安堵するが、それが好奇心からくるものだと自覚して気を締め直す。
そうして彼女はおっさんを起こす事にした。
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