攻撃力がおかしいんです


 父や村の人達と別れた私は、馬車で王国に向かっている途中で起きてた出来事である。


 私は馬車の中で戦いの心構えや今後の事をよく考えていると、馭者ぎょしゃのおじさんが話しかけてきた


「ライカさんは村の外に出るのは、初めてですか?」


 私自体外の世界に行くのは、初めてな訳だしここは普通に頷いておこうかな


「はい」

「そうですか、なら丁度奥の方を見て欲しいんですが、見えますかね?」


 奥の方を見てみるが、どこにもいない……


「え、何もいないように見えるんですけど」

「あれですよ、あれ、あれこそが粘液上のモンスターで初心者の冒険者が最初の敵としてお勧めされるスライムですよ」

「す、スライム?」


 私は奥をじーっと見つめていると、まるで鷹の目のように遠くの場所まで見えるようになった気がした


「見えた、あれがスライムなのね」

「ライカさんにも見ることが出来ましたかね?」

「はい、一応見る事が出来ました」


  確かに見えた事は見えたけど、今のやつもさっきの銅の剣を頂いた時も、変な機能のような事が起きていて何がなんだかさっぱりなんですけど、こうなったら聞いてみるしかないか……


「あの……」

「どうしましたかね?」

「実は、とある事をお聞きしたいのですが……」


 私は馭者さんに、これまで起きた事を全て話した。もちろん転生の件の事は、話したとしても通じないと思うし、そこら辺の話は省いてますがね……


「武器の性能や鷹の目のように見えたというわけなんですね……すみません。私には何がなんだかさっぱりです。遠くの物が見えたのも、生まれつき目が良かったからなんですよ」


「そうですか……何だか急に質問したりしてすいません」


 そりゃそうよね、冒険者でもない人にこんな話をした所で、通じるわけがないもんね……


「あっ、風の噂で聞いた事があるんですが……冒険者はクエストを受ける際にスキルというのを使用するというのは聞いた事があるんですが、詳しくは私にもさっぱりで」


冒険者……クエスト……スキル……



 私はスキルについて考えていると……


「ライカさん、ついに見えてきましたよ。あれこそがこの世界唯一栄えた王国……その名もメイナード王国ですぞ」


「メイナード王国……」


 メイナード王国は、この世界の時代で言うと……今から数百年以上も前に、世界は魔王によって人間達は支配されていたという。だが、一人の女の勇者が現れた。

 彼女の名前はトレシアと言って、彼女の名前は色々な本や石板そして石像として、今現在も讃えられるほどの伝説の勇者様……


 勇者トレシアは、元々このメイナード王国出身の人間で、伝説の勇者の防具と聖剣を使用し、魔王を倒したという伝説は今でも永遠に記憶が残っているほど。


 何故かこの世界に来たばかりの私には知らない記憶の内容だけど、もしかしたらライカ・ウォルデムはとてもとても、勇者トレシアのファンだったに違いないだろうね。


「ら、ライカさん、ライカさん!」


 「ど、どうしたんですか?」


 急に馭者のおじさんが慌てた声で私の名前を呼び、私は馭者の方に視線を向けると……


 そこに居たのはまさかの……ドラゴンだった


 ぎゃー、どうしてこんな村から王国に続く、こんな平原の場所に竜がやって来ているんだ〜!……


「まずいですよ。あの竜、きっと我々の方に向かって餌にしようと考えているはずですよ……」


「こんな時に、そんな嫌な話やめて……」


 竜はこちらに向かって炎の息を吐いてきたが、ギリギリの馬車や私達の方には当たったりはしなかった


「ライカさん、こうなったらこのすぐ近くの森で身を潜みましょう。きっとメイナード王国の冒険者様がきっと来られるはず、それまでは何とか耐えましょう」


・・・・・


 ライカは森から出て、無言で竜の方を見ていた


「ら、ライカさん?」


 馭者さんには、森で身を潜めるようにって言われたけど、きっと王国にいる冒険者達が来ると言っても、きっと間に合わないだろうから、こうなったら私があの竜を倒して、ここまで送ってくれた馭者さんのためにも頑張らないと……


「ライカさん、あなたはまだ冒険者では無いのだから、無茶な真似は辞めて、森に隠れるのです」


 転生したばかりで、私ライカ・ウォルデムがどこまでやれるか分からない、ならここで実力を出さないと……


 竜は上空からこちらに向かって、あの炎の息を吐こうとしている。


 私は銅の剣を構えた。正直今の自分の実力は分からない、もしかしたら本当に普通の人間の実力だとしても、例え意味が無い勝負だとしても、頑張らないと……


 竜はこちらに向かって炎の息を吐いてきた


 ボオオオオオン


 まず竜の吐くこの炎を何とか私が良けれたとしても、馭者さんに当たってしまう。だから避ける事は一番ダメな行為、なら、私がやる事はまず……


 竜の炎の息を、武器屋のお婆さんに頂いたこの銅の剣で、斬る……


「炎の息を斬るなんて本当にライカさんは、冒険者では無いのか……?」


 竜は炎の息を吐いたあと、また上空に飛び立ってしまい、この距離だと流石に攻撃を与えることなんて、今の私には不可能。なら、どうすれば……考えろ私、ライカ・ウォルデム、きっとなにか方法があるはずなんだ。


「せめてあの上空までジャンプが出来れば、良いんだけど」


 ・身体強化♢ジャンプ力upスキル発動しました


 そんな時、自分の足に何だか魔法のような物が付与され、私は何か出来そうな気がして、ジャンプをすると、上空まで空に飛ぶ事ができた。


「えぇ……」


 馭者さんは色々な事が起こり過ぎて、呆れた表情になっていた。


 私はどんどんと竜がいる上空まで向かっていると、竜は私がこちらに向かっていることに気がついたか、こちらに向かって攻撃を仕掛けようとして来ている。


 私は銅の剣を構え、攻撃の準備に入った。竜の鱗はとても硬いって、元の世界にいた時に本で読んだ事があるけど、正直この銅の剣であの鱗さえも斬ることが可能なのかは分からないけど、ここまで来てしまった以上……やむを得ないよね。


 ・身体強化♢攻撃力upスキル発動しました


 竜はこちらに向かって、噛み砕く勢いでこちらに向かっている中、私は銅の剣で構えながら竜に向かって攻撃を仕掛けると……硬いと思っていた竜の鱗が、まるでキャベツなどを簡単に切れるように、竜を斬ることが出来ました。



 竜を討伐成功することができ、馭者さんに感謝して頂いた。


「まさか、君があの竜を倒す事ができるなんて、思っても無かったんですが、その力は一体どこで覚えたんですか?」


 その言葉を聞くと、私はただ単に守りたいという気持ちだけで、戦っていた訳で考えてなかったけど、どうして私にこんな力があるのか、疑問が頭をよぎった。


 そう言えばさっき、身体強化がどうたらって書いてあった気がするけど、あれもスキルなのかな……


 私はとりあえず馭者さんに言い訳を言う感じで話した


「な、なんかやれる気がして戦ったら、なんかやれちゃったんですよね、ははは……」


 正直怪しまれるんじゃないかって思ったけど、馭者さんは私の言葉を信じてくれた。でも、どうして私にこんな力があるのか分からない……あの時確かに、"この世界で生き抜く事ができる程"って言っただけなのに。

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