第13話 魅力

フィリアが叫ぶ。


「こんな人でも人間です! そして、かけがえのない民です」


ハルトは舌打ちをして、拳を収めた。


「フィリア……」


ハルトは逆に感心した。

そして、フィリアの王族としての矜持を感じた。


「おお……」


エルビスも感動した様だ。

目に涙を浮かべている。

周りの野次馬も……

フィリアは彼女の魅力で、酒場の荒くれ者達を虜にした。

さすがだ。


「さて、とはいっても、ただで許す訳には行きません」


フィリアはエルビスを見上げた。


「一つ教えてください」


フィリアはエルビスに、バルクの特徴を伝えた。


「う~ん、わからんな」


身体が凍ったまま、首だけを傾げるエルビス。


「皆、知ってるか?」


大声で野次馬に問い掛ける。


「似顔絵とかないのか?」


誰かが言う。


「……私、絵が下手だからなあ」


フィリアが頼むような目でハルトを見る。


「う~ん」


ハルトは言われるがままに羊皮紙にバルクの似顔絵を描いた。

黒髪、逆三角形の輪郭、切れ長で鼻筋の通ったイケメン。

それがフィリアが好きな腹違いの兄。

思いのほか、上手く描けた。


「そいつなら、ギルドで見たぞ」


野次馬の一人が声を上げた。


「フィリア姫、丁度いい。俺もギルドに用事がある。一緒に行こう!」

「はいっ!」


フィリアとハルトそして、従者の二人は酒場を後にした。


「あの……俺の凍ったままの身体は?」


置き去りにされたエルビスが呟いた。

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