第4話 古の魔王

「お嬢ちゃんよぉ~、金目の物を寄越しな。そうすりゃ命だけは助けてやるぜぇ」


リーダーと思われる男が下卑た笑いを浮かべながら言った。

周りには仲間であろう者達がニヤニヤしながら見ている。


「いやです! 私、お金なんて持っていません!」

「へっ、嘘ついてんじゃねぇぞ! その豪華なドレス、そして馬車に積んである財宝! お前は絶対貴族だろ!」


リーダーと思われる禿げ頭で鉄の鎧の男が指差す先。

そこには馬車が横倒しになっていた。

少女の護衛と思われる騎士がその周りで血を流し倒れている。


最近治安が悪い。

噂では『古の魔王』が復活したらしい。

そのせいで、荒くれ者が増えたのか。


(なんてこった……)


スライムに夢中だったせいで、こんなひどいことが起きてるなんて気付かなかった。

ハルトは唇を噛んだ。


「大人しく俺達に着いて来い! お前は人質だ!」


部下であろう太った眼鏡の男が少女を引っ張る。

自分達の馬車に連れ込もうとする。


「きゃああ!!」


少女が叫んだ。

だが――。


「ぐはっ!?」


眼鏡が吹き飛ぶ。

腕が変な方向に曲がっている。


「え?」


太った男は問い掛ける。

痛みも忘れて。

目の前には黒い瞳の少年、ハルトがいた。

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