第5話 発現する魔力
「え?」
ハルトも問い掛けた。
まさか、自分がこんなにも素早く動けるなんて……
目の前の太った男とハルトはお互い目を合わせたまま、不思議そうな顔をしている。
「おい! タキ! 何してる! ビビってるんじゃあない!」
「はっ、はいっ!」
リーダーからタキと呼ばれた太った男は我に返った。
「このガキめ! よくもこの俺様の腕を! 許さんぞ!」
タキは折れていない方の手をハルトに向けて突き出した。
「うわああああっ!」
ハルトはその手を振り払をうとした。
すると、彼から火の玉が飛び出してきた。
「うおっ!」
タキの顔面が炎に包まれる。
「ぎゃああ!! 熱いぃいい!」
タキは転げまわっていた。
「魔法か!?」
ハルトは驚いた。
魔法とは、一部の才能ある人間しか使えないと言われている。
(ノージョブの僕が魔法を使える……?)
「馬鹿野郎! さっさとそいつを黙らせろ! 」
リーダーが叫ぶ。
だが、顔面大やけどの部下には通じていないようで。
他のメンバーもハルトの魔法に恐れをなしている。
「くっ、こうなったら俺様が……」
悪党のリーダーが鎧をガシャガシャいわせながら、ハルトに迫る。
「くっ……」
直感で分かる。
こいつは強いと。
気が付くと、ハルトの背後に少女が身を縮めて潜んでいた。
ハルトの袖をしっかりつかんで。
男だもんな。
ハルトはそう思った。
立ち向かう。
そう決めた時、
「フィリア様! 大丈夫ですか!」
森の奥から馬に乗った騎士がこちらに向かって来た。
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