第8話 侵入
日米艦隊は雲に包まれた海域に入る。
雲の下には霧があり、ほとんど周りが見えない。
だが……霧の中に何かが居ることはわかる。
レーダーも異常をキャッチし、ソナーが謎の音源を捉えているからだ。
「なんだ……これは……?」
「……なんでしょうね」
成美と信二はCICでレーダーやソーナーの画面を遠目に眺めていた。
艦隊は霧の中を突き進んでいく……その時、水測員が言った。
「小型潜水目標多数!」
「なに!?」
『こちら右ウィング!何かが船体を――うわぁ!』
肉がつぶれるような音と、扉を叩く音が響く。
「くそっ!今すぐ立検を編成!そして艦橋!最大戦速、振り切れ!」
立検。護衛艦付き立ち入り検査隊の略称で、1999年に編成された。
海上自衛隊の各護衛艦に編成されていて、臨検を想定した部隊だ。普段は各職種の任務に就いている。
『こちら艦橋!奴等、窓に―!!駄目だ!退避、退避ー!!!』
直後、艦内通信越しに窓の割れる音がした。
そして、悲鳴が響いた後、無線はノイズしか聞こえなくなった。
「ッチ。立検隊へ、敵が艦橋に侵入!交戦を許可する!」
***
~「あまぎ」艦橋周辺~
「機器を傷つけるな。敵だけ撃て」
「「了解」」
立検隊の隊員は9mm機関けん銃を握り、艦橋へ通じる防水扉の前に建つ。
中では、侵入した化け物が這いずり回る音が聞こえる。
「3、2、1、GOGOGO!!」
扉を蹴破り、立検隊は機関けん銃の引き金を引く。化け物は紫の血をまき散らしながら倒れ込む。
天井に張り付いていたり、計器の上に乗ったりしている化け物どもは立検隊に襲い掛かるが、簡単に撃ち殺される。
しばらくして艦橋に残ったのは、立検隊とから薬きょう、そして化け物の死体だけだった。
「……クリア」
「クリア」
「クリア」
立検隊の隊員たちはそう言うと、9mm機関けん銃を下ろした。
***
「誰か!医官を!」
「ダメだ、もう死んでる……」
艦橋には血だらけの遺体があった。
「CICへ、こちら立検第1班。艦橋を奪還した。計器および班に被害なし……隊員の遺体を発見」
『こちらCIC、了解した。遺体収容班を送る。艦を第一戦速で動かせ』
「了解」
戦闘は終わった……一人の殉職者を出して。
異世界に転移す万国旗 @Azuki_01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界に転移す万国旗の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます