【 其の四・結 】

1/4 ◆


 ――剣崎と会ってから、一晩が経った。その日の朝、その日の朝だ。

 早朝でありながら、掲示板には小さな人だかりが出来ていた。

 俺はそこへ立ち寄り、まるで埋め尽くすように貼られた隠し撮り写真の数々と、一覧として並べられる〝色の保持者の名前〟を見る。

 ――白色:神島涼介。

 灰色・緑色:樋笠練。

 黒色:山代賢一。

 青色:霜村由紀恵。

 赤色:深月詩織。

 黄色:瀬戸恭弥。

 橙色:確証なし(樋笠?)。

 紫色:確証なし(樋笠?)。

「……ッ」

 なんだ、これは。ふざけるな。

 裏切られた。裏切られた。

 裏切られた!


 裏切られたッ!


 俺は奥歯を噛み締める。

 幸い、俺のもう一つの色は……紫はバレていないようだ。

 あのリストは〝俺が同盟に提出したまま〟の偽証を含めたものになっている。

 だが、だが……。

 俺が黒、すなわち【理解】の能力であることを打ち明け、同盟のために情報が集まる度提出し続けた保持者リストが何者かによって持ち出され、全参加者が目を通すような掲示板に貼られてしまっていることが、どうしても理解出来ないでいる。

 赤色の名前があるということは、昨日の今日じゃないか。

 先日は全色スキルの開示もあった。

 おそらく狙われていたのだろう。

 ああ、だめだ。壊してやりたい。この掲示板を破壊したい。

 まだ早朝、これ以上の人に見られてしまわないためにも、壊してしまいたいと思うが……それではあまりにも悪目立ちする。

「……クソ」

 俺の努力が。シーカーを初めて掛けた時に自身が黒であることを理解し、剣崎を始め五十四名全員に接触して回った鑑定によるそのリストを、いとも容易くこうやって、簡単に張り出されては、俺もバカだが許し難い。

 頭の中に思い浮かぶ、信頼出来なかった同盟関係者の奴らの顔が、憎くて憎くて仕方がない。

「急がないと……」

 時間はなくなってしまった。

 躊躇は出来ない。余裕もない。

 行動に移せ。


 今すぐに。

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