〖承-10〗イエロー将軍(240623 改稿)

【ケンノビ自宅リビング】

・約10m四方のリビング。白地の壁に明る木目の腰板がついた室内。部屋の中央に6人分の白いソファがL時に配置され、その前にローテーブルと、立体視可能な球形型のTVが置いてある。


・ソファには、ジェイクが座っている。機嫌良さそうにニコニコしている。ローテーブル上には、缶ビール・乾き物・枝豆が置かれている。


・TVの画面に電源が入り、画面中央にシンボルマーク(真円の中に放射状に3つの正三角形が配置)が表示されると同時に、ジャーン(MACの起動音のような音)が響く。


・ジェイクが、プシュッと缶ビールを開ける。


・画面中央に、「The Yellow Shogun!」のタイトルが表示される。


ジェイク:「これこれ、月曜の夜はこれがないと始まらないよ」


・テレビの画面では、黒い覆面を付けた黒づくめの男が、走っている。黒い覆面の眼のところは開いていて、眼がギョロギョロと動く。ずっと走り続けていたのか、呼吸が荒い。


・黒づくめの男が、古くて今にも崩れそうな小屋の前にたどり着く。すっと、扉の脇に張り付くような体勢を取る。指で、扉を小さく叩く


黒づくめの男:「カオル殿、カオル殿、拙者でござる」


・家の中からは、ちゃぽちゃぽと微かに水の音が聞こえる。


・黒づくめの男が、眼をカッと見開く。


黒づくめの男:「まさか、カオル殿に何か・・・」


・黒づくめの男が、扉を蹴破って家の中に駆け込む。


黒づくめの男:「カオル殿!」


・黒づくめの男の両目が大きく開かれる。驚愕の表情。


・男の目の前には、ドラム缶状の風呂。そこに全裸で湯に浸かる絶世の美女。カオル。


カオル:「あら、ヤジリ。どうしたの? そんなに慌てちゃって♡」


・ジェイクが、ニヤニヤと画面を見ながら、ビールを1口飲む。


ジェイク:「なんで玄関で風呂入ってんだよ?」


・ジェイクが、感じ入った表情で、ウンウンと頷く。


・ケンノビが、リビングに入ってくる。60年前の棚卸し表を手に持っている。


ケンノビ:「爺ちゃん、ちょっと時間頂戴・・・、好きだねぇ。イエロー将軍」


・ジェイクが右眉をあげて、ケンノビを見てニヤリと笑う。


ジェイク:「おう。晩飯食ったか」


ケンノビ:「うん」


ジェイク:「・・・こないだ常連に配達に行ってよ」


ケンノビ:「うん?」


ジェイク:「オマワリが一時停止違反取りやがった」


ケンノビ:「…あぁ」


ジェイク:「オマワリに、待てと言ったんだ。俺は、税金をちゃんと納めてる善良な市民だと。ノルマ達成のために待ち伏せして一時停止違反取り締まる暇があったら、もっと巨悪を取り締まれと。イエロー将軍見て勉強しろと説教してやった」


ケンノビ:「流石ジイジ。相手はなんと?」


ジェイク:「良い顔して『解りました今度見ときます』って言って、切符を切って渡して来やがった」


ケンノビ:「そんで?」


ジェイク:「今日はこのくらいで勘弁してやるって、受け取ってやったさ」


ケンノビ:「駄目じゃん、イエロー将軍役に立ってないじゃん」


・ジェイクが重々しく頷き呟く。


ジェイク:「まったくイエロー将軍の正義が通じない、困った世の中になっちまったもんよ…」


ジェイク:「んで?」


ケンノビ:「ちょっと教えて欲しいことがあってさ」


ジェイク:「俺は結構忙しいんだ。ビール飲んだり、枝豆食ったりでな」


ケンノビ:「いやいやいや」


ジェイク:「んで?」


ケンノビ:「まずは報告。この前頼まれた棚卸しだけど、ゲンさんが大体店の在庫のこと把握してくれてるので、手伝ってもらって良い?」


ジェイク:「ゲンに丸投げか?」


ケンノビ:「いやいやいや、棚卸しするのは俺よ。ただ、ゲンさんに隣に居てもらって、知っている事を教えてもらう感じ。なんたって、モノの数が多いからさ」


ジェイク:「判った」


ケンノビ:「あと1つ」


ジェイク:「ん」


ケンノビ:「この資料にさ、ペリル号に使えそうなジェネレーターがあるって、ゲンさんと話していて」


・ジェイクが、資料を手に取り資料を眺める。うんうんと頷きながら。


ジェイク:「まぁ、80年前の資料だけどな」


・来客を知らせるピンポンの音が響く。ケンノビが、ドリーに視線を送り、来客を見てきてくれと目線で頼む。ドリーが、うんと頷く。


・ドリーが、リビングを出て、玄関まで行って、ドアを開ける。ドアの外には、REO-SPWが居る。しばし沈黙が流れる。


REO-SPW:「なんだ小娘か。とっとと失せろ。ご主人様は?」


・ドリーが、バン!とドアを閉める。ドアに背をもたらせて、つぶやく。


ドリー:「何故・・・」


・ケンノビとジェイクが、ソファに隣り合って座り、60年前の在庫記録を見ている。ケンノビが、在庫記録の1行を指さす。


ケンノビ:「ここなんだけど、このジェネレーター」


・ジェイクが、在庫記録表を覗き込む。


ケンノビ:「ゲンさんと調べたら、ペリル号の後継機種用のジェネレーターらしいんだ。結構無理矢理な感じで載せ替えてたらしいけど、実際に載せ替えるのが流行っていたらしい」


・ジェイクが頷く。


ケンノビ:「60年前の在庫だから、残って無いとは思うんだけど、諦めきれなくて」


ジェイク:「ふむ・・・」


ケンノビ:「棚番号の記載が『竜の扉』って書いてあるだけで・・・、何処に在庫があったのか…、ジイジ知ってる?」


・ジェイクが、大きなため息をついて、ソファに背を沈める。


ジェイク:「知ってるさ。ちょうど俺が店を継いだときだ。この棚卸し表を見てな。同じだ。思わせぶりの『竜の扉』ってなんだと思った」


・ジェイクが、ちょっと視線を上に向けて、記憶を呼び覚ますように目をつぶる。


・ドリーが、リビングに挙動不審な感じで戻ってくる。


・ケンノビが、ドリーに目線を向けて、首を傾ける。


ケンノビ:「ドリー? どうした? 客か?」


・ドリーが、はっと気づいたようにケンノビを見て、首をブンブン横に振る。表情が明らかなごまかし笑い。


ドリー:「え?、うんうん?、誰も居なかったよ? いたずらじゃない?」


・ピンポーンと、呼び出し音が鳴り響く。ケンノビが、うん?と不審な表情をする。


ケンノビ:「居るじゃん。いたずらかな? 俺出てみようか?」


・ドリーが慌てふためく。


ドリー:「え?、良いよ。あんなの無視したって」


ジェイク:「・・・、ケンノビ見てこい」


ケンノビ:「OK。ドリーは待ってても良いよ」


ドリー:「あ、あたしも行く!」


・呼び出し音が繰り返し鳴る。その間隔が段々短くなる。


ケンノビ:「はいはい」


・ケンノビが、ドアを開ける。そこにはREO-SPWの姿。


REO-SPW:「おのれ小娘・・・、あっご主人様♡」


・ケンノビが、眼を丸くしてREO-SPWを見つめて固まる。REO-SPWが、そのずんぐりむっくりした機体でしなを作る。


REO-SPW:「えへ。ご主人様が迎えに来てくれないから…、来ちゃった♡」



240612 投稿

240623 改稿


[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②【】 主に、場所を記載する。

 ③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。

     本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。

 ⑤ ・ 主に、登場人物の動きや表情を記載する。

 ⑥ ・ アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。

 ⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑧ 説明:状況を説明する。

 ⑨[] :神沢メモ他を記載する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。



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