〖転-3〗ゲンさん(240505投稿)

【マヌエル・ジャンク・ショップ】

・店内の柱時計が12時のベルを鳴らし、柱時計の中から男の子と女の子の人形が出て来て、踊るようにくるくる回る。


・店内の接客コーナーの4人用テーブル。ケンノビとドリーと、年齢は50才くらいの男性が座っている。男性の背格好は、ひょろりとしていて身長180cmくらい。服は青い上下繋がった作業服。顔は細長く頬骨が立っている。髪は短髪で、前髪だけ黒くて両脇が白髪。垂れ目、鷲鼻で、挙動は落ち着きがなく、貧乏ゆすりをしている。声はこの年配の男性にしては高め。


・男性が、手にした白く四角い容器から焼きそばを箸で掬い口に運ぶ。口いっぱいに焼きそばを頬張り、もぐもぐ、ごくんと飲み込む。箸を持った手でケンノビを指さす。


ゲンさん:「ほんで、坊?、なに話って?」


ケンノビ:「ゲンさん、昼飯時にゴメン。この店しばらく閉めるって聞いてる?」


ゲンさん:「あぁ、その話のことか。3代目…お嬢から聞いた。メンテの方は店閉めちゃうと常連が困るぞって言ったら、メンテだけやったらって。気楽なもんさ」


・ゲンさんが、テーブルからチューブタイプのコーヒーを取り、吸い口からコーヒーを啜って、はぁと息を吐き出して独り言を呟く。


ゲンさん:「うん、コーヒーっはやっぱりこれくらい甘くないとな」


・ケンノビとドリーが、焼きそばと甘いコーヒーの組み合わせにウエッとした表情をするが、ゲンさんの甘党ぶりは知っているので何も言わない。。


ケンノビ:「…あぁ、ゲンさんじゃないと、常連さんの古い機体はメンテ出来ないか…」


ゲンさん:「まぁ、常連は2代目…ジェイク爺と馴染みだからなぁ。機体も年代モノだし。まだ規格がノーマルサイズからオーバーサイズになる前、色んな規格が乱立した時代だから。若いメカニックが今から覚えるには大変だし割に合わないなぁ」


ケンノビ:「そうだよね。古い機体の声が聞けるメカニックが少なくなったって、爺ちゃんが言ってたよ」


ゲンさん:「まぁ、ケンノビのスキルには敵わいやしないがな。お陰さんで未だに仕事があるのは有難てぇことさ。自分の技術が時代遅れになっちまって、もう年貢の納め時かと思ったときに2代目に拾ってもらった。それが今じゃ昔より忙しくなっちまった。人生なんて判らないもんさ。そんで本題は?」


ケンノビ:「うん。店を閉めている間に、俺が店の在庫棚卸する事になったんだけど、古い部品とか多くて調べるのが大変そうだから、ゲンさんに教えてもらいたいんだよね。教えてもらって良いかなぁ」


ゲンさん:「なんだ、そんな事か、勿論よ。週のうち3日くらいは、メンテの仕事で店に顔を出すから。その時にでも訊くと良いさ」


ケンノビ:「…ありがとう」


・ゲンさんが照れたような顔で、人差し指で鼻の下を擦る。人差し指に、焼きそばのフリカケが付く、そこでハッと何かに気が付いて、フリカケを作業着の胸の部分で拭きながらケンノビに尋ねる。


ゲンさん:「タダ働きか?」


ケンノビ:「いや、バイト代出ない代わりに、在庫の商品好きなモノ貰って良いって」


ゲンさん:「…ぺリル号のレストアに部品を好きに使えるように…か。相変わらずだな、2代目は」


・ケンノビは、感謝と気まずい気持ちが半々に混じった笑顔をする。ドリーは、今気づいたというちょっと驚いた表情。


ケンノビ:「感謝してる。ゲンさんも有難う」


ゲンさん:「良いって、良いって。俺は、あの頃、自分の持っている技術がどんどん時代に置いていかれるのが怖くて、やさぐれて暴れてな。あのままジェイク爺に拾われてなかったら、どっかで野垂れ死になってたかも知れん。こんな事くらいで、坊の役に立てるなんて有難いことさ」


・ゲンさんは、照れた顔を真顔に戻して。


ゲンさん:「こまごました部品は使えると思うが、肝心のジェネレーターは無いなぁ」


ケンノビ:「贅沢言ってもキリがないから…」


・ゲンさんが、両腕を胸の前で組んで、首を傾げて。


ゲンさん:「何せ、80年前の機体だ。現存するのだって、あれ1隻だろうしな…」


ケンノビ:「もともと無理だったのかも知れない…」


・ゲンさん:「そこは、坊の好きなように、気が済むまでやれば良いさ…。俺も役に立てるところは手伝うさ。ところで、さっきの棚卸の話だけどな。俺は、ここの在庫のことは大体頭に入っている。2代目が、客から問い合わせあると全部振ってきやがるから覚えちまったんだよ。だから、棚卸だったら、まず俺がモノ見て情報を伝えるから、坊がインプットしてからその情報を精査すれば、大分早く終わるぜ」


・ゲンさんが話しながら、テーブルに置いてある紙の束に気が付く。それは、60年前の棚卸表。


ゲンさん:「それ何? 見ても良いか?」


ケンノビ:「うん、ひい爺ちゃんが在庫管理していた頃の資料らしい。キッチリしてるんだ、これが」


・ゲンさん:「ん? ジェネレーターあるじゃん」


ケンノビ:「俺も喜んじゃってさ。めっちゃ調べたよ。そしたらメーカーもTOMOYAだし、年式も近いし、そしたら機体が違くて載らないって」


ゲンさん:「船体形式は?」


ケンノビ:「ぺリル号の船体形式がGE868、このジェネレーターはGE1010だよ」


・ゲンさんが、顎に手をやり何かを思い出すように考え込む。


ゲンさん:「…こりゃぁ、化けるかも知れねえぞ」


・ケンノビのポカンとした顔。その隣でドリーが、眉を寄せて?を浮かべている。


ゲンさん:「GE868はタグシップとして製造された船なんだが、機動性が思いのほか良くてな。結構、人気があった機体だ。とことんチューンすると、ガンシップを置き去りに出来るぐらいでな。好き者が集まってワンメイクレースを始めて、最後にはワークスで、グループAレースって言う、改造上等の量産船レースにも出ていた」


・ノビイの表情が真面目に鋭くなる。その隣でドリーが、眉を寄せて?を浮かべている。


ゲンさん:「そんときの改造で、出力を上げるために、他機種のジェネレーターを無理くり乗せ換え(スワップ)したって聞いたことがある。それが、GE1010のジェネレーターだとしたら…」


・ノビイがゴクリと唾を飲み込む。その隣でドリーが、眉を寄せて?を浮かべている。


ゲンさん:「心当たりのメンテ引退したジジイ捕まえて尋ねてみるわ。ポン付け出来る訳もないしな。けど、俺の技術と、坊の〈機械に尋ねることが出来る能力〉があれば…」


・ゲンさんも、ゴクリと唾を飲み込む。


・ゲンさん:「このジェネレーター、存在すれば、ぺリル号に載るぞ」



240505投稿


[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②【】 主に、場所を記載する。

 ③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。

     本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。

 ⑤ ・ 主に、登場人物の動きや表情を記載する。

 ⑥ ・ アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。

 ⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑧ 説明:状況を説明する。

 ⑨[] :神沢メモ他を記載する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。

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