〖承-11〗マニアな人達(240623 投稿)

【リビング】

・リビングに連れてこられたREO-SPWが、ペコリと頭を下げる。


REO-SPW:「私は、今日からご主人様のシモベとなりました。型式番号REO-SPW愛称レディと申します。宜しくお願いします」


・ジェイクが、ん?と何かを思いつき、う~んと何かを思い出す仕草、そして手の平に拳をポン!と打ち付けて。


ジェイク:「あ~、お前、管制整備課の近藤さんのところのオールド・・・」


・レディが、ちゃっと腕のトーチガンを向けて


レディ:「セクハラ嫌い。炙るよ?」


・ジェイクの顔が青くなり、慌てて口元を押さえる。ドリーが、それを不思議そうに見上げて。


ドリー:「知ってるの? ジイジ?」


・ジェイクが、横目でドリーを見て小声で答える。


ジェイク:「管制整備課の・・・」


・レディのトーチガンがチャキッと動く。


ジェイク:「管制整備課のレディと言えば知らない奴は居ない。彼…女は、俺が16才の頃には既に居たぞ」


・ドリーとケンノビが、眼を丸くしてレディを見る。レディ得意げ。


レディ:「フフン」


・ケンノビが、大きく深呼吸して意識を切り替えて、レディに話しかける。


ケンノビ:「それでレディ…は、何故ウチに来たのさ?」


・レディが、ずんぐりむっくりの身体で精一杯のけぞって、顔のところにマニュピュレーターを当てて。


レディ:「もしかしてお忘れですか? 私を買い求めてくださったことを!」


ケンノビ:「?」


レディ:「仕方がないご主人様・・・。いくら私の身体目当てだからと言って、記憶まで無くすなんて・・・。主様は、私をオークションで落札してくださったのです」


ケンノビ:「? オークション? パヤオク?・・・、あれ・・・?、ちょっと待って・・・」


・ケンノビが、スマホを開いて、何回かタップする。何かを見つけたように、眼を見開く。


ケンノビ:「あぁ・・・、汎用整備ロボット・・・、いくら古くたって、こんなの絶対落札できないと思って、ダメ元で入札開始価格で入れてたんだっけ・・・、えっ、これで落札できたってこと?」


・ジェイクが何か言いかける。レディのトーチガンがチャキッと動く。ジェイクが黙る。


・ドリーが、ケンノビのスマホを横から覗き込むようにして尋ねる。


ドリー:「ケンノビ、いくらで入札したの?」


ケンノビ:「3000ポイント・・・、嘘だろ・・・こんな値段で入札できるわけない。そもそも1件も他に入札がない・・・」


・レディが、半球形の頭で頷きながら答える。


レディ:「主様、それは2人を繋ぐディスティニー(運命)です」


ケンノビ・ドリー:「いやいやいや」


ケンノビ:「…って言うか、俺忘れてたから、支払い手続きしてないよねぇ」


レディ:「はい。主様が、1週間も放置プレイするから、設備課の近藤課長が代わりに支払ってくれました」


ジェイク:「おぉ、近藤さんが」


レディ:「はい。主様の支払期限が落札から10日以内で、それを過ぎると無効になってしまいます。ここで支払いがないと、またしばらく設備課にお世話になると言ったら、快く払ってくれました・・・」


ドリー:「脅しじゃんね、それ」


レディ:「黙らッしゃい!」


・レディが、大声でドリーを一喝した後、ケンノビの方向いて言葉を続ける。


レディ:「近藤課長は、私の今までの設備課への貢献度からみたら、3000ポイントなんて、ただみたいなモンだと言われていました」


・ジェイクが、眼をキラキラさせながらレディに話しかける。


ジェイク:「…痺れるなぁ、今の決めゼリフ。これって…」


・レディが、大きく頷き。


レディ:「同志…、解かってもらえて嬉しいです。「黙らッしゃい!」は、イエロー将軍の決め台詞です」


・ジェイクが、ウンウン頷く。


ジェイク:「そうだよな? いや痺れちゃったよ。俺…解った。イエロー将軍好きな奴に悪い奴居ないわ。俺、お前の味方。近藤さんに電話するわ」


・ジェイクが、部屋の端に向かい、スマホで電話を掛ける。あまりの展開の早さに、ついていけないケンノビとドリー。ちょっと得意げなレディ。


ジェイク:「あっ、近藤さん? 俺、ジェイクだけど。ウチの孫が世話になったみたいで。え?、ほらお宅んとこ居たロボットだよ。レディとか言う名前の。・・・そう、俺の孫が落札したの。そんで落札支払金肩代わりしてもらったみたいで。え? 返品は効かない? うん、そういう話じゃなくて。なら、鳶の足場丁に来い? 今から? 「魔王」が入荷したの? おぉ、そりゃぁレアだね。わかった。鳶の足場丁ね。了解、これから向かうわ」


・ジェイクが、孫2人にピシッと敬礼して。


ジェイク:「そんじゃぁ、近藤さん落札金の立て替えの件について話つけてくるわ」


レディ:「同志…、感謝です」


ジェイック:「気にするなよ。同志」


・ケンノビとドリーがポカンとした顔で固まっている。


ケンノビ:「…あ、うん。ポイントは後で払うから。よろしくね」


ドリー:「ジイジ、「鳶の足場丁」のお酒、なんか工業用エチルアルコールが入ってて悪酔いするってママが言ってたから、呑みすぎないでね」


ジェイク:「お、おう、まかせておけ」


・ジェイクが鼻歌交じりに、リビングを出て行く。それを見送る2人。


ケンノビ:「なんだこりゃ」



【宇宙空間】

・宇宙空間にエウレカが浮かび、その下にハヤブサが浮かんでいる。エウレカの先端に口のような円形の大穴が開いていて、そこから複数のドリルシップが出入りしている。その中に、竜神丸が航行している。


【竜神丸コックピット】

・海坊主が操縦士席に座り、竜神丸の操舵桿を動かしている。

 その後ろに、ジェイクが立ち、ケンノビ・ドリー・レディ・サンディが、各コンソールの席に座っている。


・ジェイクの顔は赤く、しきりに頭を振っている。


ジェイク:「昔は、あれくらいの酒じゃ、翌朝に持ち越さなかったのになぁ・・・。やっぱり、あのヤカンに入った怪しい熱燗がいけなかったのかなぁ。海坊主、悪いな。久しぶりに顔を出してもらったのに、送ってもらっちゃって」


海坊主:「気にしないでくだせぇ。竜神丸も、久しぶりに2代目に乗ってもらえて喜んでいます。それに法定点検のドック入りのついでですし」


ジェイク:「久しぶりに顔出してもらったってのに、ローラもいねえしな。言っておくよ」


・海坊主が、ちょっと困ったような顔で苦笑いする。


海坊主:「ありがとうございます。宜しく伝えておいてください」


ジェイク:「あぁ・・・、本当に世の中ってのはままならねぇなぁ」


海坊主:「・・・(笑)、ちげえねぇ。けど、良かったんですかい? エウレカの背に行くんでしょう。この船で直接行けば良かったんじゃ」


ジェイク:「あぁ、ドッグの奥のドン詰まりに、定期整備の時に使う業務用エレベーターがあるだろう? アレ使っていくわ」


海坊主:「あぁ、重工業区の更に奥にある…エウレカを縦に貫通しているエレベーターですね、承知しやした」


・竜神丸が、エウレカの保守用ドックのハンガーベイに接舷する。ハンガーベイのからボーディング・ブリッジが延びて、竜神丸の乗降用ハッチに接続する。



【竜神丸コックピット】


・ドリーが不思議そうな表情で、ガンナー席に座っているサンディを見る。


ドリー:「ねぇ、どうしてサンディ先生も居るの?」


サンディ:「スティーブンに頼んで、お爺さんを紹介してもらったんだ」


ドリー:「うん」


サンディ:「僕の曾祖父でもあるマヌエル爺さんのことを、色々訊きたくね。けど、胡散臭く思われちゃって、断られたんだ」


ドリー:「あ~、先生はルーニー(月世界人)だからねぇ。ジイジ、あんまり良く思ってないんだよ」


サンディ:「あぁ、それは理解できるよ。だからさ、せめてマヌエル爺さんに、お供えさせてくれって言ったんだ」


ドリー:「ん?」


サンディ:「ほら、あれ」


・サンティが、ジェイクが大事に持っている小さなディスクケースを顎で示す。


ドリー:「うん?、円盤?」


サンディ:「そう、マヌエル爺さんが好きだったイエロー将軍のファーストシーズンの円盤。月世界市の自宅にあったもので、もう市場では入手できないレア物だ。あれを渡したら、今日君たちと「竜の扉」に行くって教えてくれて」


ドリー:「竜の扉? 先生知ってるんだ? 有名なの?」


サンディ:「知る人ぞ知るって感じかな。2人の英雄が、一番最初に出会った場所なのさ」


ドリー:「お~」


ケンノビ:「・・・どこまでイエロー将軍ネタを引っ張るんだよ」



240623 投稿


[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②【】 主に、場所を記載する。

 ③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。

     本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。

 ⑤ ・ 主に、登場人物の動きや表情を記載する。

 ⑥ ・ アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。

 ⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑧ 説明:状況を説明する。

 ⑨[] :神沢メモ他を記載する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。







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