〖承-3〗シモンズ/パパンドレウ義勇団(230529投稿)

【1998 VF31】

・金属の正8面体で覆われた高さ10km幅10kmの小惑星1998 VF31が、エウレカの右腰のところに接続固定されている。金属製のピラミッドが上下に合わさったような外見をしている。金属壁には点々と窓が切られていて、中から光を放っている。


・《1998 VF31》の頂上近くの窓が光っている。頂上の三角錐に近づいていくと、人影が薄っすらと見える。


【1998 VF31 執務室の中】

・1998 VF31頂上近くの窓際に立っていた人物が、役員机の後ろにまわり、レザー製の役員関に座る。


・クラッシックな様式の部屋で、深い毛足の絨毯が敷き詰められている。チーク材の役員机と、レザー製の役員椅子。役員机の後ろの壁には、背の高さ程の旗3つ、ファイブスターの社旗が中央に、地球連邦の旗とルナシティの旗がその両脇に置かれている。その周りを固めるように、一目で高級と判る様々な調度品・美術品が、所狭しと並んでいる。ギリシャ風のブロンズ像、エジプトの神の胸像、中華風の大きな壺、など。良く言えば豪華、悪く言えば雑多に見える。


・役員席には、小柄で神経質そうな40代中盤の男性が、仕立ての良いスーツを身に着けて、机の上で指を組んで座っている。指を神経質に動かしている。何か連絡でも待っている表情。イライラした表情。


・額が広く、鼻と頬骨が高く、眉と眼が細く唇が薄い。頬がこけ気味で顔色が悪い。


・ドアのノック音。


ガンズ:「シモンズ様。ガンズでございます」


シモンズ:「ガンズか。入れ」


・役員室の奥の大きな木製のドアが開き、50代後半の細見の執事の姿をした男が部屋の中に入ってくる。目の下の隈が目立つ、頭は天辺が剥げていて頭の両脇は軽い天然パーマ。無表情のまま、顔を主に近づけて話しかける。


ガンズ:「英雄の生まれ変わりの件で動きがございました」


・シモンズが、静かに頷いて、話の先を促す。


ガンズ:「はっ、ロゼッタ・ナイトウェイの乗った定期輸送船がプラットフォーム・ミネルバを出航致しました。現在、船室に監禁中でございます」


シモンズ:「そんなことは知っている。木星音階の方だ」


・ガンズが、無表情のまま口の端だけ上げる。


ガンズ:「英雄の生まれ変わりと言われるのも伊達ではないかと」


シモンズ:「焦らすな」


ガンズ:「確実なところは、実際にイジッてみなければ言えません」


・シモンズが、少し顎を上げて、話の先を促す。


ガンズ:「ただ、fMRIの結果を見る限り、脳に存在する宝珠の範囲が、今までの治験者達と明らかに違います」


シモンズ:「我らの子供達と比べてどうなのだ?」


ガンズ:「ごもっともです。比較対象は、我々の作品である6人の子供達です。このシックス・チルドレンと比べても、宝珠の大きさが倍以上大きい」


シモンズ:「レイラ・サカモト並みか…」


ガンズ:「彼女の記録の3分の2の大きさと言ったところかと」


シモンズ:「良く正気を保っていられるものだ」


ガンズ;「現地の情報によると、シックス・チルドレンが聞こえる音域を全て合わせた音域よりも、広い幅の音域を聞けるとのことです」


・シモンズが、ガンズをチラリと見る。


ガンズ:「シックス・チルドレンとは異なる音域のようです」


シモンズ:「全て合わせれば、レイラ・サカモトが聞こえた木星音階を再現できるのか?」


ガンズ:「データ通りなら。可能性としては、ほぼ確実と言って良いかと」


シモンズ:「手に入れる必要があるのは理解した。で、どうするのだ? 他の子供達のように、ただ攫ってくる訳にも行くまい?」


ガンズ:「何分、ロゼッタ・ナイトウェイの名は、英雄の生まれ変わりとして、世間に知られております。そして、わが社の輸送船に乗せていることも記録に残っております。さすがに素直に攫うことは出来ません」


シモンズ:「それで、どうするのだ?」


ガンズ:「我らが直接手を下さず攫えば良いかと」


・ガンズがニヤリと悪い顔をする。


ガンズ:「我らの輸送船は、航路の途中で、宙族の襲撃を受けます。宙族連中の目的は、勿論我が社のレアメタル。ただ、その作業中に何人か乗客を殺してしまいます。不幸な事に、その中にロゼッタ・ナイトウェイが含まれてしまう予定です」


・シモンズが、疑わし気な顔で答える。


シモンズ:「せいぜい上手くやることだ」


ガンズ:「お任せ下さい。我が主よ」


・ガンズが、シモンズに一礼すると、3歩後ずさり、それから向きを変えて部屋を出るべくドアに向けて歩きだす。


・ガンズがドアを開けようとした時、シモンズがガンズの背に向けて声を掛ける。


シモンズ;「そういえば。なんだ…、あの東洋人の刑事はどうした? 確かヤツの妹が、フィフスだったか。確か、フィフスを攫うときにヤツが現れて、陰の者が2人殺られ、死体を回収されたのだったか」


・ガンズはシモンズの方を振り返らない。ガンズの表情が、憎々し気に歪む。低い声で答える。


ガンズ:「その際は、ご心配をおかけしました。行政府のトップに指示を出して、彼の人間は、刑事部捜査課から異動しております。確か今は脱税者を追う税務官をしているとか…」


・シモンズが椅子を回転させて、ガンズに背を向ける。そして、明らかに今までとは異なる口調で喋る。


シモンズ:「フィフスは今どうしているの?」


ガンズ:「受信感度を上げる手術を行いましたが、木星音階との相性が悪かったのか、手術をしてから意識が戻りません」


・無表情なガンズが、扉を開けて通路に出てくる。ガンズの後ろで、扉が閉まる。


ガンズ:「身体側の意識がまだらに出てくるな。あの身体に乗り換えて…30年。そろそろ次の受け皿を探さねばな」


          ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


【宇宙空間】

・全長50m位の中型宇宙船が航行している。飛行船のようシルエットで、船体のそこかしこに砲台が備えられている。くすんだ金属色の船体、継ぎはぎ跡のような修理痕。船体後部にエンブレムが描かれている。エンブレムは、緑と赤の地色の上に、ごみ箱に入れられた山盛りの金貨と、獣の牙を向いた横顔がモチーフになってる。エンブレムの下に、「Papandreou」のロゴ。


【パパンドレウ号 操縦室】

・古びた操縦室。ボスが中央の船長席に座り、4人の団員が忙しく働いている。団員は、古ぼけた旧式の操作盤を叩きながら、ヘッドセットのマイクを怒鳴りつけながら、一生懸命に働いている。


・船長席に座るボスは180cmを超える身長。団員は全員140cm前後と小柄。ボスも団員も、全員頭全体を覆うフードと、ゴーグルを掛けている。服は、ボロっぽい宇宙服で、ダボダボしていて体形が判りにくい。そのため、背格好が近い団員は、誰が誰だか判らず、ほぼ全員同じ様に見える。ボスは犬族と一目で判る。団員は、フードとゴーグルにマスクをしているため判りづらいが、良く見ると、普通の犬族とは異なり擬人化されておらず、顔面には毛が生えていて、普通の犬の顔をしている。


・団員が、ボスに話しかける。


団員A;「ボス!、結成以来最大の危機です」


ボス:「船長って呼べって言ってるだろ? んで、どうした?」


団員A:「ガスが足りません。酸素も食い物も足りません。団の財布は、ローン地獄でスッカラカン。故障ばかりするのに補修部品も買えません。このままじゃ、俺ら、宇宙空間で皆ミイラみたいに干乾びちゃいますぜ」


・団員Bが、船の操縦桿を握りながら、チラチラとボスと団員Aのやり取りを盗み見している。他の団員も、同様に2人の会話を気にしてチラ見している。


・ボスが、キッと、周囲を見回すと、全員背筋をピンとして、慌てて自分の仕事に集中している振りをする。けど、犬族の耳がピクリピクリと動いている。


ボス:「んなことは、判っている。武器弾薬は未だあんだろ?」


団員A:「ボス…、船長が武器弾薬に金注ぎ込んじゃったから、ありますけど。いくら、俺らが何でも食うって言っても、武器は食えねえっしょ。」


ボス:「誰が武器を食うって言った? 武器は戦うのに使うんだよ。俺たちの名前は?」


団員A~D:「俺たちは、パパンドレウ義勇団。自由の旗の下に生きる犬族。共に戦い飯を食い歌を歌う仲間達。俺たちが進む道に立ちはだかる奴らは、断固としてぶっ潰す!」


ボス:「そうだ。それに、俺はちゃ~んと見つけてんだ。ガッポリ稼ぐ相手をな」


団員B:「さすがボス!」


団員C:「けど、ボス。俺たちは、罪の無い人たちから物を奪うのは止めようって、隊規で決めました!」


ボス:「そんなの、判ってるよ。判って、それを守ってるから、ローン地獄で、食う飯に困っているんじゃねぇか」


団員A:「ボス、それならどうするんだ?」


ボス:「俺達は義勇団だ。悪いヤツから、ガッポリ奪えば良いのよ。良い獲物がある。火星の情報屋に高い情報料払って買った情報だ。絶対だ」


団員A~D:「ほ~ぉぅ」(棒読み)


団員D:「あ~、火星の情報屋って、ボスが1人で飲みつぶれて朝帰りした日だ。俺だって吞みたかったのに、ボス1人で…」


ボス:「…それは、横に置いといて。次のターゲットは輸送艦だ。大物を狙う。これが捕れたら、全員で飲み放題行くぞ!」


団員B:「さすがボス!」


団員A・C:「それ本気っすか? スゲーッ」(棒読み)


団員D:「…俺、飲み放題じゃない酒が呑みたい…。」



【神沢コメ_承-3_230730】

 神沢は、宮崎アニメが大好きです。具体的には、「天空の城ラピュタ」と「紅の豚」と「ルパン三世 カリオストロの城」が好きですね。ナウシカは漫画派ですね。

 宮崎アニメの優しくて行動力があって意思の力が強いヒロイン像(ナウシカやフィオ)が好きですし、ローラ婆さんをはじめとする元気なお婆さんが出てくるのも好きです(紅の豚の「孫に小遣いをやりたいお婆ちゃん」好き)。

 そして、味方じゃないんだけど、主人公と何処かで解かり合っている敵役が好きです。「銭形警部」とか。「マンマユート団」もそうですね。

 「ローラ」は「ドーラ婆さん」のオマージュ 笑。

 「シモンズ」は、「カリオストロ伯爵」のオマージュ 笑。「ルパンvs複製人間」のマモーも入っていますね。

 「パパンドレウ義勇団」は、「マンマ=ママン」なら、次は「パパン」だと、そしてパパンと入力したら、誤変換で「パパンドレウ」と出てきましたので、そのまま採用と。

ちなみに、パパンドレウさんは、ギリシャを経済破綻させた首相さんのお名前です。


追記:「エミリー」は、アニメの「名探偵ホームズ」のハドソン夫人のイメージですね。



[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②【】 主に、場所を記載する。

 ③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。

     本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。

 ⑤ ・  主に、登場人物の動きや表情を記載する。

 ⑥ ・  アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。

 ⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑧ 説明:状況を説明する。

 ⑨[] :神沢メモ他を記載する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。

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