〖承-1〗昼休みの来訪者(230416投稿)

【サカモト総合高等学校 ケンノビの教室】

・昼休み、教室の中、仲の良い生徒同士で集まって昼食を取っている。


・ケンノビは、4人で机をくっつけて食べてる。男友達で犬族のアーサーと、ドリー、そしてドリーと仲の良いジェイン。ケンノビのお弁当の蓋は開いていて、少し焦げた卵焼きとウィンナーが見える。ケンノビは、アーサーに熱心に話しかけていて、お弁当に手を付けていない。ドリーとジェシカは楽しそうに話をしている。


ケンノビ:「非道くね? 何が風紀違反だよ。くせ毛は生まれつきだっつ~の」


ドリー:「そうだよ。先生、酷いよ。ケンノビの髪の毛は小さい頃もっとチンチクリンだったんだから」


ケンノビ:「いや、俺が訴えたいとこ、そこじゃないから」


ドリー:「だってさぁ。もっとクリンクリンって」


ケンノビ:「う~ん。まぁ、良いか」


ジェイン:「アンタ達って、見てると飽きないわぁ」


・ケンノビは納得出来ない顔で「う~ん」と唸り、ドリーは、ちょっと照れた顔で「ふふっ」って笑う。


・校内放送のチャイムが鳴る。教室全体はガン無視しているが、ケンノビ達4人は「ん?」という感じで、黒板の上のスピーカーを見上げる。


校内放送:「ケンノビ・オーケリー、職員室まで来てください。繰り返します。ケンノビ・オーケリー、職員室まで来てください。」


アーサー:「げっ、生活指導のガンダムの声じゃん。ケンノビ、早く行った方が良いぜ。」


ケンノビ:「ガンダムなど、俺は知らん。」


ドリー:「男子サバボー部の顧問でね。肩がガンダムみたいに張ってるから、ガンダムって言われてるの。怒らすとね。眉毛抜かれるの。痛いよ。」


アーサー:「ドリーは女子サバボーのホープだから知ってるのか。」


・ドリーがうんうんと頷く。


ドリー:「人数足りないからって、1回だけ試合でただけなのに。MVPとか言われて、インターハイ選手に選ばれたなんて。凄い迷惑なんだ」


ジェイン:「サバボーって、サバイバル・ボールの事? 変な略し方。センス無~」


ケンノビ:「俺は、行かんぞ。俺の正義の光に満たされた心が、世の中の不正を許さん。きっと、ノコノコ行ったって、ネクタイが曲がってるとか、鼻の頭にニキビができたとか、そんなことで怒られるに違いない。俺は、悪には負けん!」


・ケンノビは、雄々しく叫ぶと、弁当に箸を突っ込み猛然と昼飯を食べ始める。

 周囲の生徒は「おぉ~ッ」と、ケンノビの勇気を称える。


校内放送:「ケンノビ・オーケリー、職員室まで至急来なさい。繰り返します。ケンノビ・オーケリー、職員室まで3分で来い!」


ケンノビ:「俺は行かんぞぉ~!!、俺は正義だぁ!」


・ケンノビ、再び、弁当に箸を突っ込み猛然と昼飯を食べ始める。


校内放送:「ケンノビ・オーケリー、税務署が職員室に来ている。貴様に事情を聞きたいと言っている。一体、何をやらかしたんだ。さっさと来い!」


・ケンノビが、口からブォッと、盛大に飯粒を飛ばす。アーサーとジェインが、さっと避けて「うわぁ、汚な!」と、呟く。


・ケンノビが、ゆっくりと身体を捻って、黒板の上のスピーカーを見上げる。頬っぺたに白飯が付いている。


ケンノビ:「…、税務署だと…?」


・ドリーがケンノビの頬に手を伸ばし、白飯を指で掬うと、パクリと食べて幸せそうに笑う。


ジェイン:「ドリー、幸せそうだけど、大丈夫なの?」


ドリー:「大丈夫だよ。今朝炊いたご飯だし。ケンノビのだし」 


ジェイン:「いや、そっちじゃなくてさ。ケンノビ、脱税でもしたの? 捕まっちゃうの?」


・アーサーが通常運転で、購買で買ってきた焼きそばパンを食べながら呟く。


アーサー:「ケンノビ、ダークサイドに落ちるの早すぎだろ」


          ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


【サカモト総合高等学校 職員室応接】

・古ぼけたソファタイプの応接セット。そこに、帽子を被った鋭い目つきの30代半ばの税務官猿滑と、可愛い感じの新卒見習いのマリーが座っている。


マリー:「税務官、税務官」


・猿滑税務官は、深く考え事をしていて気づかない。


マリー「警部、猿滑警部」


猿滑税務官:「…ん。なんだい、マリーくん」


マリー:「もうそろそろ税務官って呼ばれるの馴れて下さいよ~」


猿滑税務官:「そうだな、申し訳ない。警部をクビになって、もう3か月経つだな。いつまでも引きずるのは良くないな」


マリー:「それに顔が怖いです。人殺しみたいです」


猿滑警部:「…そうか。気を付ける」


・猿滑税務官が、鋭い目つきのまま、口角を弓のように上げて笑う。


マリー:「猿滑税務官、その表情って、殺っちゃった後に嬉しそうに笑ってるみたいです」


猿滑警部:「う~ん、なんとか殺らずに笑えるようになりたいな」


マリー:「…怖っわ」


猿渡:「冗談のつもりだったんだが…」


          ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

【生活指導室のドアの前】

・ケンノビが、ドアの前で大きく深呼吸する。ドリーも大きく深呼吸。


ケンノビ:「無理せず待ってても良いんだぞ」


・ドリーがちょっと引き攣った表情で無理に微笑んで、


ドリー:「大丈夫、一緒が良い」


・ケンノビが、ドアをノックする。ドアの向こうから、「どうぞ」の声。

 ケンノビが、ドアを開ける。その向こうで、猿渡税務官が鋭い目つきでケンノビを見る。猿滑税務官が、鋭い目つきのまま、口角を弓のように上げて笑う。

 ケンノビの背中が、ビクリと動く。


マリー:「猿渡税務官、笑顔、笑顔」


猿渡税務官:「いや、笑顔にしているが」


マリー:「それ殺っちゃったときのヤツだから」


猿渡税務官:「…君がケンノビ君か。入って、掛けてくれ」


・ケンノビの緊張が切れる。ズカズカと部屋の中に入り、猿滑税務官の前のソファにドスンと座る。その隣にドリーが腰掛ける。ドリーは、機嫌の悪いハスキー犬みたいに、目が座っていて、眦を三角にしていて、猿滑税務官をじっと見ている。


・ケンノビが、テーブルに手を付いて、大声で。


ケンノビ:「っていうか、高校生は税務署と関係ないと思うんですけど?」


・猿滑税務官が、ケンノビを表情を変えずにジッと見た後、


猿滑税務官:「君のことじゃない。君の実家のお店について、協力を依頼に来たんだ」


・ケンノビが、びっくりして目をパチクリとさせる。その隣で、ドリーもハスキー風三角目から普通の表情に戻る。


ケンノビ:「家?…」


・猿滑税務官:「あぁ、そうだ。税務局からのお願い事項だ。何せ、あの英雄が開いたお店だ、こちらも穏便に済ませたい」


・ケンノビが露骨にホッとした表情になる。それを見て、猿渡税務官が、右の唇だけをクイッと上げて微笑う。マリーが「最初からその表情しろよ」という、不機嫌な表情でそれを見ている。猿渡税務官が言葉を続ける。


猿滑税務官:「ただ、その前に1つだけ君に個人的な質問をしても?」


ケンノビ:「え?、えぇ。答えられることなら。」


猿渡税務官:「ケンノビ君は、黒猫を…、喋る黒猫を見たことがあるかね?」



【神沢コメ_承-1_230417】

神沢の高校は。都内の柄の悪い男子校でした。

先生は、それぞれ必殺技を持っていました。生徒が悪いことをすると、この必殺技を受けることになります。

コメカミをグリグリしたり、両頬を両手でパンとたたかれたり・・・、そう言えば「ヒー」という名の技もありました(生徒がその技を受けるとヒーッ!と悲鳴をあげるので「ヒー」)。どれ一つとして同じものがない。先生同士で技が被らないよう調整してたんでしょうね。想像すると微笑ましい (笑)。

その中で、ラグビー部の顧問が「ガンダム」と呼ばれていました。凄い怒り肩で、ガンダムみたいな肩だから「ガンダム」。

当時30代の先生で、教師陣の「最終兵器」。ガンダムに体育教官室に連れ込まれると帰ってこれないみたいな。

そんな恐れられている先生なのに、必殺技が「眉毛を指で摘まんで抜く」という、非常にチマチマした必殺技だったのを覚えています。

今になって思うと、大らかというか、微笑ましいというか・・・ (笑)。


    ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


猿滑警部というキャラが出てきました。先々週まで存在すらしてなくて、先週中は名もなき税務官で終わるキャラでした。

 キャラが意思を持って、作者にアピールしてくるって、本当にあるんですね。

 彼らに、物語の筋を、「これはどう?」、「あればどう?」って説明すると、気に入ると頷くのですけど、気に入らないと首を横に振って言うこと聞かないです。

 野球で、キャッチャーのサインをひたすら首を横に振って拒否する、マウンド上のピッチャーみたいな。

 神沢は、猿滑警部とマリーのコンビが、この作品でどんな風に暴れてくれるか、凄く楽しみです。大丈夫かな?どう暴れるのか見当もつかないんだけど(無責任)。



[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②【】 主に、場所を記載する。

 ③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。

     本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。

 ⑤ ・  主に、登場人物の動きや表情を記載する。

 ⑥ ・  アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。

 ⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑧ 説明:状況を説明する。

 ⑨[] :神沢メモ他を記載する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。

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