〖承-1〗昼休みの来訪者(250104改稿 β)

〘履歴〙

・241109改稿 α

 ①ドリーのキャラ変更に伴うセリフの調整。

・241208改稿 α

 ①「サバボー部」を、「バレットマーク部」に変更。競技内容の内容を記載。

・250104改稿 β

 ①「レイラ総合高等学校」→「サカモト学園高等部」に変更。

 ②ブレッドマーク部の協議内容の説明を変更。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


【サカモト学園高等部 ケンノビの教室】

・昼休み、教室の中、仲の良い生徒同士で集まって昼食を取っている。


・ケンノビは、4人で机をくっつけて食べてる。男友達で犬族のアーサーと、ドリー、そしてドリーと仲の良いジェイン。ケンノビのお弁当の蓋は開いていて、少し焦げた卵焼きとウィンナーが見える。ケンノビは、アーサーに熱心に話しかけていて、お弁当に手を付けていない。ドリーとジェシカは楽しそうに話をしている。


ケンノビ:「非道くね? 何が風紀違反だよ。くせ毛は生まれつきだっつ~の」


ドリー:「あはは。これでもマシになったのにね~。ケンノビが小さい頃はもっとチンチクリンの髪の毛だったんだから」


ケンノビ:「いや、チンチクリンって、くせ毛を表す表現じゃないだろ?」


ドリー:「だってさぁ。小っちゃくて、クリンクリンってしてたよねぇ~」


ケンノビ:「う~ん…、だからさぁ…。まぁ、良いか」


ジェイン:「アンタ達って、見てると飽きないわねぇ」


ケンノビ:「う~ん」


・ケンノビは納得出来ない顔をするが、隣でドリーが「へへっ」って笑う。


・校内放送のチャイムが鳴る。教室全体はガン無視しているが、ケンノビ達4人は「ん?」という感じで、黒板の上のスピーカーを見上げる。


校内放送:「ケンノビ・オーケリー、職員室まで来てください。繰り返します。ケンノビ・オーケリー、職員室まで来てください」


アーサー:「げっ、生活指導のガンダムの声じゃん。ケンノビ、早く行った方が良いぜ」


ケンノビ:「ガンダムが何だ。俺は怖くない」


ジェイン:「ん? ガンダムって?」


ドリー:「ん? 知らない? ガンダムって、男子バレットマーク部の顧問のあだ名でね。肩がガンダムみたいに張ってるから、ガンダムって言われてるの。怒らすとね。地味に眉毛抜かれるの。痛いよ」


アーサー:「ドリーは女子の方のホープだから知ってるのか」


・ドリーがうんうんと頷く。


ドリー:「人数足りないからって、1回だけ紅白戦出ただけなのにね。レギュラーとか言われて、インターハイ選手に選ばれたんだ」


ジェイン:「バレットマーク部って、相手チームのターゲットを撃つんだっけ?」


ドリー:「そうそう、8人のチーム対抗戦。相手陣地のフラッグと呼ぶターゲットに20m以内に近づいてマーカーで4回バレットマークを付けるか、相手チーム全員に2回ずつバレットマークを付けた方が勝ちなんだ」


ジェイン:「マーカーって? バレットマーク?」


ドリー:「一般的には、マーカーって銃タイプを連想するんだけど、相手チームのフラッグに20m以内に近づかないとフラッグに向けて撃てないから、結局相手のディフェンスと近接戦になるの。だから、銃剣タイプだったり、銃タイプにソードタイプを合わせたり、ハルバードタイプを使う人も居るよ。それらのマーカーで付けたマークをバレットマークと言うんだ」


ケンノビ:「決めた! 俺は行かない! 俺の正義の光に満ちたこの心が、世の中の不正を許さない! きっと、ノコノコ行ったって、くせ毛が気に入らないとか、ネクタイが曲がってるとか、鼻の横にニキビができてるとか、そんなことで怒られるに違いない。俺は、悪には負けない!」


・ケンノビが雄々しく叫ぶと、弁当に箸を突っ込み猛然と昼飯を食べ始める。

 周囲の生徒は「おぉ~ッ」「勇気ある少年!」とか言って、ケンノビの勇気を称える。


校内放送:「ケンノビ・オーケリー、職員室まで至急来なさい。繰り返します。ケンノビ・オーケリー、職員室まで3分で来い!」


ケンノビ:「俺は行かんぞぉ~!!、俺は負けない~!」


・ケンノビ、再び、弁当に箸を突っ込み猛然と昼飯を食べ始める。


校内放送:「ケンノビ・オーケリー、税務署が職員室に来ている。貴様に事情を聞きたいと言っている。一体、何をやらかしたんだ。さっさと来い!」


・ケンノビが「俺は正義…」まで言いかけて、口からブォッと盛大に飯粒を飛ばす。アーサーとジェインが、さっと避けて「うわぁ、汚な!」と、呟く。


・ケンノビが、ゆっくりと身体を捻って、黒板の上のスピーカーを見上げる。頬っぺたに白飯が付いている。


ケンノビ:「…税務署だと…?」


・ドリーがケンノビの頬に手を伸ばし、白飯を指で掬うと、パクリと食べて幸せそうに笑う。


ジェイン:「ドリー、幸せそうだけど、大丈夫なの?」


ドリー:「大丈夫だよ。今朝炊いたご飯だし」 


ジェイン:「いや、そっちじゃなくてさ。ケンノビ、脱税でもしたの?」


・アーサーが通常運転で、購買で買ってきた焼きそばパンを食べながら呟く。


アーサー:「ケンノビ、正義の味方から悪に落ちるの早すぎ~」


          ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


【レイラ総合高等学校 職員室応接】

・古ぼけたソファタイプの応接セット。そこに、帽子を被った鋭い目つきの30代半ばの税務官猿滑と、可愛い感じの新卒見習いのマリーが座っている。


マリー:「税務官、税務官」


・猿滑税務官は、深く考え事をしていて気づかない。


マリー「警部、猿滑警部」


猿滑税務官:「…ん。なんだい、マリーくん」


マリー:「もうそろそろ税務官って呼ばれるの馴れて下さいよ」


猿滑税務官:「そうだな、申し訳ない。警部をクビになって、もう3か月経つになるんだな。いつまでも引きずるのは良くないな」


マリー:「それに顔が怖いです。人殺しみたい」


猿滑警部:「…そうか。気を付ける」


・猿滑税務官が、鋭い目つきのまま、口角を弓のように上げて笑う。


マリー:「その表情って、人を殺した後に嬉しそうに笑ってるみたいです」


猿滑警部:「う~ん、なんとか殺らずに笑えるようになりたいな」


マリー:「…怖っわ」


猿渡:「…冗談のつもりだったんだが…」

 


【生活指導室のドアの前】

・ケンノビが、ドアの前で大きく深呼吸する。ドリーも大きく深呼吸する。


ケンノビ:「呼ばれたの俺だし、待っててくれた方が嬉しいんだが」


・ドリーがちょっと引き攣った表情で無理に微笑んで、


ドリー:「私達はいつも一緒」


・ケンノビが少し変な顔をして考え込む。


ケンノビ:「そう言えば、そうだな」


ドリー:「そうだよ…忘れないで」


・ケンノビが、ドアをノックする。ドアの向こうから、「どうぞ」の声。

 ケンノビが、ドアを開ける。その向こうで、猿渡税務官が鋭い目つきでケンノビを見る。猿滑税務官が、鋭い目つきのまま、口角を弓のように上げて笑う。

 ケンノビの背中が、ビクリと動く。


マリー:「猿渡税務官、笑顔、笑顔」


猿渡税務官:「いや、笑顔にしているが」


マリー:「それ殺っちゃったときのヤツだから」


・猿渡警部が、気まずそうにゴホンと1回咳払いする。


猿渡税務官:「…君がケンノビ君か。入って、掛けてくれ」


・ケンノビの緊張が切れる。ズカズカと部屋の中に入り、猿滑税務官の前のソファにドスンと座る。その隣にドリーがドスンと座る。ドリーは、機嫌の悪いハスキー犬みたいに三角目をして、猿滑税務官をじとっと睨みつける。


・ケンノビが、テーブルに手を付いて、勇気を振り絞って言う。


ケンノビ:「高校生は未だ納税義務無いと思うんですけど!」


・猿滑税務官が、ケンノビを表情を変えずにジッと見た後、笑顔を消して喋りだす。ケンノビが、ビクンとする。


猿滑税務官:「君のことじゃない。君の実家のお店について、協力を依頼に来たんだよ」


・ケンノビが、びっくりして目をパチクリとさせる。その隣で、ドリーもハスキー犬ふう三角目から普通の表情に戻る。


ケンノビ:「家?…」


・猿滑税務官:「あぁ、そうだ。税務局からのお願い事項だ。何せ、あの英雄が開いたお店だ、こちらも穏便に済ませたい」


・ケンノビが露骨にホッとした表情になる。それを見て、猿渡税務官が、右の唇だけをクイッと上げて微笑う。マリーが「最初からその表情しろよ」と呟いて、不機嫌な表情でそれを見ている。猿渡税務官が言葉を続ける。


猿滑税務官:「ただ、その前に1つだけ君に個人的な質問をしても?」


ケンノビ:「え?、えぇ。答えられることなら」


猿渡税務官:「ケンノビ君は、黒猫を…、喋る黒猫を見たことがあるかね?」



[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②〘〙 投稿・改稿履歴の表示。神沢メモ他を記載。

 ③【】 主に、場所を記載する。

 ④〈〉 固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ⑤《》 固有名詞・用語。巻末に説明あり。

 ⑥ [ ] 固有名詞・用語。既出のもの。説明ないもの。

 ⑦ ・  登場人物の動きや表情の説明。背景セットの説明。

 ⑧名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑨ モノローグ:状況を説明する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ シーンとしての区切り。

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