〖起-3〗ブラスター(230304改稿)【神沢コメ-3_230401】

【降下チューブの中】

・海坊主を含めた男5人が、チューブの中を降りていく。チューブは透明で、チューブ外側の岩壁が凄い勢いで上に流れていく。


エミリー(声のみ):「〈紅蓮の牙〉へ、正式クエスト出ました。スカルドラゴンは2本角です。海坊主へ、正確な座標を竜神丸に送ります」


紅蓮の牙リーダー:「紅蓮の牙、了解した」


海坊主:「海坊主、了解だ」


・チューブから見えていた岩肌が切れて、どこまでも広がる宇宙空間に切り替わる。

 宇宙空間の中、チューブが降りる足元には〈ハンガー・ベイ〉が見えて、《ドリルシップ》がドッキングしている。足下へ向けていた視線を上げると、横には巨大な輸送船が停泊しており、その向こうにハヤブサが見える。

《ドリルシップ》

 元々は、個人の鉱物採掘者が運用していた採掘作業船。採掘事業者が、個人から法人にシフトし、より大型のプラットフォームを使用することにより廃れた。

 現在は、個人所有の汎用用途の中型宇宙船の総称として使う。


【乗降用ハブ施設内】

・〈乗降用ターミナル〉内に、チューブの中から、5人の男が次々に降りてくる。ドリルシップへ続く〈ボーディングブリッジ〉を駆け抜けて、ハッチからドリルシップへ入船する。


【ドリルシップ コックピット】

・コックピットのドアが開き、5人の男達が入ってくる。パイロット、サブパイロット、ナビゲーター、エンジニア、ガンナー、が自分達の座席に慌ただしく座り、4点支持のシートベルトを着用する。


・海坊主が、パイロット席のコンソールスイッチを入れる。


・ブンという音とともに、操縦席前のメインモニターに明かりが点く。

サブウィンドウに、メアリーと後ろにスティーブンが映ってる。


海坊主:「竜神丸、出航準備あと3分だ」


・海坊主の後ろの男達が、慌ただしく、各々のコンソール上のボタンやツマミをチェック、操作している。


エンジニア:「ジェネレーター作動。炉心状態良好。発電開始、0.1メガワット、0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、〈メインクラスター〉稼働。出力安定まで、後3分」


ナビゲーター:「座標受信しました。座標DU185846。座標までの、《ディメンションダイブ》プラン作成開始、あと2分かかります」

《ディメンションダイブ》

 ショートカット航法の一種。


エミリー:「海坊主、よろしく頼みます」


海坊主:「坊に、まかせろと伝えてくれ…。四代目だったな…、気を付ける」


メアリー:「(クスッと笑い)、…了解。四代目に伝えておきます」


ナビゲーター;「座標DU185846。座標までのディメンションダイブプラン作成完了」


海坊主:「竜神丸、ディメンションダイブプラン作成完了。管制との通信に切り替える。滑宙路に入って、指定速度に達し次第、離宙する」


【宇宙空間】


・ドリルシップが、船体の〈クラスター〉を数回噴射して、ブリッジから離弦する。点滅している光で区切られている、誘導路へ移動していく。


管制官:「竜神丸。ディメンションダイブ専用滑宙路8番へ誘導する。誘導システムに、操縦権限を預けてくれ」


海坊主:「了解。誘導システムへ操縦権限を移す」


管制官:「ディメンションダイブプランを提出願う。転移点座標と、転移距離、ハイジャンプ時速度、〈ラム(衝角)〉の許認可番号を報告・データ送信されたし。こちらでも確認する」


海坊主:「了解した。ディメンションダイブプランを送信した。座標DU185846、転移距離1.8AU、ディメンションダイブ時速度時速1120㎞、許認可番号0007」


・ドリルシップが、滑宙路へ到着し、機首の向きを変える。

 進行方向へ、光の四角のガイドで囲まれた滑宙路が伸びていく。


管制官:「ディメンションダイブプラン確認した。誘導システムから操縦権限を戻す。出航許可する」


海坊主;「了解。竜神丸、出航」


・竜神丸後部に並んだ4つのメインクラスターの噴射口から、細かな光が噴き出す。

 光の量がどんどん増える。


・竜神丸が、ゆっくり動き出し、スピードを上げる。滑宙路の四角い枠がどんどん後ろへ飛んでいく。


ナビゲーター;「ディメンションダイブ時速度時速1120㎞、500、600、700…」


海坊主:「プラン速度到達と同時にラム(衝角)稼働。3.2メガワットを予定。ラム(雷角)の温度監視開始」


エンジニア:「了解。1120で、3.2メガワット電源達成で、ラム(衝角)へ電力供給します。ラム(衝角)現在温度77K」


ナビゲーター;「…800、900、1000、1100」


エンジニア:「ラム(衝角)稼働」


・竜神丸の船首から鋭角に飛び出しているラム(衝角)に、何本もの電流がスパークする。


ナビゲーター:「1120到達、ディメンションダイブ入ります」


・竜神丸の前方やや下の宇宙空間が波をうつように揺れて、黒い穴が開く、竜神丸が滑り込むように船首から沈んでいく。

 竜神丸が消えた箇所を中心に、波のような揺らぎが起きてすぐに静まる。


・真っ黒い嵐の雲の中に飛び込んだような、ドリルシップ。

 船体を、猛烈な揺れが襲う。船体の周りを飛び回る稲妻。


ナビゲーター:「予定通り、ディメンションダイブ入りました。速度1120で、深度1、2、3、予定通り4まで到達。あと30秒で、上昇に入ります。飛び込むときの速さ、ラム(衝角)への電力と、次元穴の大きさ。どれもプラン通りです。上昇に入ります。深度、3、2、1、通常空間へ浮かびます」


・宇宙空間に黒い穴が開き、水中から飛び出すようにドリルシップが飛び出す。

 主に前方のクラスターを何回か噴射して、スピードを落とす。


ナビゲーター:「座標確認開始します…、近隣〈ウェイポイント〉電波受信中…。座標位置割り出し中…確認完了。予定通りDU185846の近くまで到達しました。ディメンションダイブ成功です」


・宇宙空間に浮かぶドリルシップの前方に、小惑星とプラットフォームが見えている。小惑星からチカチカと細かな明かりが不定期に漏れている。


海坊主:「〈パワードスーツ〉装着準備。あと5分で現場につける」


・紅蓮の牙のメンバーが、サブパイロット、ナビゲーター、エンジニア、ガンナー、の席から立ちあがり、コックピットのドアを飛び出す。


・コックピットを出て狭い通路を走り、小さな踊り場に出て左右2つずつあるドアに分かれて掛け込むと、リフトのノブを掴んで、上下に移動していく。


・すぐ上の階に着くと2重になったドアがあり、そのドアを超えると小部屋に入る。


・部屋の中には、パワードスーツの肩から上の部分が、頭を手前にして仰向けに横たわった状態で見える。パワードスーツの肩から下の部分は壁の向こうで見えない。


・パワードスーツの頭の部分がバクンと開き、胸のヒンジを始点に前に開く。

 そこには、人1人がスッポリ入る空間があり、そこへ足から身体を入れていく。

 パワードスーツの頭の部分が閉まって、頭のメインカメラの周りに光が付いて起動したことが判る。


紅蓮の牙4名(バラバラに):「スタンバイOK」


海坊主:「了解、こちらも現場に付けた。バージする。」


・宇宙空間。小惑星とプラットフォームが目の前に見える。プラットフォームは高所部分を中心に細かな点滅を繰り返している。


・ドリルシップの、左上下、右上下の4つのカーゴブロックに固定さたコンテナが、コンテナを固定しているアームが稼働することでX字に展開する。

コンテナがウィング式に開き、パワードスーツの胸から下の部分が見える。


海坊主:「バージ」


・4体のパワードスーツがコンテナから切り離されて全身が見える。機体背中に背負ったクラスターを噴射し、体勢を整える。


海坊主:「ポーターを射出する」


・竜神丸のコックピットエリアの後ろから、ポーターが射出される。海坊主が遠隔操作しているため、コックピットの窓は暗いまま。


・ポーターの左右の側面に、パワードスーツが2体ずつ取り付く。


海坊主:「行ってこい、野郎ども」


・ポーターの後部クラスターから炎が噴射される。



【神沢コメ-3_230401】

 〈海坊主〉という名前は、隆慶一郎さん「見知らぬ海へ」から来ています。〈竜神丸〉もそうですね。それのまんまで良いのかとも思いますが、良い名づけアイデアもないので、とりあえずそのままにしてます。

 「見知らぬ海へ」は未完ですが、海洋冒険小説の本場イギリスを敵に回しても戦える作品だと思います。見て触れるような細かな臨場感のある描写は凄い。それに男気が漲る一癖も二癖もあるサムライ(いくさ人)が出てくるのです。鬼に金棒、面白くないはずが無い。


 とは言え、本場イギリスの海洋冒険小説はカッコいいですよね。ホーンブロワー3部作は最高です。今の子達には読みにくいかな~。けど本物だしなぁ。

 少年少女向けの帆船モノがあるのもイギリスの特徴ですね。アーサー・ランサムさんの「アマゾン号とツバメ号」とか。そして、フィリップ・ターナーさんの「シーペリル号の冒険」もそうですね。シーペリル号は人力動力外輪駆動の平底船だけれども(笑)。帆船で世界を牛耳ったイギリスにとって、「船」は特別なのかも知れません。


 佐藤さとるさんの「誰も知らない小さな国」は、一番大好きな物語の一つです。

その解説に、その細やかな描写はイギリス文学の影響を受けていると書いてあって、当時小学生の私はイギリス文学って何だろうって思ったものです。

 そして、アーサー・ランサムさんとか、フィリップ・ターナーさんとか、リチャード・アダムスさんの「ウォーターシップダウンのうさぎたち」とかを読んで、「あぁ、これかぁ」と思いました。

 なんなんでしょうね。「ロケ地」と「芝居や舞台で使うセット」を頭の中に具体的に組み上げて、そこで「キャラクターが生きて動いている」のを、ビデオカメラで撮って、それを文字で起こしているみたいな感じでしょうか。

 「赤毛のアン」の松本侑子さん訳の1ページ目を読んでみてください。「あぁ、これかぁ」と思うから。



[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②【】 主に、場所を記載する。

 ③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。

     本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。

 ⑤ ・  主に、登場人物の動きや表情を記載する。

 ⑥ ・  アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。

 ⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑧ 説明:状況を説明する。

 ⑨[] :神沢メモ他を記載する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。

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