〖起-2〗ぺリル号(240825改稿)[神沢コメ-2_230328]

【宇宙空間】

・宇宙空間、火星を背にして、エウレカが浮かぶ。

 エウレカの胸下に、三層の円盤状の旧居住区ガンシティが見える。その少し後方に、ハヤブサが浮かんでいる。

《ガンシティ》

 エウレカの胸下の部分から突き出した、直径150m厚さ90mの円盤型居住区が3層重なった旧市街地。その形から[ハチの巣]と言われることがある。もともとは、ルナシティから移民船がエウレカに到着した後、移民船の居住区をエウレカに移設したもの。その当時は1層のみだった。その後、エウレカの人口が増えるに伴い2層・3層と拡張していった。拡張に拡張を加えたため、その外観は継ぎはぎだらけ。

 内部は、ドックに船を預けているブラスター達やドリルシップ船員達、定期休暇中の採掘プラットフォーム乗組員向け達向けの宿屋・飲食店・歓楽街が主となっている。ブラスター・ギルドもガンシティにある。外装のイメージは九龍城のような継ぎはぎのイメージ。街中は、大阪の新世界界隈の雑多な店が並んでいるイメージ。


・ハヤブサをぐるりと取り囲むバンパー部分の、深宇宙側、北ポートエリアが大きく映る。バンパーの厚さは60m。バンパーの端から2つの接弦用ウイングが張り出しており、採掘プラットフォームからの輸送船や、ドリルシップが数多く接弦している。バンパーの長い辺の部分が、個人経営の整備工場や店舗のエリア。バンパーの外壁面に、沢山の整備工場や雑貨屋や飲食店や作業用宇宙服店舗の看板が張り出されている(ショッピングモールの外壁面の看板のイメージ)。その中に、他に比べて一層やる気がなく素っ気ない看板があり、[マヌエル・ジャンク・ショップ]と書いてある。


・《マヌエル・ジャンク・ショップ》の看板の横には、[早い・安い・安心の定期点検]の看板が並んで掲示され、その下に4連のピットエリア用開口部(シャッターが閉まっている)が設置されている。

《マヌエル・ジャンク・ショップ》

 ケンノビの曾祖父のマヌエルが現役引退後、孤児のジェイクを引き取り、採掘船乗員向けに開業した雑貨店。間口70m奥行50mの個人経営としては大きな規模。

開業当時から、中古部品備品・雑貨・食料品を売る店だが、小型宇宙艇の法定点検・簡単な部品交換・整備が行えるピットエリア(リフトが4台ある)も併設している。

 当時、エウレカではほとんどの人が貧しく、金額的に手の届く小型宇宙艇ポーター(日本の軽自動車のイメージ)を使ってエウレカの採掘を行っていた。結果、手頃な価格でメンテが行えるピットエリアが人気を博し、リフトがいつも満員御礼状態になったもの。

《ポーター》

 小型の軽貨物運搬用の近距離移動用宇宙船。長さ8m幅4m高さ3m程度のものが多い。ハヤブサ周辺でのメンテ作業や、軽貨物配達など、便利な日常の足。現代の軽自動車・軽トラのイメージ。


【マヌエル・ジャンク・ショップ店内】

・店内入口から突き当りの1辺が4連のピットエリアになっている。構造的には、[店内>隔壁・エアロック>ピットエリア>ポーター出入シャッター・簡易エアロック>宇宙空間]という造りになっている。店内とピットエリアを隔てる壁は、上半分が透明のアクリルのような素材で出来ていて、下半分の壁沿いにはハイタイプのカウンターとチェアが置かれている。


・《ローラ》が、ピット沿いの店内通路を歩いている。

《ローラ》

 性別:女性。45才、ドリーとケンノビの義理の母親。スティーブンの実母。

身長は170cmで大柄・筋肉質・グラマラスなタイプ。背中まで伸びた赤髪。大きく緩やかにカールしている。顔立ちは、綺麗と言うよりかはハッキリとした印象を受ける。鼻が高く、目と口は大きい。昔はA級のブラスターで[赤い魔女]と呼ばれた。ブラスター・ギルドのギルドマスターを務めていた。現在は現役を引退し、父から受け継いだジャンク屋[マニエル・ジャンク・ショップ]を、船乗り相手に営んでいる。

「天空の城ラピュタ」のローラ婆さんを若い頃のイメージ。あるいは、ヴァン・ヘイレン のデイヴィッド・リー・ロスを、美人にして女性らしいプロポーションにしたイメージ(なんだそりゃ)。


【竜の巣の内部】

・《竜の巣》と名付けられた約20m四方の部屋。誰も居ない。部屋半分には、リフト(修繕用架台)があり、小型宇宙艇の《ペリル号》が鎮座している。残りの半分は、沢山の剥き出しの部品が置かれた錆の入ったスチール棚、年季の入ったPCが乗ったデスクと椅子(2脚)、2つの支柱に吊るされたハンモックがある。

 部屋のくすんだ壁には、沢山の工具が掛けられたハンキングボード、工程表や、ポスターがピン止めされているコルクボードが貼ってある。

 PPタイルの床の上には、工具箱が置いてあり、上蓋が開けっ放しで、溢れんばかりの工具や、細かな部品、ケーブルが入っている。

 部屋の端っこに床が四角い穴が開いていて、押し上げ戸が乗っている。

 押し上げ戸の上に、[竜の巣]と書いてある。

《竜の巣》

 マリーが営んでいるジャンク屋[マヌエル・ジャンク・ショップ]の5台目ピットエリアだった場所。位置的には、ピットエリアの4番リフトの上のスペースになる。ピットエリアが大入り御礼で忙しかった時期に、マヌエルが調子に乗ってピットエリアの上の階のスペースを不法に改造して、5台目リフトを設置したもの。実際に5台目のリフトを使ってみると、5番ピットに小型宇宙艇の出し入れする際に不便すぎて(下の4番ピットを空にする必要がある)、割合早い時期に使われなくなった。それから永らく使われておらず、部屋の存在は忘れられていた。

 ケンノビが10才の時に見つけた。そこには、ビニールシートに覆われて、埃の積もったぺリル号があった。それ以来、ケンノビとドリーが入り浸り、2人の秘密基地となっている。部屋の名前は、ケンノビがこの部屋を見つけたときに外した押し上げ戸に何者かの字で[竜の巣]と書いてあったことから、そのまま名前になった。

 部屋の大きさは、約20m四方。部屋半分には、小型宇宙艇用のリフトがあり、ぺリル号が鎮座している。


・ラジオの音楽が流れている。


・《ぺリル号》が、リフト(修繕用架台)のうえに鎮座している。点検用ハッチが、機体のあちこちに在って、開いたままになっている。点検用ハッチから伸びた何本ものケーブルが、床に自立した点検用機材に繋がっていて、点検用機材のインジケーターが静かに点滅している。

《ぺリル号》

 ①長さ8m幅4m高さ3mの古ぼけた小型宇宙艇(ポーター)。

 ②涙型船体だが多角形の平面で構成されたゴツゴツしたシルエット。

  本来の用途的には、タグボート的な役割の宇宙艇。実際には、庶民の足として使い勝手が良い小型宇宙艇(イメージとしては軽自動車・軽トラ)。

 機体は、サンダーバード4号のイメージ(海だけど)。デザイン的には、ランチア・ストラトスで、それを縦に引き延ばして愛嬌のあるシルエットにしたイメージ(鳥山明さんの車のイラストのような)。

 ③機体の色は白。差し色で所々に赤が使ってある。

 ④船体横には、円形の黒いクラスター部が前後に2つ設けられている。円の中には、上下左右中央に噴射口が配置されている。

 ⑤船首は、6連のランプポッドがあり、その下にクラスター噴出口、その噴射口を挟んで左(赤)と右(緑)の航宙灯が配備されている。

 ⑥船尾は、横一文字に丸型のクラスター噴射口が6個並んでおり、その噴射口を挟んで左に赤と右に緑の航宙灯が配備されている。

 ⑦船体の上下左右に、シャークフィン型の航宙灯があり、上が白、下が黄色、左が赤、右が緑になっている。


・ラジオが、ぺリル号の点検用ハッチの隣に置かれている。ラジオのスピーカーから、男性アナウンサーの甘い声が流れている。


アナウンサー:「さて、2220年6月30日のお昼、皆さま如何お過ごしでしょうか? 今日も、私トム・ジャーニーがお送りします[昼下がりのエウレカ・ストリーム]。それでは楽しく参りましょう。まず私からリスナーの皆さまにお贈りする1曲目は…」


・ズッズッ…、と何かがズレる音。ラジオから曲が流れる中、部屋の床の押し上げ戸が横にズレる。ローラが、床に開いた四角い点検口から、ヌッっと顔を出す。点検口の縁を掴んで軽く身体を持ち上げて、PPタイルの床に立つ。磁力靴がPPタイルにカチッと吸い付く。


・ローラが、磁力靴(ヒールっぽい)の靴音をコツコツ立ててぺリル号に近づいてくる。


・机の前の壁に貼られたに置かれたコルクボードに、几帳面に手書きで記入された工程表と、ポスターが貼ってある。ポスターには、上段に「恒例 ポーター・レース 2220 8/25開催」と書かれている。中段の真ん中にはドンと大きく火星が描かれ、その周りを周回する小さく歪な月の〈フォボス〉と〈ダイモス〉が描かれている。更に、それを両側から挟むように2つの人工コロニーが描かれている。左の人工コロニーには「Hayabusa(ハヤブサ)」、右側の人工コロニーには「Mariner (マリナー)」と表記されている。その間を、複数のポーターが飛行しているイラストが描かれている。ポスターの隣には、殴り書きで書かれた「8/25開催日まで 残り56日」のメモが貼ってある。


・ローラが、工程表の前で立ち止まり、足を開いて立って、左腕は胸の前で組むように、右手を顎に当てて、品定めをする様にジッと見つめる。後ろ姿で表情は見せない。


・ローラが、再びぺリル号の方へ歩き出す。


ローラ:「肝心の〈ジェネレーター〉がなけりゃぁ、始まらないじゃないか。どんなに一生懸命やったってさ。どうする気なんだい」


アナウンサー:「ペンネーム、ポンコツ穴掘りさんからのお便りです。『今年は、レイラ・ザ・ガードが暗殺されてから60年になります。彼女は亡くなった60年後に生まれ変わった姿を表すと言われていますが、トトさんはどう思いますか?』」


・ローラが、ぺリル号の脇に設置してある足場台の階段を登り、機体の上に置いてあるラジオに近づいていく。


ローラ:「死んだ人間が生き返るもんかい」


・ローラがラジオに手を伸ばす。


・突然、耳障りの悪い音で、鳴り響くアラート音。


アナウンサー:「緊急時空震アラートです。時空震です。皆さま落ち着いてください。震度は4です。震源の深さは3です。この深さですと、時空プレートが重なるエリアには注意が必要です。スカルドラゴンが出現する可能性があります。特に採掘現場では出現する確率が高いので注意してください…」

《時空震》

 この世界の宇宙は、パンパンに膨れたボールのような形態ではなく、空気が抜けてフニャフニャになったボールの形態。隣接したボールの皮(時空プレート)が接触することによって、時空に振動が生じたり穴が開く。木星から土星にかけての空間は、大きな時空プレートが3つ集まっていて、頻繁に時空震が起きている。


・ローラが、ラジオの電源を止めて、足場台から急いで降りる。先ほど、入ってきた床の四角い穴の方へ進み、点検口の縁を掴んで、身体を折り曲げて、足の先から四角い点検口に身体を押し込む。


・[竜の巣]の下の階。ローラの身体が、四角い穴からフワッと降りてきて床に近づくと、磁力靴が磁力で床に吸い付くようにカチリと着地する。


・ローラから少し離れた位置に、《ジェイク》が腕を組んで立っている。

《ジェイク》

 性別:男性。年齢は70才。ローラの父、ドリーとケンノビとスティーブンの祖父。頭は剥げて、顎髭をたくわえて、肩と腕は逞しく、指もゴツゴツしていて、ビール腹で、足が短い。眼は細目で、団子鼻で、口はニヤリと笑っていることが多い。


ジェイク:「ローラ。時空震だったな。どこへ行く?」


ローラ:「ギルドの様子を見てくる」


・ローラが急ぎ足で、ジェイクの前を通り過ぎる。ジェイクが、ローラの背中に声を掛ける


ジェイク:「スティーブンに跡目を譲ったんだろう? 任せりゃ良いんじゃねえか?」


ローラ:「ジェィク、あんたがアタシに跡目を譲ったときは、3年位毎日来てたじゃないか? こっちはまだ譲って半年も経ってないんだ。なんぼかマシさ」


・ジェイクは、ローラを見送ると、肩を竦めて呟く。


ジェイク:「そりゃ、可愛い娘だからな」


・ジェイクは、ローラが見えなくなるのを確認すると、小声で呟く。


ジェイク:「おっかねぇ、娘だけど」


ローラ:「聞こえてるよ!」


・ジェイクが、ローラが出てきた点検口を見上げる。


・四角い穴の押し上げ戸には、[秘密基地!][竜の巣]と子供の字で、殴り書きしてある。その下に同じ筆跡で[危険!関係者以外立入禁止][爆発の恐れあり!][ケンノビとドリー]と書いてある。


・ジェイク爺が点検口の蓋の文字を見つめて、優しい微笑みを浮かべてから、呟く。


ジェイク:「時の経つのはあっと言う間だ。 なぁ?、英雄さんよ」



【小惑星内の坑道】

・薄暗い。岩がくり貫かれた高さ5m程度の坑道。無人。


・岩の壁が、ぼうっと青く波打つように光り透明になる。うっすらと2本角の《スカルドラゴン》が見える。

《スカルドラゴン》

 時空震の際に現れる地球外生物。色は白と黒の斑ら、シルエットはドラゴンのよう。爬虫類の頭頂から首の後ろにかけて2本の角が生えている。タツノオトシゴのような硬い外骨格に覆われた銅、小ぶりの両腕と、対照的に逞しい逆関節の脚を持つ。角の数は、1本から8本まで種類があり、数が増えるほど力が強くなる。5本角以上になると、翼のような形の光の粉を発する器官を持っている。


・スカルドラゴンが、青い波打つ光の中から歩き出して、坑道の中に1歩入り込み、首を左右に振って動き出す。足跡は残らない。スカルドラゴンが出てきた穴は、青い波打つ光が消えると元の岩肌に戻っている。



【小惑星内の坑道】

・坑道内で作業中の作業員。スカルドラゴンの姿は見えない。ヘルメットに鳴り響く警報音。


作業員:「スカルドラゴン…」


【宇宙空間】

・エウレカの胸下の部分から突き出した、直径150m厚さ80mの円盤型居住区が3層重なったガンシティが見える。そのガンシティのドッグゲート側に、エウレカから1.5km程度下に突き出した《ブラスター・ギルド》専用ハンガーベイが見える。ハンガーベイには、ドリルシップ竜神丸が停留している。

《ブラスター》

 発破作業者の意味。小惑星の鉱物採掘作業時の爆発物取扱い技術者のことを指した。その後、爆発物の他、危険物取扱い他、雑多な仕事を引き受けるようになった。

現在では、危険を伴う何でも屋のイメージが強い。業務内容は、危険物取扱処理、護衛、運び屋、スカルドラゴン討伐も含まれる。


《ブラスター・ギルド》

 ブラスターの業界団体であり、一歩間違えば危険人物扱いされるブラスターの教育・啓蒙・管理・保護を行う。ブラスターのランクの付与・剥奪権限も持つ。ギルドの窓口業務としては、①クライアントからのクエスト受付、②ブラスターへのクエスト斡旋、③クエスト報酬管理(回収と支払い)など。


【ブラスター・ギルド コントロール室】

・横20メートル奥行15メートルの大きな部屋。

 30人弱の人間が慌ただしく働いている。


・ガヤガヤと室内に響く喧騒。話し声、アラート音、大声で報告する声。それに答える声。キーボードを叩く音。足音。椅子を引く音。様々の音…。


・正面奥に大画面が3つ。左が、火星からメインベルトまで含めた広域画面。

 中央が、火星とエウレカ付近の中域画面。右が、エウレカ周辺の狭域画面。


・大画面1つに対して、手前にオペレーター席が5席並んでいる。

 その後ろにの8人席で《ブラスター》が5人待機している。

 更にその後ろに、1人用の指示席がある。


・オペレーターが、コンソールを前に忙しく作業している。

 オペレーターの服は、全員揃いの、縦襟、灰色、肩の部分だけ色違いの宇宙服。


・ブラスター待機用の8人席では、5人の武骨な男達が待機している。

 縦襟の作業服兼宇宙服であることは共通しているが、色も形もマチマチ。

共通の白色のベストを羽織っている。


・オペレーターが立ち上がり、《海坊主》ともう1人のリーダーらしき男に話しかける。大画面の一部を指さしながら、会話している。

《海坊主》

 スキンヘッドで一際目立つ大男。年齢は、40代前半。身長は2mを超える。筋骨隆々で、頬に傷跡がある。〈ドリルシップ〉竜神丸のオーナー兼パイロット。ローラが現役のときのチーム「紅の魔女」のメンバー。スティーブンが、ブラスターになったときは、ローラの頼みで教育係としてメンバーを見た。

役割的には、クラッシャージョウのタロス。


・部屋の一番後ろに並ぶ3つの指示席。

 中央の椅子には《スティーブン》が座り、左の席には《エミリー》が座る。

《スティーブン》

 ドリーとケンノビの兄。ローラの実子。年齢は28歳。身長175cm。痩せ型・筋肉質。長めの白髪(横と後ろは刈上げ)を後ろで束ねている。甘いマスク。性格も良い。

 ブラスター・ギルドの4代目ギルドマスターだが、親の七光りではなく、実力で勝ち取ったもの。ブラスターのランクはAランク。今は休止中のAランクチーム〈白い狼〉のリーダーであり、海坊主とエミリーはそのメンバー。

 エミリーから受ける好意は嬉しいし、スティーブンもエミリーに好意を持っている。ただ、人族と犬族の種族差があり、エミリーの幸せのためには、エミリーは犬族の男性と結婚した方が良いと思っている。


《エミリー》・ハドソン

 金色の犬族の美女。髪の毛はボブにして、健康的な色気を感じさせる。出来る女性と言った感じ。スティーブンを自分の命よりも大事に思い、愛している。

 ジブリの「名探偵ホームズ」のハドソン夫人(マリー・ハドソン)のイメージだが、ビジュアルは、人間の恋愛対象になる程度に人間に寄せる必要あり。


・コントロール室に、鳴り響く警報音。

 広域画面のメインベルトの一角に赤い点が表示される。

 中域画面が、小惑星と《採掘プラットフォーム》の位置関係を表示。

 狭域画面が、スカルドラゴンが炎を放っている動画を表示。

《採掘プラットフォーム》

 規模の大きい精製プラントで、小惑星からレアメタルを掘削・生産するために必要な採掘者や機械類を収容し、小惑星に接して設置される施設。

 全長330mの輸送船2隻を1辺150メートルの正方形の甲板で繋いだ双胴船のような形状をしている。甲板上部に塔が連なるような外見のプラント区画が設置され、甲板下部には直径150mの円盤状の居住区画が設置されている。

 現代の石油プラットフォームのイメージ。


オペレーターA:「スカルドラゴン確認しました。2本角です。小惑星イシスです。採掘プラットフォーム・マルスが、稼働中です」


・海坊主と4人の屈強な男達がヘルメットを片手にスッと立ち上がる。揃いのベストの背には、「BLASTER」の字、導火線に火の点いた爆薬を背景に、8本の角を持つ竜と、2本の剣が図案化され、一番下に「出偉毘寿」の字が描かれている。


・コントロール室の端にある床に空いた人ひとり通れるほどの穴に向かう、穴の中央には、天井から伸びるポールが床下に伸びている。棒には、1.5メートル毎に、持ち手兼ステップが付いていて一人用の簡易リフトになっている。海坊主がスティーブンに視線を投げて軽く頷き、ステップに足を乗せて階下に消えていく。残り4人も順々に捕まって階下に降りていく。


・エミリーが、後ろを振り向きスティーブンの顔を見る。


スティーブン:「マルス側は?」


エミリー:「《ライディン鋼》使ってるのは、シェルターのみです。専属のブラスターも居ません。もって1時間くらいかと…」

《ライディン鋼》

 スカルドラゴンの角部材・クロム・モリブデン・タングステンカーバイド・セラミックス・コバルトを主原料とした合金。ドリルシップ用のラム(衝角)や船殻の材料や、対スカルドラゴン用パワードスーツの装甲・武器の部材として使われる。

 時空間への強い透過性があるため、D-ダイブのラム(衝角)の主要素材。。

 また、スカルドラゴンの青い障壁(ブルースペース)への強い硬性攻撃力があり、スカルドラゴンからの攻撃(ブルーブラスト)に対しては強い硬性防御力を持つ。

 スカルドラゴンに、人類の銃器が効かない状況で、ライディン鋼を使ったシェルターが最初に作られ、次に、ライディン鋼を使った装甲で覆った戦闘用外骨格パワードスーツが作られた。まだまだライディン鋼は高価で、ライディン鋼を使ったパワードスーツや迫撃砲は一般的に普及していない。


オペレーターB:「四代目! マルスより、ブラスター派遣依頼来ました」


スティーブン:「よし。〈紅蓮の牙〉にクエストを伝えてくれ。相手は2本角だが、油断するなとな」


エミリー:「四代目! 了解しました」


・スティーブンが、げんなりした顔で、エミリーに話しかける。


スティーブン:「エミリー、四代目は止めてくれ。呼ぶなら、ギルマスか、スティーブンで良いだろう?」


・エミリーが、マイクで紅蓮の牙に連絡を取ろうとしている。視線だけ、スティーブンに向けて艶っぽい微笑みを浮かべる。


スティーブン:「〈紅蓮の牙〉は、Cランク成りたてか。功を焦らなけりゃ良いが」


エミリー:「大丈夫ですよ。海坊主が付いていますし」


・エミリーの席の呼び出し音が鳴る。エミリーは、手が離せない。スティーブンが、通話を取る。


スティーブン:「スティーブンだ。エミリーは手が離せない」


通話の相手:「あっ、四代目ですか。丁度良かった、三代目が…」


・通話の向こうで、ローラが怒鳴っている。


ローラ:「何度言ったら解るんだい。ここはギルドのカウンター、この娘達の仕事場なんだ。他人の仕事場で酒なんか呑んでんじゃないよ。がぶがぶ酒を呑むなら他へ行きな! このボンクラどもめ!」


・スティーブンが手で額を抑える。額には深い縦じわ。深いため息。


スティーブン:「解った。コントロール室へ向かわせろ」


受付嬢:「ありがとうございます。四代目。すぐに行ってもらいます」


・スティーブンが、通話機を見て溜息をつく。


スティーブン;「何とかならねえのか、その呼び方…」



【補足】

〈マヌエル・ジャンク・ショップ内部設定〉

 採掘船乗員向けの雑貨店。

 店のイメージとしては、遠洋漁業が盛んな港町にある船員向けの食料品店兼雑貨屋に近い。マヌエル・ジャンク・ショップでは、食料品・衣類・ソフトスーツ(船内宇宙服)・ポーターやパワードスーツの部品や素材・各種工具・各種中古機器等を扱っている。

 店内の仕様は、オートバックスのような整備ピットスペースを持つ自動車関連用品専門店のイメージ。

・店の大きさは、間口70m奥行50m。

・入口が中央。入口入って右がレジとバックヤード。入口左が商談コーナーの机と椅子4脚のセットが3つ。

・店内の売り場は、重量棚のようなゴツイ骨組みで幅15m奥行1.8m高さ2mの陳列棚が10本並んでいる。展示イメ―ジはコストコ。

・陳列棚には、インスタントラーメンから、本から、パワードスーツの腕から、宇宙作業服、点検用テスターが置いてある。平置きスペースには、ポーター用クラスターや、中古のパワードスーツなども展示されている。

・店内入口から突き当りの1辺が4連のピットエリアになっている。構造的には、店内>隔壁・エアロック>ピットエリア>ポーター出入シャッター・簡易エアロック>宇宙空間という造りになっている。ピットエリアは、ポーター4艇分の定期点検・部品交換等作業ができる作業場になっている。店内とピットエリアを隔てる壁は、上半分が透明のアクリルのような素材で出来ていて、下半分の壁沿いにはハイタイプのカウンターとチェアが置かれている。


〈フォボス〉と〈ダイモス〉

 火星の衛星。フォボスは11時間毎に西から東へ上る。ダイモスは東から上り西へ沈むが、沈むまで2.7日かかる。


《スカルドラゴン詳細設定》

 スカルドラゴンは、次元震のときに現れるため、次元の異なる世界の生物と考えられている。

 スカルドラゴンが出現する際、青い波打つ光の向こうから現れる。その向こうは異次元だと考えられている。人類の武器や弾丸は、この青い波打つ光に触れると勢いを失ってしまって、スカルドラゴンには届かない。

 スカルドラゴンの物理攻撃、顎から吐く青白い炎は人類の従来防御を簡単に貫通する。

 スカルドラゴンは、こちらの次元に出現中に死亡すると、外骨格のみ残し、その中身は消滅してしまう。この外骨格に特殊な化学処理を行なって、レアメタルに添加してライディン鋼という合金にとすることで、スカルドラゴンに届く武器を作ることが出来る。



[神沢コメ-2_230328]

 「シーペリル号の冒険」という作品が大好きです。イギリスの湖畔地方の高校1年生3人組が、オンボロの平底船を人力外輪船に改造して、夏休みに川を上る物語です。訳者さんの後書きにありますが、イギリスの夏休みにホームステイに行ったみたいというのは、言い得て妙だと思います。

 自分の興味に正直に真っすぐに生きる少年達と、少しだけ物事が上手く進む世界、そして少年達を温かく見守りさり気なく助ける大人達、イギリスの自然の描写、イギリス人の特徴をコミカルに捉えた描写、憧れます。

 この物語は、元々「シーペリル号の冒険」をお手本として、習作として書いたのが始まりです。

 もう1つ好きな物語があります。小学生の頃読んで、題名も思い出せない物語。

 夏の終わりにグライダーを飛ばすコンテストがあって、そのコンテストに出場するために、小学生2人が秘密基地にしている部屋で1m位の大きさのグライダーを作っています。もうすぐグライダーが出来上がるというタイミングで、小学生2人は若い青年の脱走兵と出会い、彼を秘密基地に匿います。脱走兵と言っても悪人ではなく、ベトナム戦争のような正と悪がはっきりしない戦争で、戦争に行くのが嫌で逃げ出した脱走兵だったと思います。そして、小学生2人は、脱走兵と仲良くなります。脱走兵は結局当局に捕まってしまうのですが、彼が連行されるその時に、小学生2人は脱走兵の名前を大きな声で呼びます。脱走兵がその声に振り返ると、小学生2人が、夏休み中掛けて作ったグライダーを、秘密基地の窓から空に向かって飛ばすのです。そして脱走兵は嬉しそうに眩しそうに、空を飛ぶグライダーを見上げて、2人にさよならと手を振ります。

 この2つの物語の足元にも及びませんが、そんな作品を書いてみたいと思っています。



[用語集]

〈ジェネレーター〉

 宇宙船のメインエンジン。核融合炉の一種。発電機。


[改稿点]

・240725 改稿

 ①「マヌエル・ジャンク・ショップ」について、宇宙から見た位置情報を追加。

  「マヌエル・ジャンク・ショップ」内、ピットエリア周辺描写追加。

 ②「次元」→「時空」に変更。

 ③「時空震」の概要を追加。

・240825 改稿

 ①ガンシティの概要を追加。

 ②マヌエル・ジャンク・ショップの店内設定を追加。


[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②【】 主に、場所を記載する。

 ③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。

     本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。

 ⑤ ・  主に、登場人物の動きや表情を記載する。

 ⑥ ・  アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。

 ⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑧ 説明:状況を説明する。

 ⑨[] :神沢メモ他を記載する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。

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