アステロイド・オペレーション【シナリオ】

神沢 篤毅

〖起-1〗2人の英雄(230806改稿)[神沢コメ-1_230326]

【サカモト総合高等学校 教室前廊下】

・学校の廊下。窓から廊下に光が射している。静か。

 《ドリー》が1人きり窓際に立っている。

 明るい茶色のブレザーと白のシャツ、胸元の控えめな赤のリボン、茶系のチェックのスカート。

 《ドリー》

 ドリー・オーケリー・デイビス。

 性別:女性。身長160cm、細見のシルエット。15才、2月生まれ。高校1年。

 赤い少し癖毛のショートカットの髪。少し気が強そうな大きな瞳。そばかすが散って、ちょっと上を向いた小さな鼻。微笑むように弧を描く薄めの唇。


・ドリーが、窓に向き直る。

 蜜蜂の羽音。

 窓に向かって、右手の人差し指を当てる。

 左手には2人分のお弁当が揺れてる。


ドリー:「どうしたの《フラウ》? 今日は機嫌が良いじゃない?」

《フラウ》

 蜜蜂。ドリーの友達。


・フラウが、窓のガラスに着地する。

 羽を震わせる音。


ドリー:「アザミの花が咲いたの? もう夏だもんね。良かったね」

・フラウが、羽音を鳴らす。


ドリー:「私? 授業早く終わったから、ケンノビ待っているんだけど…」


・廊下のスピーカーからチャイムが鳴り、昼休みを告げる。

 学生が、教室の扉から溢れるように、一斉に廊下に出てくる。

 学生服や体操服、ジャージなどを来た男子生徒・女子生徒達。

 その中にチラホラと犬耳の生徒が混ざっている。

 高校生達の能天気な会話が、廊下に溢れる。


・1人のちょっと派手めの犬耳の女子が、少女に気付いて話しかける。


女子:「どったの?ドリー? 誰か待ってるの?」


・女子が、ちらりとまだ授業が続く教室を見て、はは~んという表情をして、ちょっと動作を止めて耳を傾ける。ピコピコと犬耳が動く。動き出して、ドリーの肩をポンと叩く。


女子:「 健気だね~。ケンノビとお昼ご飯?。サンディが絶好調で授業してるから、もうちょっと時間が掛かりそうな感じ。サンディは話長いんだよねぇ。」



【サカモト総合高等学校 昼休み前 ケンノビの教室】

・教室の中に30人程度の生徒が授業を受けている。

 生徒は、男女混合で、犬耳を持った者が2~3人混じっている。

 ある者は教科書の陰でポチポチとスマホをいじり、ある者は極力口を動かさないようにモグモグしながら早弁している。


・教室の真ん中くらいに、《ケンノビ》が、ぼうっとした表情で授業を聞いている。

 隣の席の男子が、ケンノビにコソコソと話かけると、ケンノビが、ニヤリ笑って応える。学生服で白いシャツを第2ボタンまで開けて着ている。下は、黒の学生服のズボン。

《ケンノビ》

 ケンノビ・オーケリー・デイビス。

 性別:男性。背格好は痩せ型身長は170cm程度。15歳、12月の誕生日で16才。少しボサボサ気味の黒髪。目は細めで、鼻が高い。黒縁の眼鏡を掛けている。笑うと笑窪が浮かぶ。どちらかと言えば地味だが、暗くはない。座っていると、左足の貧乏ゆすりが止まらない。教室では、よく男友達とじゃれている姿を見かける。右の手のひらに酷い火傷の跡が残っている。

ギフト:機械に質問すると、YES・NOの回答を得ることが出来る。


・《サンディ》が、黒板を背にして教壇を前に立って、長い手足を振るいながら、早口に大きな声で授業をしている。草臥れたシャツの長袖を肘まで捲り上げて、ネクタイは苦しくないように緩めに締めて、スラックスのアイロンは取れてしまっている。

《サンディ》

 性別:男性。背は、180cm。手足が長くひょろりとしている。顔は面長で、どちらかと言うとハンサムで愛嬌のある顔立ちをしている。髪はくすんだ金髪で、肩まで届く長さ、緩くウェーブが掛かっている。27歳。背が高くて痩せ型の熱心な歴史の教師。出身はルナシティ。生徒を弟や妹のような優しい目で見る。身だしなみや世間体には気を使わない。


サンディ:「…今日の授業までが、〈地球の歴史〉と〈地球からルナシティへの移民の歴史〉になる。まぁ、一般教養だな。次からがお楽しみだ」


・サンディが、黒板に、カツカツと文字を書き込んでいく。

 ①植民地ルナシティ。不平等通商条約。約20年後の食糧危機・滅亡予測。

 ②ルナシティ独立派の台頭。ルナシティ独立宣言。

 ③人類初の大規模宇宙戦争。ハードロック・オペレーション。休戦・独立。

 ④ハードロック・オペレーションが、大規模な地球環境破壊を引き起こす。

 ⑤ルナシティ親地球派の巻き返し。親地球政権を発足。再び植民地となる。

 ⑥ルナシティ独立派、火星・小惑星へ新天地を求めて移民を実施。

 ⑦地球側の意向により、ルナシティ親地球派も、火星・小惑星へ移民を実施。

 ⑧火星を舞台にした、独立派と親地球派の内戦危機。

 ⑨電撃的な「無血講和」の成立。

 


サンディ:「①~⑨には、2人の英雄が出てくる。皆が好きな英雄はどっちだ?」


20人位の学生:「「《レイラ・サカモト》!」」

《レイラ・サカモト》

 2人目の英雄。

 2127年 生

 2160年 没(33歳)

 性別:女性。腰まで届く漆黒の髪。意思の強そうな青い瞳。

 細身のシルエットでいながら、抜群のスタイル。


10人位の学生:「「《オーケリー・デイビス》!」」

《オーケリー・デイビス》

 マヌエル・ガルシア・オーケリー・デイビス。

 1人目の英雄。ルナシティ独立戦争の最大の功労者。小惑星・火星への移民計画を主導し・実行した立役者。

 2075年 独立戦争開始時 40歳

 2127年 エウレカ到着時 92歳

 2155年 没       120歳

 性別:男性。作業中の事故で左手は肘から先はなく、12本の作業用人工腕を使う。銀髪の角刈り。身体は逞しく、身長は175cm。筋肉質で厳つい印象。



サンディ:「その理由は?」


学生A:「レイラは、「無血講和」を成し遂げた!」


学生B:「人類初めてのギフト保持者。スカルドラゴンを最初に倒した!」


学生C:「〈木星音階〉を聞いて、人類にオーバーテクノロジーをもたらした!」


学生D:「彼女は、オーバーテクノロジーで、僕達犬族を進化させた!」


・サンディが大きく頷きながら質問する。


サンディ:「オーケリー・デイビスについては?」


・学生達が一斉に、ケンノビを見る。


・ケンノビが、居心地悪そうに周りを見回す。


サンディ:「ケンノビ、どうだ?」


・ケンノビが諦めたように肩を竦めて、スマホを検索し、それを見ながら話し始める。


ケンノビ:「オーケリー・デイビス。ルナシティ独立戦争で、防衛大臣を務めた。月から地球へ100トンを超える岩をカタパルトで射出する「ハードロック・オペレーション」を実行し、当時の世界連邦から実質的な独立を勝ち取った。その後、ルナシティ政府が親地球政権になると、戦争犯罪を問われ、約20年間にも及ぶ自宅監禁を受けた。」


・サンティが、黙って難しい顔でケンノビの話を聞いている。


ケンノビ:「その後、ルナシティ政府より小惑星帯への移民命令を受けるが一旦断っている。再度の命令を受け、支持者約150人で移民団を結成し、2隻の輸送船を改造した移民船に乗って出航した。2年の歳月をかけ、火星の周回軌道に浮かぶトロヤ群小惑星に辿り着くと人工コロニーを建設し、移民を成し遂げた…。」


・ケンノビ:「一度も会ったことのない、写真を見ただけの曾祖父です」


・バン!と教室のドアが開き、ドリーが大きな声で叫ぶ。


ドリー:「先生、授業長すぎ! お昼休み終っちゃう!」


学生A:「おっ、嫁が来たぞ」


・ドリーが、言った生徒を形だけ睨むが、頬は少し緩んでる。


ケンノビ:「妹だよ。知らないヤツが聞いたら誤解すんだろ?」


ドリー:「妹だけじゃない!」


ケンノビ:「んじゃなんだよ?」


・ドリーが、顎の下に右の人差し指を当てて、少し照れたような顔で答える。


ドリー:「…血の繋がらない…幼馴染?」


ケンノビ:「そりゃ、俺たちは血は繋がってないけど…。」


・ドリーが不服そうに頬を膨らます。


ドリー:「血が繋がってないだけじゃない!」


・教室にいるサンディと生徒達が、尊いモノを見るように、軽く首を横に振りながら、ウンウンと頷いて呟く。


一同:「…甘酸っぺぇ~。」


・ケンノビが、ふと思いついた顔をして、サンディに向かって話し出す。


ケンノビ:「先生、俺ら孤児で養子だから、ひい爺ちゃんとは血繋がってないし。ひい爺ちゃんと俺ら、関係ないから」


・サンディが、ケンノビを見ながら頷く。小さく呟く言葉。


サンディ:「宝珠が導き再び出会うとき、新たな人類の旅路が始まる」


・ケンノビが、首を傾げて、何?聞き取れないとゼスチャーする。

 サンディが、首を小さく横に振って微笑む。


サンディ:「レイラが暗殺される前に、残した言葉だ」


・画面がゆっくり暗転して、数秒そのまま。


小惑星エウレカの手前に、スペースコロニー《ハヤブサ》が浮かぶ。

《エウレカ》

 5261 Eureka 火星周回軌道上、ラグランジュ点に浮かぶトロヤ群小惑星。

全長が110km、全高と全幅が60kmの小惑星で、巨大な猪が伏せているような形をしている。深宇宙方向に向かって顔を向け、太陽方向に尾を向けている。背中の部分には、太陽光発電パネルが大量に設置されて、太陽光が反射して光っている。太陽光パネルが、尾の方向に向けて立てられており、体毛を逆立てているように見えるので、「アングリーボア(怒れる猪)」と呼ぶ者もいる。口から胸にかけて、直径7.5km奥行11kmの造船ドッグゲートがある。ドッグゲートの後ろ(エウレカの胸の辺り)に、ドッグ従業員とブラスターが住む旧市街のガンシティがある。エウレカの胸の下の辺りに、スペースコロニー〈ハヤブサ〉が浮かんでいる。


《ハヤブサ》

 エウレカの胸の下に位置しているスペースコロニー。

 全長40km全幅30km全高20km。スペースコロニー(全長30km直径6kmの円筒形コロニー2基並列配置)を、楕円形の平面構造物(バンパー)が囲んでいる。2本のアーチが、コロニーの上下を守るように、バンパーの短手方向をぐるりと囲んで接続されている。


説明:「小惑星エウレカの傍に浮かぶスペースコロニー・ハヤブサでは、多くの人が特殊な能力を持っている」


説明:「どれも中途半端なチカラで、用途もバラバラで、役に立つのか立たないのか判らないものばかり」


説明:「エウレカを救った英雄〈レイラ・サカモト〉とは、比べ物にならない。…出来損ないの英雄達」


・ハヤブサの背に小惑星エウレカ。その後ろから、〈火星〉が浮かび上がる。


・テロップ:「Live way of Faulty Heros. 」



[神沢コメ-1_230326]

・この物語は、元々「シーペリル号の冒険」をお手本として、習作として書いたのが始まりです。その流れで、当初主人公の男の子はピーターと言う名前でした。女の子の主人公は、アーサーとする訳にもいかず、元気な女の子という意味合いで「赤毛のアン」から、アンという名前を頂きました。

 結局のところ、ケンノビとドリーになった訳ですが、ケンノビは「のび太」から来ています。そして、ドリーは「ドラえもん」から来ています。

 「桜」という歌があります。ドラえもんとのび太を題材にした歌だそうです。パッと聞いた感じでは、男性から女性へのラブソングにしか聞こえません。

 その曲を聴いてから、ドラえもんは、のび太の傍にずっと居たいと願っていて、将来のび太としずかちゃんが結婚することを哀しい寂しい未来と捉えているのではないかと考えるようになりました。

 話が長くなりましたが、この物語はドリー(ドラえもん)が、ケンノビ(のび太)の傍に、自分の居場所を見つける物語です。ドリーは、ケンノビ(のび太)の幸せを第一に願って、自分の幸せに繋がる1歩を踏み出せないかも知れませんが、最後は覚悟を決めてのガツッ!とケンノビを掴みに行ってくれると信じています。



[改稿点]

・230806改稿

 ①サンディが語る歴史を整理しました。学生の発言を一部変更しました。

 ②「犬族+猫族」でしたが、「犬族」のみとしました。

 ③ハヤブサの大きさが抜けていたので追記しました。

 ④エピソード名変更しました。



[記号凡例]

 ①〖〗 エピソード番号 起承転結に分けて採番する。〖資〗は資料編。

 ②【】 主に、場所を記載する。

 ③〈〉 氏名・固有名詞・用語。本文中に説明があることがある。

 ④《》 氏名・固有名詞・用語の説明。

     本文中と資料編「登場人物・用語集」に説明がある。

 ⑤ ・  主に、登場人物の動きや表情を記載する。

 ⑥ ・  アニメで言う背景・ドラマで言うセットの内容を説明する。

 ⑦ 名前:セリフを記載する。例)ドリー:「こんにちは!」

 ⑧ 説明:状況を説明する。

 ⑨[] :神沢メモ他を記載する。

 ⑩ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ :シーンとしての区切り。

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