姑息
魔物が襲いかかるその時
「襲いかかるなんて――物騒ですね」
その声が聞こえた瞬間
「グァ゛ー」
吐き気に襲われる程の圧がかかる、体勢を崩し四つん這いになる。
呼吸ができない、息をしようとしても喉の奥からストッパーがかかり、吐こうとしても呻き声のようなものしか出ない
「あ゛…あ――ハァハァ」
俺は息を取り戻した
顔を上げると魔物はいつの間にか何処かへ消えていった
そして人がいた
「普段はおとなしい魔物なのですがね?あなたの一体どこに興味を惹かれたのでしょう?」
「あなたは…?」
タキシード姿の白髭を生やした男がそこには立っていた
「ワタクシは、サギョウと申します。どうかお見知り置きを」
男は丁寧に帽子を外しお辞儀をする
その姿はまるで紳士だ
「助けてくれてありがとう」
俺も相手に向けてお辞儀をする
「助けた?ワタクシにそんな気はありません。」
真剣な眼差しをこちらへむける
「一刻も早くここから退去してもらいたく思い、危険ですので」
帰るようにサギョウは促す
「そうか…だが俺は…」
能力を出そうとしても何も起こらない、このまま続ける必要はあるのか?と葛藤し、考えていると
腕をサギョウに掴まれた
体中に悪寒が走った
「冷たい…」
サギョウの手は口調や姿見からは考えられない程の冷たさだった
――まるで人ではないようだ
「ワタクシについてきてください、そうすることで帰路につくことができます…」
俺はここで諦めることはしない。さっきは無様にやられたが、覚醒するまで何度でもやってやる
「いや…おれは行く」
「何を言ってるのですか?それでは危険です」
「助けてくれたのは感謝してる、だけど俺は…行く」
「はぁ…ワタクシはあなたの事はどうでもいいのです。この先に行かれては困る」
「なにかあるのか?」
サギョウは黙ったまま、手に力を入れた。その手には血管が浮かび上がり、年老いた者の力では出せない程の力
「いででで!」
「あなたが帰ると言わないのなら、ワタクシはこのままあなたの腕を折ります。」
さっきのサギョウが来た時の圧と同じようなものがあった
「わーかた!帰るよ!だから手を離せ」
「分かればよろしいのです」
サギョウは腕から手を離す
「行きましょうか、こちらです」
そう言い、俺が魔物から逃げようとした方向とは逆の方へ誘導した
少し歩いただろうか
「なぁなぁサギョウ、お前なんか落としたぞ」
俺は何気なく、嘘をつく、それに騙されたサギョウは、首を後ろへ向け下を向く
「なんでしょうか?」
「おらぁ!」
ニヤリ、俺は地面を思い切り蹴る――土が空へ飛んでいき、サギョウの顔面へ、びしゃりとついた
サギョウは目が眩んだようだ
「今だ!にーげーろ!」
俺はダッシュでUターンし、逃げた
そりゃあ、姑息な手で
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