俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
二部第16話 変態、二世にウザ絡まれ、オワタ
二部第16話 変態、二世にウザ絡まれ、オワタ
【黒の勇者】西黒善一郎。
現役勇者の中では最年長で、チーム【黒龍】という【モノノフ】の対抗馬的チームのリーダー。ぶっちゃけ、商売的には【モノノフ】より稼いでいるらしい。この前テレビで言ってた。露出も多い。いや、氷室姉妹的な肌色という意味でなく。メディア露出の方ね。
実力も兼ね稼ぎの才能もある有名人だ。
そして、その息子。
正直、イケメンだ。ちょっと小柄ではあるがそれがまたかわいいのにかっこいいと女子の間では人気らしい。け!
ただ、結構生意気発言が多く、ネットではよく【二世勇者】と叩かれている。
そんな壱星君が、俺に話しかけた秋菜に気付き声を掛ける。
「あれ? 【桃の魔女】の秋菜ちゃんじゃん? 君も彼女達と一緒に来たの?」
秋菜を見つけた途端、夏輝スルー。ブサイクスルーってか?
テイクアウトでホタテお持ちしてやろうかこの野郎!
「なあんだ、ラッキー。こんな美少女集団とフェスで遭えるなんてマジでついてるわ」
え? もしかして、アタシも、ナツキも美少女に入ってる? トゥンク。
なんて思う間なく俺を押しのけようとする壱星くん。
「はいはい、気分いいから見逃してやる。だから、とっとと去れって、コイツ……!」
俺は全身を重くなるよう【赤変態】して、どかそうとする壱星君を妨害する。必死で動かそうとする壱星君。ウケる。一休君だったら、避けて歩いただろうに。頭が固いなあ。
「……あ、お前、【変態】か!」
その時漸く壱星君は俺の正体に気付いたらしく、叫ぶ。
そうです、私が変態です。
うっせえわ! 誰が変態だ! 俺だよ! 俺が変態だよ! なんなんだよっ!
脳内絶叫で心を落ち着かせた俺はメディア用スマイル(未使用)を向けた俺に対し、メディアでもう散々擦りまくったイケメンフェイススマイル(中古)を向けてくる壱星君。
「ぶははは! 変態だ! マジ変態だ! 生変態! ぎゃはははは!」
うわぁ、すっげー笑ってるぅ……。二世勇者の辞書に失礼と言う文字はない。覚えたぞ。
だが、ぶっちゃけ困った。
面倒な事にはなってほしくない。
正直、厄介な相手に絡まれた。コイツ自身はどうだかわからないけど、コイツの親父は面倒だ。なんてったって、俺の師匠である【鋼の勇者】に対して滅茶苦茶対抗意識を持っているらしく、何かと敵視しているようだ。その上、色んな所にコネを持っていて、息子の不祥事を権力でもみ消したなんて噂もある。
息子は息子で色んな芸能人に手を出しているド助平野郎らしい。
東江さん、上田さん、そして、秋菜を見る目は厭らしかった。
厭らしかったのに、イケメン補正で気持ち悪くならないのはこれいかに!
おい、神様! マジで世の中不平等すぎんか!?
とはいえ、見た目気持ち悪くないだけで、三人とも嫌がっている様子なので助けてあげたい。
「おい、変態。オレに逆らうってどういうことか分かってるよなあ?」
壱星君がそんな事を言ってきた。いやら……くそう! イケメンフェイスで!
というわけで、決定しました。
逆らいます。
はあ? イケメンは全員敵じゃこらああ。
「ん? なんだ? 煙? 急に……どっから流れて……?」
俺は、こっそり変態しておいた〈
「秋菜、東江さん、上田さん! 行こう!」
「え、あ、に、兄さん……手! ありがとうございます!」
「くれくら様の御心のままに!」
妹と東江さんが何か言ってるが気にしない! 気にしたら負けだ! マジで!
ステージの人ごみに紛れれば流石に探すのは難しいだろう。そう思って駆けだしたその時だった。
「ちょ、待てよ」
イケメンがやっぱりイケメン語を使うのか、壱星君の声が聞こえ、風が吹き荒れる。
〈
観衆たちが吹っ飛び、俺達とチームドキュンの周りに誰もいなくなる。
「おいおい、逃げるなよぉ。ビビり君。ビビってんならさ、女置いてけ。そしたら、見逃してやる……!」
脅迫スマイル(イケメン)でほざいてくるゲスイケメン。
逃げることは難しそうだ。
「あー、じゃあ、好きなだけ俺、ボコっていいんで、妹たちは見逃してくんないスかね?」
ぶっちゃけ、相手が悪い。
氷室さんでも三井さんでも【黒の勇者】と揉めるとしんどいだろう。
だから、出来るだけ穏便に済ませたい。
だが、ゲスイケメンはやはりゲスイケメンだった。
「はあ? ばーか。お前はボコる。女は寄越せ」
ゲスいなあ。
俺は覚悟を決めて、秋菜を見る。
「ごめんな、秋菜」
「兄さん?」
秋菜が不安そうにこちらを見てくる。本当に申し訳ない。
不甲斐ない兄を許してほしい。
「揉めるわ」
「……ばか!」
嬉しそうに怒ってくる秋菜。
こうなったら仕方ない。やるしかないのだ。腹をくくろう。
大体……妹と友達を寄越せなんて言うクソヤローにこちとらガチギレですわ。
俺は魔力を最大限練り始め向かい合う。正直、下衆野郎ではあるが、実力は凄い。
「ははははは! いいね、お前が抵抗したらそれだけもみ消しも楽になるわ」
うるせえ、黙れ。まぢさいぁく。めっちゃ凶悪な魔力溢れさせやがって!
そして、俺とゲスイケメンがぶつかり合おうとしたその瞬間だった。
『HENTA――――――I!!!!』
マイク越しの強烈なシャウトがフェス会場に響き渡り、俺とゲスイケメンの魔力が消える。
声の方を向くとステージ上で、金髪グラマラス美女がこっちを見て手を振っている。胸が揺れている。
『久しぶりだね。君がフェスに来るなんて、どういう風の吹き曝し? ちょっと、ステージに上がってきなよ』
ふきまわし、な。
金髪グラマラス美女が真っ直ぐ俺見て言うもんだから、オーディエンスが道を開け始める。
モーセかよ。
だが、助かった。流石に、日本の勇者候補でも彼女には手が出せないだろう。
苦虫を噛みつぶしたような顔をするゲスイケメン。くそ、苦虫噛んでもイケメンかよ。
もう顔も見たくないわぷい! と、俺はステージの方へ向かおうとする。
だが、秋菜達は……?
『ああ、そこのかわいこちゃん達も連れて来なよ。まあ、男の会場ってヤツだし、軽くお経をすえるだけにしてあげるから……カモン』
甲斐性、な。そして、お灸、な。
いや、そもそもあんたのモノでもないんだけどね。
金髪碧眼の美女シンガーであり、アメリカの【歌姫】であり【歌う英雄】、エマ・ゴールドバーグが俺を手招きしていた。
ああ、遂に海外勢も来始めたぁあああああああああ!
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