俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
二部第12話 変態、お家BBQでPAPA、オワタ
二部第12話 変態、お家BBQでPAPA、オワタ
BBQ。
バーベキュー。
語源は、西インド諸島の先住民タイノ族の肉の丸焼き用の木枠バラビクが『丸焼き』を意味するスペイン語に転訛したもの、らしい。ウィキな先生が言ってた。
というわけで、我が家では現在BBQ開催中。
主役は勿論。
「は~い、こちらのお肉も食べようね~♪」
「あ~ん……ぱぱ、うまー!」
ようじょちゃんである。ぎゃわぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
肉食べるだけでかわいいとかウチの子は天才ではないだろうか!
ひとまず、プールからわが家へようじょちゃんを連れて帰った。
レイのダンジョン庁や神辺先輩のラボが第一候補だったのだが、
「や!」
とウチのようじょちゃんがいやがったので、断った。
ようじょちゃんの意見が何よりも優先だ。
ようじょちゃんを泣かすヤツはマジで許さねえ。
「夏輝のヤツ、本当に父親気分だな」
「ようじょちゃん、ぎゃわぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
眼鏡が眼鏡クイしながら何か言っている。
父親気分ではない。父親なのだから。
アホ、うるせえ。てめえに娘はやらんぞ。絶対に。
ようじょちゃんはウチに連れ帰ったが、流石にそれではいオッケーとは出来ず、関係者を集めて相談することになった。
だが、ようじょちゃんがお腹を空かせたら大変なので、BBQを開催しながらだ。
「まず、魔力含め可能な限りの調査の結果、やはりあの子に関するデータはなかった」
氷室さんには、ようじょちゃんの個人情報を調査してもらったのだが、やはり見つからなかったらしい。
それはさておき、氷室さんのお皿には串がこんもり。ぼっち美女はBBQがめちゃくちゃ嬉しいらしい。
「こちらでは、採取した魔力を改めて調査してみたが、やはり、更科夏輝と酷似した魔力だと判明した」
神辺先輩はあのあと、俺とようじょちゃんの髪の毛などを採取し、大学のラボで調べてくれた。
それはさておき、神辺先輩と姉さんが俺の食べ終わった串を取り合っている。
趣味で集める姉さんと調査で集める神辺先輩。
どっちがマシか。どっちもイヤだわ、ばかやろう。なんだその二択。
「僕の【看破】でも、同じように見えましたがやはりですか……もぐもぐ」
眼鏡がクイしながら食いながら喋っている。こいつも氷室さんと同じく初BBQらしい。
しかし、やはり俺とようじょちゃんは、通常の親子による魔力の相似現象が起きているらしい。
魔力は遺伝子に近く、親子や血縁関係でベースは似ているらしい。
今回は、その親子のパターンに俺とようじょちゃんは似ていた。
ちなみに、ようじょちゃんはウチの両親が見ている。マジSMとか変な事教えたらぶっとばすからな。
だが、流石に弁えてるらしく、ようじょちゃんを親父の背に乗せおうまさんごっこをしている。……健全だよな? 健全であれよ。
「さて……では、神辺。君の意見を改めて聞かせてくれ」
氷室さんがみんなにも焼けた串を配りながら、神辺先輩に問いかける。
「そうですね……あれから調べながら色々考察してみたんですが、飽くまで仮の話で。我々が言う所の『幽霊』という存在が限りなく魔物に近い存在なのではと」
「は?」
神辺先輩は目の前に上っていく煙を見ながらそう答えた。
「魔物は我々とは違う魔力の塊、魔力体で構成されている。だから、ダンジョンで死んだ魔物は暫くすると魔力化し、ダンジョンに喰われ、また新たな魔物として再生する。ここまでは現在でも仮説として広く知られるところだ。だが、今までは大前提として、『混沌からやってきた魔物とこちらの生物は根本的に違う』という話があった。だが、私はこう思う」
視線は煙の元を辿り、焼いている肉へと辿り着く。
「『魔力というものは元々こちらに存在していたが、我々が見えてなかっただけなのではないか』と」
神辺先輩が肉の刺さった串を持ち上げると、肉から出ていた煙は消えていく。
どっかの国が発明した何かが失敗して『混沌』と繋がった。
そして、それによってダンジョンと繋がり、魔物が生まれた。
また、それに対抗するかのように固有スキルなどが人間に備わるようになり、魔物に対抗できる人間が現れた。
それが一般的に知られた話だ。
神辺先輩は肉を食べることなくもう一度網に戻す。
すると、肉は再び音を出しながら焼かれ、煙を生み出していく。
「考えて見えれば、普通だよ。だって、我々は魔法と言う存在を遥か昔から信じていた。そして、リアルに想像できていた。なのに、魔法を実際に使っている所を見たものは混沌前ではほとんどいなかった。ちゃんと感じていたんだ。我々は、魔力や魔法、そして、魔物の存在を。恐らくだが……遥か昔に、混沌と繋がっていて、何かしらの原因で繋がりが途絶えたのではないだろうか。そして、人々はその事実を隠した。もしくは、忘れた」
焼き終えたのか、串を今度は更に移し食べ始める。
元々混沌はこっちの世界と繋がっていた?
ファンタジーな世界がやってきたのと、元からあったのでは話が違ってくる。
あたまがくらくらするくらい壮大な話になってきた。
神辺先輩は、肉一個を口に入れ噛み呑み込むとふうと息を吐き、
「まあ、これは我々研究者と、ダンジョン庁が考えることだ。ここまでにしておこう。それで、彼女についてのことだが」
神辺先輩は、ウチの父親にたかいたかいされるようじょちゃんを見る。
落としたらマジで56す。
「魔力で構成された魔力体であることは間違いない。そして、更科夏輝の話や最近の情報を加味した上でのこれも推察になるが、彼女は青蛸の巣という元居た自分の棲家から更科夏輝の身体というダンジョンに引っ越したのではないかと思われる」
は?
とんでもないことを言い出した。
引っ越し?
「魔物、という言い方はあまり良くなくなってきた気もするが、ひとまずだ。勘弁してくれ。魔物は良質な魔力が産出されるダンジョン核の近くに居たがることは誰もが知るところだろう。その習性が彼女にもあり、彼女は青蛸の巣の魔力よりも更科夏輝の魔力の方が良質であると判断した。そして、更科夏輝の中に入り込んだ。体内で更科夏輝の魔力を取り込んだ彼女は、ダンジョンに魔物が適応していくように、更科夏輝に合わせ始めた。それによって、思考や言動といった人間的能力を有するようになった。荒唐無稽だと笑われるかもしれないが、これが私の考えだ」
神辺先輩は、火力の弱いバーベキューコンロから火力の強いバーベキューコンロの方に串を動かしながら、説明する。
これまたとんでもない話だった。
人の身体がダンジョンに?
俺の魔力によって彼女が人間らしくなった?
串にソースをしっかりつけながら、神辺先輩は話を続ける。
「恐らく、更科夏輝の自身と他者を変態する能力があったからこその現象だと私は考えるがね。だが、これが事実であれば、彼女と更科夏輝を離すのは得策ではない。彼女にとって、更科夏輝の身体が家なのだから」
「ぱぱー!」
ようじょちゃんが駆け寄ってくる。
その話が本当なら、俺は彼女の家。であれば、俺が守らなきゃいけない。
あの子を、俺が。
だって、俺がいなくなれば、彼女の家がなくなるということだから。
「わかった。まだこの話は私のところでとどめている。暫くは様子を見よう。ナツ、彼女を頼めるか?」
俺は、そう言われ、ようじょちゃんを見る。
「ん~?」
ようじょちゃんは、なんのことか分からず首を傾げている。
「なにー?」
俺は、俺が、この子を守る。
ひとりぼっちになんてさせない。
「そうだ、更科夏輝、名前をつけてあげたまえ。このままだと不便だろう」
「な、まえ……」
みんなは俺が決めることに反対はないようで、微笑みながら頷いてくれている。名前……名前……。
「……!」
俺の中で浮かんだ一つの名前。
でも、これは俺のエゴではないだろうか。
仮にも自分の子供に押し付けていいんだろうか。
でも、もし、俺とアイツの力で生まれたのなら。
「ぱぱ! そのなまえちょうだい!」
彼女はそう言った。
なら、もう迷う事はない。
「トウカ……君の名前は、トウカだ」
「とーか! わたし、とーか! とーか! とーか!」
ようじょちゃん、いや、トウカは嬉しそうに笑って、自分の名前を何度も呼んだ。
こうして、俺にまた大切なものが加わった。
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