二部第9話 変態、プールでくんずほぐれてぽろり、オワタ

「いや、友達待ってるんで」

「ウォータースライダーなんて一瞬だし、忘れられない思い出作ってあげるからさ」


赤メッシュなドキュンさんが三条さんに絡んでいる。助けて食パンさん。

もしくは、諫めろよ。バイキンさん。


だが、この場にはどちらもいない。

愛と勇気だけが友達の悲しきアンパンさんの主人公もいない。


であれば仕方ない。

彼並みに、何のために生まれて、何のために生きるのか、こたえられないなんて、そんなのは嫌な俺、更科夏輝が飛び出そう。

あれって何気に子供向けじゃない哲学的歌詞よね。


「じゃあさ、ご飯行こうよ。そのあとは夜のスプラッシュマウンテ……」

「やあ、お兄さん。僕のパン……を喰らいなよ」


みんなのためにおそれない俺はドキュンさんに話しかける。

あ、ちなみに、おかしくなった元々おかしい二人はその辺に転がしました。


「ああん? 誰? きみ?」

「僕はナンパしているばか男くんをパンチしたいナンパンマン。愛と勇気と彼女達が友達さ」


ドキュンさんがとってもイライラしているご様子。

おなかが減っているのかもしれない。

だけど、残念ながらナンパンマンの顔はパンで出来ていないので食べさせてあげられない。

自分でプールサイドにあるカップ麺自販機とかで買って食べてほしい。

あれ、うまいよね。

だから、俺は説得をする。かの大ヒーローは一旦説得から始まるのがこだわり。

流石、子供たちのヒーローだよね。


「ナンパはやめるんだー」


だが、ドキュンさんは説得に応じない。

やはり、テンプレドキュンさんはテンプレ悪役だったのか。


「はいはいはい、わかったわかった。じゃあ、ちょっとプールにでも浸かって男同士でお話しようか~」


と肩を組んで俺をプールに連れて行くドキュンさん。

流石、ドキュンさん、脇が菌と仲良しのようだ。

健康的な生活をすればある程度は改善するらしいと後で教えてあげよう。


俺の背中を押してプールに入れ、ドキュンさんもプールにドブンと入ってくる。

わざと水を立てたようだが残念俺の顔は水にぬれても大丈夫。

水をはじく若々しい肌なのだ。

そんな肌にドキュンさんがドゴンと殴りかかってくる。


「おいおい、クソガキくん。あんま調子に乗らないでよ~。ナンパから助けて惚れられてイチャイチャ~なんて夢見てたらこんな風に痛い目見るんだよ~」


ドキュンさんがドゴンドゴンと殴ってくる。

確かに凄い力のようだ。

俺の前にあるスライムに変態させた水がすごい歪んでいる。

痛くはないんだけど。


まあ、ドキュンさんの言う通りだ。

ナンパから助けて惚れられてイチャイチャ~なんて夢だ。

実際のところはグチャグチャ~だ、俺の場合。


だが、今回は話が別だ。

ドキュンさんは空気が読めないから見えてなかったんだろうけど。

てめえみたいな距離感バグってるヤツが近づいてきて、三条さんの後ろにいるウチの妹が怯えていた。

寒さじゃない。怖さで震えていた。


俺は、


「妹怖がらせる奴は絶対に許さん」


絶対にだ。

俺は腹の底で熱い何かがグツグツ溢れ出すのを感じる。


『やっちゃえ』


おう。


「クソガキく~ん、ずっと俯いてないでさ~、ちゃんとお返事しないと~……って、あれ? なんで、アイツと離れ始めているんだ? ここって流れるプールだっけ?」


ドキュンさんが流され始めている。

目が濁り過ぎてバグってるドキュンさんには見えていないのだろう。

俺は、自分の足を〈海魔クラーケンのしもべ〉に〈赤変態〉させ、思いっきりプール内でバタバタしてやった。愛さんのバタフライと同じ要領だ。


「んんっ……!」


はい、俺が愛さんのこと考えたからってビクッってしないで、遠くで寝転がっている愛さん! 近くの少年たちが前かがみになっちゃうから。


なにはともあれ、強制的に生み出した流れるプールで流されるドキュンさんの周りのプールの水を〈青変態〉で渦潮に変える。


「あ、ああああ! ああああああああ~!」


あ、ああああ! ああああああああ~! だって、ウケる。

グルグル回り出すドキュンさん。

だが、こんなもんで終わりじゃねえぞ。


『そーだそーだ』


おう。

俺は、パンパンに圧縮させた水で作り出した拳でドキュンさんの腹を殴る。


「やあ、ぼく、ナンパンマン、ぼくのパンチを喰らいなよ」

「ば! ばばばばばばば!」


ぶっとびプールサイドに叩きつけられるドキュンさん

パンツを水の神に食われてしまってようで、ドキュンさんのつのが見えている。

スモールっすマウンテンでした。


あとのことは、レイに任せよう。

まあ、治安維持も勇者候補の仕事だよね、うん。


「お兄ちゃん!」


秋菜がこちらに駆けてくる。はい、プールサイドは走らない~。

と思ったが、ちょっと浮いているみたいだ。ドラ●もんかよ。いや、ド●ミちゃんか?

そのまま飛びついてくる。


「よかった。お兄ちゃん……」


思春期で難しい年ごろだが、最近はちゃんとというか昔のようにあまえんぼでお兄ちゃん的にはちょっと嬉しい。


「お兄ちゃん……私が震えてたから、助けてくれたって三条先輩が言ってたけど、ほんと?」

「そ、そんなんじゃねえよ」


テンプレツンデレ乙。しょうがないじゃないか! 俺だってまだ高校生なんだ。


「はい、嘘ね。心を読んだので分かります」


妹が高性能嘘発見器でした。固有スキルを使うなよ。


「お兄ちゃん、私の事好き?」

「べ、べつに好きじゃねーし」

「はい、嘘」

「妹の水着姿見て興奮した」

「べ、別にしてねーし」

「はい、嘘」


うわああああああああああ! もうやめてよぉおおおおおお!

しょうがないじゃないか! アイドルよりウチの妹の方がかわいいんだから。


「……! も、もう……お兄ちゃんたら」


はい、詰んだぁあああああああああああ!

いや、でも、大丈夫。性的なことがしたいわけではない!

だから、


「って、嘘。お兄ちゃん、本当に興奮してる? あの、お兄ちゃんの股の所」


抱きついている秋菜がもじもじしている。


う  そ  だ  ろ?


止めてくれ。流石にそんなお兄ちゃんはキモいぞ!

あ、そうだ! 自分で夏輝の夏輝を変態させれば!

と、股間に意識を集中した時、違和感に気付く。


夏輝のムスコが勝手に動いている。

いや、ちがう。

これは……。


「ぷはー! はははは! でれたでれた」


俺と秋菜の間にようじょが出てきた。


は?

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