俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第70話 変態、河童とぬるぬる相撲オワタ(カクヨム限定ストーリー)
第70話 変態、河童とぬるぬる相撲オワタ(カクヨム限定ストーリー)
「いや、にしても流石だね。あんな一瞬であれだけの変化を」
俺がそういうと、半狼に戻ったジュリちゃんが嬉しそうにしっぽを揺らしている。
「えへへ……ほめてもらえると嬉しいです」
うん、かわいい。かわいいから、暑い暑いって手で扇ぎながら服を脱ごうとするのを止めようね。この痴女姉妹が。
「あん! な、なつきさんしっぱはさわっちゃ、や、です……」
そう言ってジュリちゃんがなまめかしい声を出す。
事案。
ではない。彼女は同じ年齢だ。だが、小柄で目がくりくりしてアニメ声な彼女は果たして同じ年齢なのだろうかしっぽもふもふ。
「あん! あん! もう! そ、そんなに触りたいなら、むねを」
ナツキは触ることを止めた。
「それにしても、しっぽとかケモ耳とかめちゃくちゃいい毛並みだよね」
「はぅうう……そ、そうですね。わたし、動物すきなので、知るのも見るのも触るのも好きなので、けっこうリアルに再現できているとおもいます」
なるほど。変化させるにしてもイメージや経験、体験がリンクしてるんだな。
であれば、俺ももっとイメージを膨らませる、もしくは、体験・経験が必要なのかもしれない。
「待てよ……?」
「なつきさん……?」
そうか、経験だ。
俺は、ふと思いつき地面に左手を当てる。
そして、右手を……。
その瞬間だった。
「はあ!?」
「なつきさん!」
俺の足元に真っ黒な空間が。
いや、穴が生まれた。
「にいさん!」
「くれくら様!」
「ナツ!」
反対側で戦っていた3人の声が遠ざかる。いや、ジュリちゃんの声も。
俺は一人落下していた。
どういうことだ?
罠だったら、誰かが気づいていたはず。
魔力も感じなかった。
あの時はそんな気配なかった。
反対側の三人とそれと戦う河童、そして、俺がやろうとしていた【変態】の魔力以外なかった、はずなのに。
くそ! またイレギュラーか!?
そう思ったその時、地面が見え、俺は慌てて着地する。
浮島のようなところで、着地した瞬間地面が大きく沈み水が跳ねる。
足元は土だろうかこげ茶の地面が半径5メートルくらいの円形に広がっている。
そして、何故か、その島の淵に沿うように縄が置かれていた。
目の前には、苔の塊。
いや、違った。
そう見えたものは河童だった。
そして、その河童は何故か、廻しをしていた。
『相撲、トロウゼ』
シャベッタ。
もうやだあああああ! ダンジョンでも変態にしか会わないんですけど!
「ま、待って待って!」
『待ったナシダ! ハッケイヨオイ! ノコッタ!』
そう河童が叫んだかと思うと、塩を投げてきやがった!
ルール知らねえのか! この河童!
いや、そもそも相撲を取るのがおかしいんだけど!
河童とがっぷり四つ組み合う前に俺は
『ホホウ! ソレガ変態カ!』
「はああ!?」
この時点で、この河童が、偽河童であることが確定した。
まず、俺の固有スキルをちゃんと知っているのは俺の家族、そして、ダンジョン庁の関係者だ。魔物なんかが知ってるはずがない。
いや、そもそも人語を話す魔物なんて今まで一体も発見されてない!
であれば、コイツは俺やジュリちゃんのようなスキル持ちか、単純にそういうメイクをして、何かを試そうとしている。
でも、一体何のために!? なんで、相撲!?
『フムウウウウウ!』
普通に相撲取ろうとしているし!
「いや、普通に相撲とりたいなら、塩投げてくるなよ!」
『ウチではスモウはコウとオソワッタ! ルール無用! ドヒョウのソトに出せば勝ち!』
ちょっと、君のウチまで行っていいかなあ!?
お宅のお子さんにどういう教育してるんですかと聞きたいんですが!
っていうか、肌ぬるぬるしてて気持ち悪う!
ぬるぬるな夏輝なんて需要ねーよ!
アニメになったら話は別だがな! ならねーよ! こんな変態ばっかの話!
それに、めちゃくちゃな力だ!
どっかの【剛腕】といい勝負かもしれない!
俺は、〈風鬼〉の風穴と、足裏に棘を生やし踏ん張る。
って、何俺もガチでやってんの!?
「って、なんなんだよ、お前! マジで!」
『ふはははは! 男と男の熱いぬるぬる相撲サイコウだな!』
やだあああああああ! 変態なんですけどおお! このエロガッパ!
『フン! しかし、それでも弱い! サラシナフユキもこんな兄貴ではウカバレナイナ!』
は?
『ぬう!?』
今、何て言った?
『い、イキナリ、マギが!』
確定した。恐らく、政府関係者の誰か、もしくは、モノノフの誰かかもしれない。
誰かが俺を試そうとしている。
冬輝の情報を知っているのは、ごくわずかな人間だけ。
それ以外が知っているはずがない。
だけどな、情報不足だ。
冬輝の名前を出すなんて。
「お前、負かすからな。負けたら、色々教えてもらうぞ」
『ハハハハ! お前に、デキルかな?!』
偽河童は突っ張りで俺を突き飛ばす。
途轍もない力で吹っ飛んだ俺は、風穴の力で地面に自分の身体を落とし、足を付き、そして、足と地面を同化させて止まる。
『ンン? ナンダ、アノマギルは?』
偽河童がなんか言ってる。けど、今はひとまずどうでもいい。
後で聞く。
俺、負けず嫌いなんだよね。頭に血が上っているのが分かる。
それに、右手が熱い。
冬輝の右手が。
こいつなんかに負けるなよ、って冬輝が言ってる。
右手に集まった青い魔力を右足に集める。
そして、左手に開いてる風穴に変態させている赤い魔力も一緒に混ぜて、思いっきり、振り上げる。
『そ、ソレは四股!?』
ドン! という音と共に、地面に大量の穴が生まれ、風が吹き、偽河童は呆気にとられ、地面を見つめる。はい、それ、悪手~。
『ナ、ナンダコレは……!? はべええええ!』
その瞬間、俺は自分の身体の風穴と、地面の風穴を操り、風による勢いをつけ一気に偽河童に近づきぶちかましを喰らわせる。
分かった。
この力の使い方。
俺の身体を変態させた【変態・赤】の魔力を、冬輝の右手、もしくは、【変態・青】を発動させる部分に流し込む。
俺は、俺の【変態・赤】の事をよく分かっている。今までどれだけ使ってきた事か。これが今までの経験値。これを使う!
【変態・赤】の魔力をそのままコピペして送り込めば、正確なイメージを変態対象に送り込める。
俺と冬輝だから出来る変態兄弟夢の共演だ。
俺にしか、いや、俺が一番冬輝から受け継いだものを使いこなせる!
誰よりも!
「さああああ! 待ったなしのがちんこ勝負だ! 偽河童! てめえの尻子玉抜いてやらあ!」
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