俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第61話 変態、自分の黒歴史話させられて懺悔オワタ
第61話 変態、自分の黒歴史話させられて懺悔オワタ
「俺、ゆっくり説明する。記憶もぐちゃぐちゃだし信じてくれるか分かんねーけど」
「あたしは信じるよ」
「おれもだ」
「勿論、僕もだ」
今、俺の目の前には愛とアホと眼鏡がいた。
何グループかに分けて、俺を探してくれてたらしい。
で、何故か愛さんが一番最初に見つけたらしい。
しかも、一度も立ち止まることなく。
こっわあ。こっわあ……。
「こっちにいる気がしたの」
こっわあ。
とまあ、冗談にしておき。さておきではない。しておきだ。誤字じゃないもん!
「じゃあ、話すな。大事な所だけ話すから端折るぞ。気になったら聞いてくれ」
講演会後、中学生の愛さんと再び出会ったところまでの話をし、そして、愛さんと別れてからの話を俺はし始めた。
頭おかしくなりそうな光景だった。
モンスターは勿論追いかけてくる。俺は引き付けるために逃げる。
勿論引き付けるためだからスピードは抑えるつもりだった。
だが、奴らは俺の、
代償はある。奴らの身体はボロボロだ。
自分の足が壊れるのも構わず走り続けるのだ。足が壊れれば手で。とにかく頭の可笑しくなりそうな光景だった。
そして、そのボロボロの黒い人形達と向かい合い気付く。
「コイツ……
俺が最初に入ったダンジョン、【人形の家】のモンスター。
そのモンスターが真っ黒に染まっていた。俺には分かる。
俺はコイツの魔力を知っているから。
ただ違うのは、異常に歪んだ魔力がある。多分、あれは怒りや憎しみなんだろう。
【人形の家】は【小鬼の洞窟】と同じく最下級ダンジョンだった。
初心者誰もが挑み、倒していくモンスター。時には、憂さ晴らしで倒す冒険者もいたのかもしれない。
俺だって似たようなもんだ。
自分のスキルが【変態】で、拗ねてダンジョンでモンスターを倒しまくった。
「そのツケが回ってきたってことかねえ」
ボロボロの身体の復讐に燃えるお喋りピエロたちが迫ってくる。
元の姿の時はよく話しかけてきた。めちゃくちゃ煽ってきた。流石お喋りピエロって感じだった。
でも、今は何も言わない。ただただ、目の前の俺を殺そうと近寄ってくる。
下半身がもう無いヤツ。右半身左半身がないヤツもいる。だけど、
「頭がないヤツはいないな。ってことは頭が弱点か」
俺は状況を冷静に判断し、頭に向けて抜いた髪の毛を飛ばす。
そして、明確な威嚇の音を放ってくる。
「おいおい、お喋りピエロ。口は開いてないのにお喋りだな。弱点まるわかりじゃねえか」
俺は再び大切な数本の髪の毛を犠牲にし、針を飛ばし、逃げ出した。
少しでも、削って倒す。それにアイツと合流しないと。
俺が辿り着いたのはだだっ広い広場。というか多分これから何かが立てられるであろう土で敷き詰められた場所だった。
そこで俺は、とにかく黒い人形を倒し続けた。
倒して倒して倒して、またこれから恨みを買って進化して出てくるんじゃないだろうかと怯えながら倒し続けた。
そして、全部倒し終わったその時、俺は絶望した。
同じ数だけ地面から湧いてくるのだ。
どうやらここが大発生の発生源らしい。つまり、ここは多分、【人形の家】があった場所なのだ。そういえば、大学の敷地内にあると聞いたことがある。
黒い軍団が迫る。
俺は十分戦った。自分で自分を褒めてあげたい。
そう思って俺はゆっくりと崩れ落ちた。
つもりだった。
だが、脇に腕を差し込まれて無理やり立たされる。
魔力で分かる。俺の半身だ。
『待たせたな』
『待ってねえよ』
『ごめ~ん、待ったぁ?』
『待ってねえよ』
『今、来たところ?』
『んなわけねえよ』
『じゃあ、デートしよっか』
『お前とはしねえよ。しかも、なんだこの最悪なデート』
『黒人形皆殺しデート』
『コワ! なんだよそのデート! どこの雑誌に乗ってるんだよ! そのデートプラン!』
『暗い暗いと書いて
『山田君、座布団一枚ハサミで切り裂いて』
『暗い暗い!』
『じゃあ、いこっか』
『それどっちのいこっか』
『まあ、どっちも一緒だよ』
『確かにな』
『ていうか、なんで此処にきた』
『足で』
『うざ! マジうざ!』
『あー、頭ちゃんと使えばここな気がするだろ』
『かしこだな、でも、アホだな。来るなんて』
『お前もな』
『では……』
『ほいほい……』
俺達は向き直る。黒い軍団に。
疲れ? そんなもんどっかおでかけしたわ。
『『さ! 来いやあああ!』』
不思議なもんでコイツが来ると力が跳ね上がる。
俺達は三度、黒い人形の軍団が現れては潰し現れては潰した。
『おーい、山田君、ブラックキャッ○買ってきて』
『Gじゃ、ねえん、だよ』
『いや、でも、黒いし、光ってるし』
『たしかに』
『『ぶはははは!』』
『やめてよ~☆ ぼくの配下をG扱いするの』
『『は?』』
振り返ると、三つ首の化け物がこっちを見て嗤っていた。
そして、始まる戦闘。終わる。
結果は、勝ち? 負け?
とにかく、相手は撤退してくれた。
その代償は人一人分。
夏輝は、右半分を肩から足にかけて全部。
冬輝は、逆。左半分左腕と左の脇腹から下。
『マジか……』
『なんでアイツ帰ったんだ?』
『わかんね。アニメ始まる時間だったんじゃね』
『リアタイ派か。気が合うな』
『どうする?』
『死ぬ』
『それな』
そこから俺達はとりとめもない話を続けた。
少しでも近づいてくる死の恐怖から逃れるために。
でも、確実に死は近づいてきてて。
俺は覚悟を決めた。
『夏輝』
『ん?』
夏輝は凄い。
『こんな時だけど、いや、こんな時だから聞いてほしいことがあるんだ』
『なんだよ、もう逝くんだけど』
夏輝になれたら。
『俺の固有スキルならきっとどちらかは生き残れる』
『え? なんだって?』
夏輝になりたい。
『俺の固有スキルは……』
『……』
夏輝に。
『【変態】なんだ』
『え? 俺と、同じ?』
『それが、違うんだよ。俺の固有スキル【変態】は自分以外の身体の性質や状態を変化させることが出来るスキル、なんだ』
『同じ名前で違うスキル……マジでくそったれ神様だな。そんなややこしい仕様ありかよ』
『まあ、ゲームじゃねえから。神も適当なんじゃね?』
『で、どうすんだよ?』
『ゲーム、いや、勝負しようぜ』
『は?』
『俺の予想通りなら、俺達双子の身体なら、相手の身体に【変態】することもさせることも出来ると思うんだ。いや、お前なら気付いてたはずだ』
『……』
『んで、ここからは俺の考え。多分、似たようなスキルの場合、魔力量の強い方が勝つことが多い。それはさっきの戦いで証明された』
『ああ、そうだな。あのクソ野郎に、負けた』
『俺のスキルもまるで通用しなかった。じゃあ、俺達なら、どうだ?』
『おいおい』
『夏輝は俺の身体をくっつけて自分の身体のつもりで、俺の身体を夏輝の身体に【変態】する。お前の腕が一回千切れても治ってたんだから出来るはずだ、俺の身体なら、魔力の質はほぼ同じだろ』
『……で、冬輝が』
『俺は夏輝の身体を俺の身体に【変態】させにいく。多分、こうなるとやってることはほぼ同じ。なら、魔力量の強い方が勝つはずだ』
『……』
『勝っても負けても恨みっこなし。どうだ?』
『おっけ。冬輝、お前負けても恨んで出てくるなよ』
『夏輝もな』
俺達は肩を寄せ合う。
『最後に言い残すことはあるか?』
『おい、俺が死ぬ前提やめれ』
『俺は、DTと高校は卒業したかった』
『同じく』
『をい。同じくは卑怯』
『あー……くそったれ神様、死ね』
『同じく』
『『ぶははははは!』』
『じゃあ、』
『いきますか』
魔力が高まり、互いにスキルを行使し始める。
ただな、ごめんな夏輝。
俺言ってないことがあるんだ。
俺は、
『相手の思考も変えることが出来る』
だから、お前の思考を変えて、『冬輝の一部に【変態】する』って思わせることも出来る。
魔力が近いから変えやすいし。
でも、安心してくれ。
俺はお前として、夏輝として生きるから。
多分、お前のスキルも俺と同じで記憶を変態することが出来る。
だから、お前のスキルを貰ったら、俺記憶をいじって、お前として生きる。
お前みたいになりたいんだ。俺、どうしても。
ごめんな、こんな変態の弟で。
真っ当じゃなくて。
俺の、対象を思考状態を変えるスキルが夏輝に行使される。
だが、夏輝には通用しなかった。
『嘘だろ……ふざけんなよ』
ふざけんな。
ふざけんなよ!
最初から、そう思ってたなんて。
夏輝!
おい! 夏輝!
ふざけんな。
おい。
おい……。
ありがとう、馬鹿兄貴。
俺、心を入れ替える。
真っ当になる。
『じゃあな、冬輝』
ありがとう、そして、ごめんな。
こんなバカな弟で。
『じゃあな、兄貴』
そして、俺は、夏輝に、なった。
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