俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第47話 変態、女帝にひと肌脱がれて動揺オワタ
第47話 変態、女帝にひと肌脱がれて動揺オワタ
そこからはもうR指定でした。DJ○永もいいよね。
まあ、ほぼ俺なんてクリーピーナッ○ですよ。意味は調べなさい。
時々コンビニの店員さんにスマホ片手で道を聞いてる人なんなんだろね。
スマホ飾りか。自分で調べなさい。
コンビニの店員さんといえば、理々さん元気かな。
肉じゃがは旨かった。砂糖があんなに入ってなければ。
どうやらぼーっとしていたらしい。最後にもしかしたら砂糖をいれすぎたかもと言っていた。
かもじゃない。にちがいないだった。
大丈夫かな。なんかタッパー返しに行った時、理々のお母さんが最近帰りが遅いって心配してたもんな。って俺は何故彼女の心配をしているのか。
どうせこの前口説いてた冒険者にコロっといったんだ。くそう、コロっちゃうぞ。
彼女が何故こんなに俺の心を奪うのか。幼馴染だからか。普通だからか。
めっちゃ『変態』って罵られたのに。
親父と一緒なのだろうか。俺も罵られることに興奮するタチなのだろうか。
試しにディスられてみようかな。
こんなダンジョンじゃなくて、フリースタイルの方で。
ラップに戻ってきたね、思考の輪廻転生完成天才変態いえーい。
そんなことを考えてるうちに、縦横無尽に跳ねまわった
なのに、減らないなう。血の川が流れ続けているなう。いつか行きたい美しき青きどなう。
「おい……更科夏輝。生きてるか? 元気か? 胸触るか?」
「あ、マジで触っていいです? もうほんと死ぬかもしれんし」
「いいけど……責任とってよ?」
「あ、やっぱやめときます。とれないっすわー、責任」
かわいく言われて正気に戻る。
良かった。戦場ではスイッチが入ると命取りだ。
まさかエロスイッチで正気に戻されるとは思わんかったが。
「さあ、進め! モタモタするな!」
氷室さんの合図でチームメンバーが再び動き出す。
「回復しますぅ」
「頼む」
「兄さんは? 回復薬は?」
「自己修復させるからいい。魔剤くれ」
「はい、モン○ター」
「う~ん、オタクに乞うのは難しい。魔力剤の方くれ」
妹が、ケースごと増魔力剤をくれる。
通称、魔剤。魔力回復出来る錠剤で、特別な許可を得た冒険者のみが購入可能。
過剰摂取で倒れた例もあるのは、あっちの魔剤と一緒。飲みすぎ注意。
三錠ほど齧り、魔力がうっすらと戻り始める。
「大丈夫?」
「秋菜が心配してくれるだけで頑張れるよ」
ミスった。幼き夏輝モードが出てしまった。
妹がめっちゃ顔真っ赤にしてニマニマしている。
「あの、胸、触る?」
アキナーサン、お前もか。
誰もがおかしくなっている。
それもそうか。今、俺達は【人狼の塒】の入り口から三分の一のところまでようやく引き返してきた。
その間倒した人狼は来た時の十倍はあるだろう。
しかも、撤退しながらの戦闘。
そして、殺して殺して殺して殺して殺し続けた。
例え、モンスターであったとしても、命を奪い続けた。
思春期真っただ中の人間にはマジトラウマだろう。
俺は先に体験してる。秋菜や愛やジュリも似たようなもんだが。
東江さんもここまでの状況はなかったのだろう。ずっと顔を青くしている。
誰もが濃い疲労を隠せない。
先頭を、結局弓手の大先輩、愛さん、ジュリちゃんが担い、俺達が殿をつとめている。
「シンガリルドルフってな」
「ルドルフ? 名高い狼がどうした? 狼は奴らだぞ」
女帝には通じなかった。女帝の癖に! わくわくさせる空気にさせろよ! エアなグルーヴ感じさせておくれよ! YEAH! ちぇけらー。
「兄さん! 右側から三体! 左側から二!」
「更科!」
「右いきます!」
飛びかかってくる人狼達。向こうも自分が捨て駒だと分かっているのか防御無視の攻撃力全振りで迫ってくる。防振りで来いよ! メイプルシロップ位あんまいかわいい女の子が来いよ!
俺は、左前まわし蹴りを放つ。人狼達は一メートル以上先だが構わない。
【変態】させ脚を伸ばし蹴りながらさらに【変態】脛を刃に変えて切り裂く。
俺の弁慶泣くどころか最強。硬いぜ最硬。喰らわせるぜ外傷。
「全く、凄まじいスキルだな。なんでもできるのか」
同じく横薙ぎに二匹纏めてぶっとばした氷室さんが背中を預けながら聞いてくる。
「いや、まあ、条件はありますけどね。一つは魔力を完全に読み取らなきゃいけないんです。つまりは、生物であれば生きた状態で読み取るまで触らなきゃいけないんですよ。バッキバキのバトル中でも相手の魔力に触れていればいいんですけど、強ければ強いほど拒否反応があって時間がかかります。逆に好意と言うか渡す意識があれば早いっぽいですね。あと、顔とかは何故かめっちゃ時間かかります。個人情報保護法でもあるんすかね」
「じゃあ、触り続ければ、私にも変態出来るのか?」
「あー、多分」
「さわ「だが、断る」」
手段と目的が逆になっているのである。胸を突き出そうとするな。胸を。
「人間は身体の負荷がヤバいんですよ。多分、元々が魔力を持っていなかったからじゃないっすかね。魔物に比べたらすげーきついです」
「そうか、じゃあ、触ってくれないか」
「文脈無視か」
「処○のまま死ぬのは辛いだろ」
「ああ、俺もDTでしにたくはなかったっすね」
目の前に人狼のボスが現れる。背後にもまだまだわんさかの人狼。
ボス部屋で大人しくしてろよおい。
「どうしても逃がす気ないようだな」
「ですね」
傷を治す薬や魔法はある。魔力を戻す錠剤が開発された。
けれど、疲労や精神的ダメージを誤魔化すではなく、消し去る魔法はない。
ああー、疲れた。
こんな状態で勝てるのか。
俺は構えるけど、手がめっちゃぶるぶるしてる。
氷室さんもあげるのも辛いだろう腕でなんとか構える。
が、氷室さんは槍を落としてしまう。
いや、落とした。
自分で。
そして、その空いた手で俺の襟元を掴み、後ろへ投げ飛ばした。
「え?」
視界には氷室さんの背中、そして、白い、今にも消えそうな儚い白さの首筋とさらさらの髪。
「ああ、本当に残念だ。一度でいいから好きな男に抱かれてみたかった」
氷室さんは着ていた冒険者服を自ら剥ぎ取り上半身を露にする。
美しい白い背中。俺は不謹慎ながらずっと見ていたいと思ってしまった。
次の瞬間、ガッと大園さんと呼ばれた魔法使いの人に掴まれる。
「いきますよぅ!」
「でも、氷室さんが!」
「あれは、最後の手段です! あなたも見たことあるでしょ!」
そうだ。あの時は、初めて会った時、氷室さんはほとんど裸同然だった。
「あの人の固有スキルは【雪女】! 身体中に刻まれた呪刻が魔素とふれることであり得ない程の氷を作り出せるんです! ……自らも耐えられない程の……!」
背中だけ見える氷室さんは儚げで、今にも消えてしまいそうで……
「ようやく、見せることが出来たな。お前に、私を……」
振り返って見せた横顔は、まるでこれから死ぬみたいな……
「さあ、人狼よ。冬眠の時間だ。永遠の、な……!」
氷室さんの身体が白く輝き白銀の魔力が空間を包む。
人狼達はその異常な魔力に怯え逃げ出そうとするが地面から凍り付き始めており逃げ出すことは出来ない。
「
人狼達は大きく震えながら、どんどんと凍っていく。
氷室さんも震えていた。
日本ダンジョン最初の攻略体『モノノフ』に最年少で選ばれた少女。
彼女は何を思いながらダンジョンに潜ったのだろう。
そして、自身に与えられた運命に何を感じたのだろう。
凄まじい固有スキルを自分が持っていたことを知って、どう思ったのだろう。
初めて会った時の氷室さんは、装備品をボロボロにされ、裸同然だった。
今、思えば、それは固有スキルを使う為だったんだろうか。
氷漬けの半身のまま迫ってくる大きな魔物に囲まれ、氷室さんは、震えていた。
あの時も、凍った涙が顔いっぱいに張り付いていた。
俺の全身が熱くなる。
俺は理不尽が大嫌いだった。
俺に勝手に【変態】なんてスキルを与えた神様が。
きっと俺を蔑むであろう世界が。
今、あの人は、人類の為に戦っていたのに、殺されてしまう。
勿論、モンスター側だって殺されたくはないだろう。
だが、俺は人間だ。人間側に生まれた。生まれてしまった。
そして、『女の子』が震えている。
本当の自分を、臆病で、純粋で、誰かの為に献身的で、泣き虫で、頑張り屋な自分を、見てもらえない。
日本の英雄、そんな仮面をつけさせられた『女の子』が泣いている。
戦う理由なんてそれで十分だろう。
「うわあああああああああああああああ!」
『あの時』と同じだった。
身体が熱くなって、俺は、全てを炎に変えて、そして。
全部溶かしてぐちゃぐちゃにしてやった。
人狼達にごめんなという事もできない。
だって、俺は人間だし、それより何よりもう魔力もなくてすっからかんだししんどいし寝たいし眠い。
倒れかけた俺を誰かが抱きしめた。
つめたい。
いや、あったかい?
やさしい。
やさしい。
檸檬みたいな匂いがする。
爽やかな、ちょっと刺激的な。
女の子が笑っていた。
いやいや、マジで十六歳でも通用しますよ。
かわいいから。
【女帝】の仮面を外した女の子がそこにいた。
凍った涙はもう溶け落ちてなくなったみたいだ。
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