俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第39話 変態、アホに手を差し出されてアオハルオワタ
第39話 変態、アホに手を差し出されてアオハルオワタ
「……と、まあ、そんなわけで、それからウチの姉妹の闇っぷりが増しましたとさ。ちゃんちゃん」
俺は眼鏡の試験を眺めながら、アホに俺と冬輝の話を聞かせた。
「んで、お前は……その弟の代わりも果たそうとそんなキャラなわけだ」
「ああ、うん、まあ、そんな感じ? ……変、か?」
「うん、変。……でも、いいんじゃね? 変は悪じゃねえよ、変は変だ。つまりは、お前だってことだ」
「意味わからん」
アホはアホだからなのか、実は賢いからなのか時々わけわからんことを言う。
でも、それがなんとなく、自分の中にストンと落ちていくのを知っている。
くそ、アホのくせに。
「……おい、アホ」
「ん?」
「お前がいいこと言ってる風に喋りながらスマホいじってるけど、お前、誰に何を伝えてる?」
「お前のハーレムメンバーに『夏輝君が元気ありません。元気を出させてあげられるのはあなただけではないでしょうか』っていうのをコピペしながら個別に送ってる」
「おぃいいいいいいいい!」
道理でさっきから、妹の『ねえ、今どんなパン〇履いてるか教えて、あげようか? ねえ?』とか悪戯【念話】がひどいし、姉から送られてきた今日のおもてなし一覧に『赤ちゃん』とか『ばぶばぶ』とか危険なワードが散らかりまくってるし、氷室姉妹のとうとうタッグによる肌色マシンガン投稿が止まらないし、愛さんが……『パンがなければ愛を与えればいいじゃないってマナも言ってたから今から会いに行っていい?』って、『はナツキ合わせる二人のマナびや!』の主人公のセリフ引用してこっち来ようとしてると思ったわ! ていうか、見た目天国、中地獄の偽ハーレムだからな!
「なんてことしてくれたんだテメエ!」
「おれはな! お前を売って、美女や美少女に『ありがとね、ふるす君』って言われたいんだ!」
なんてまっすぐな目をしたアホだ。
アホすぐる……!
「……待て、いつの間に連絡先を?」
「お前の色々を売る条件で交換した」
アホがくもりなきまなこで言う。
◯すぞ。
「終了! 時間です!」
眼鏡の試験が終わった。
ごめん、めっちゃアホとしゃべってた。
まあ、相手は魔法使いだから【看破】との相性いいだろうし、恐らくチャラ男と違って、ちゃんと試験をするつもりだったのだろう。眼鏡の固有スキルや能力を考慮したうえでの戦闘で、ちゃんとやっていればポイントをとれる形だった。
疲労困憊ながらも眼鏡をクイしてこっち見る眼鏡。ジト目がすごい。
次の出番であるアホは笑って、試験場に足を向ける。
「それにさ、」
「ん?」
「たぶん、お前にはさ、いいんちょみたいな距離感バグってる奴とか、周りの事とか一切気にせずお前に迫ってくる人達とか、そういう人が居た方がいいんだよ。お前、すぐ誤魔化すから。普通じゃないくらいが丁度いいんじゃね?」
お前みたいな何も気にせずに来てくれるアホとかな。
すれ違いざまにハイタッチを交わす眼鏡とアホ。
眼鏡の恨みがすごい。ものすっごい音がした。ばちこんいってた。
あれ? こっちに来る眼鏡が再び手を挙げてるよ。眼鏡が光って怖い怖い怖い!
だが、男・更科夏輝、黙って眼鏡の一撃を受け止めた。
いてえ。
「僕の怒りが伝わったかい?」
「試験見てなくてすんませんでしたー!」
「そっちじゃない。僕は、君が苦しんでいることを知らずに、クレイジークラウンの動画を語っていた。そんな自分が許せない……!」
眼鏡……あれ? でも、それじゃあ、俺にぶつける必要なくない? なくなくなくない?
「まあ、見てなかった怒りも多少籠ってたとは思う」
「えと、じゃあ、アホの試験見ながら話そうか?」
「いや、僕は後でいい。今は、少しでもいろんな戦いを見て勉強したい。君と並び立つために」
おい、かっこいいな眼鏡。ただな、お前の横顔がめっちゃドアップなんだけど。
近くない? あと、熱い。お前がすっごい運動した後だから。
頬赤いのも運動した後だからだよね、ねえ?
俺はもう気にしないことにしてアホの試験に集中することにした。
まあ、眼鏡もたぶん大丈夫そうだったし、アホも試験官運が悪くなければ、普通にいけるだろ。
「はっはっは! 再び参上! ダンジョン庁、国家公務員! 千原羅王!」
……どっちだ? いいのかわるいのか?
いや、多分悪いな。めっちゃ俺を睨みながらアホのところに歩いてる。
俺への恨みをアホで晴らす気か、あのチャラ男。
怪我を回復魔法か何かで直してまで、うらみはらさでおくべきかなのか、チャラ男!
そんな大人げなくてチャラ男ヘッチャラなのか!? 頭からっぽなのか!? 夢詰め込んでんのか!?
「おっす! よろしくな! 少年!」
「おっす! おねしゃす! チハラさん!」
アホとチャラ男がなんとも軽い挨拶を交わす。
そして、緊張感ないままに試験が始まる。
チャラ男は、俺の時には使っていた槍は止めて、剣を使うようだ。
剣の方が様になっている。どうやらガチのようだ。ガチ男のようだ。最初からそうしろ。
一方のアホは……。
「ほお~、キミ、二刀流?」
「あ、いや、普段は違うんですけど、なんか、かっこいいかなって」
おい、アホやめとけ。ガチ男舐められたと思ってガチギレじゃねえか。
あれでも、ダンジョン庁の国家公務員試験通ってるんだぞ。
「だ、大丈夫なのか! 正直は!」
「う~ん、怪我だけはしないといいけど。出来れば早めに一回ダンジョン潜っておきたいし」
「へ?」
「ん?」
「い、いや、夏輝がもう正直が合格する前提で話をしているから」
「ああ~、うん、まあ、あのアホ、マジでアホなだけで、本気出したらどんなレベルか俺も知らんし。けど、なんとなく分かる。強いよ、アイツ。アホだけど」
クレイジークラウンの時にはいろんな冒険者に会った。初心者から上級冒険者、極めて勇者、にもあったことがある。上にあがればあがるほどオーラがあるような気がした。
あのアホもなんとなくオーラがあるのが分かる。
アイツ、多分つよい。アホだけど。
「はじめ!」
審判の声でガチ男が、斬りかかる。おい普通試験官は受けに回るんじゃねえのかよ。
「奇襲に対応できるかなあ!?」
わざわざ保険で口に出してとびかかる辺り、まずいとは思ってたんだろうな。やらなきゃいいのに。
あと、奇襲を口に出すやつおるー!?
アホは小太刀でなんなく受け流し、長い方で攻撃を仕掛ける。
ガチ男もさすがダンジョン庁勤務、すかさず躱し、再び斬りかかろうと動き回る。
少しずつガチ男の顔のガチ度が増し、同時に速度が上がり始めるが、顔の歪みも増し始める。おい、ガチ男、ガチガチのガチじゃねーか。
「す、すごいな……あんなやり合えるなんて」
「やりあうっつーか、あしらってるけどな」
「正直は、そんな凄いスキルを持っていたのか」
「ああ、アイツほぼ全武器の適性持ってるらしい」
「はあ!?」
まあ、驚くわな。俺もビビった。
魔法武具の大手メーカー『フールズ』のボンボンこと、アホは幼いころから刀とか武器が触ることが多く小さい頃から動画配信とかを親父さんとしていたらしい、世界が混沌と繋がり、ダンジョンやらなんやらが始まってからは、魔力やスキルといったものが発見され、夢中になって身につけたそうだ。
『おれが何故そんなに武器を極められたのかって? ……モテたいからだ』
すっげえいい顔して、アホは言った。アホだな、と思った。
そんなアホは、徐々に形勢逆転というか、見るからに攻めはじめ、ガチ男を圧倒している。
「く、くっそお!」
やけになったのかガチ男は、剣をアホに投げつける。
なんなく躱すアホ。
だが、ガチ男は投げた後間髪入れずに走り込んでいた。剣は囮だったらしい。やり方ガチじゃねーか。
「もらったああああああ!」
ガチ男が飛び掛かるが一手アホが早かった。
アホの横薙ぎの一撃がガチ男をとらえる、と思った瞬間、ガチ男はまさかのスライディング、後ろに回ってチョークスリーパー、首絞めに入る。
おお!? ガチガチガチのガチじゃねーか!
「はっはっは! 見たか、これが大人の力だ!」
おい、大人。これ試験なんですけど。
見かねた本当の大人であろう審判さんが止めに入ろうとするその瞬間。
「チャラ男さん、カッケー!」
アホが叫ぶ。
「……え、マジ?」
チャラ男と自覚あるチャラ男兼ガチ男、合わせてガッチャラ男さんが反応し、顔が綻ぶ。
が、次の瞬間、
「あばばばばばばば!」
ガッチャラ男が輝きだす。あばばばしながら。
そして、煙を立てながらガッチャラ男は倒れる。
本当の大人審判さんがアホと話をし、試験終了の声。
「な、なんだい、今の? 雷?」
「だな。雷使いのイヅナさんの見たことあるから分かるけど結構な威力だな。ただ、魔法だとしたら、今、詠唱も術式も使ってなかったみたいだけど」
アホがアホ面下げて帰ってくる。
「おい、アホ。今のなんだ?」
「ん~、お前らには伝えておくな。おれの固有スキルは【正直者】」
「は?」
正直者?
俺も眼鏡も首を傾げる。謎すぎる謎スキルだ。
「そういうリアクションになるよなー。で、また、この効果が微妙なのよ。天罰なのか、おれが嘘を吐くとおれの身体に電気が走るっていう」
「バラエティかよ」
「いや、バラエティじゃない電流が流れるんだって! でも、おれももう慣れてなんか最近では気持ちよくなってきてな」
「変態かよ」
「なもんで、ああいう密着されてヤバい状況だとあえてバレないように嘘吐いて電流を体中に流す」
「いや、嘘下手かよ」
「あと、電流流すたびに魔力減るんだけど、めっちゃ僅かにステータスが上がるみたいだから、基礎能力はたぶんめっちゃ高いぜ!」
「どんだけ普段電流浴びてんだよ、〇ルアかよ」
俺とアホがあーだこーだ言ってると、眼鏡がクイしながらインしてくる。
「と、というか、正直。それって大丈夫なのか?」
「へ?」
「嘘がつけないんだろ? 大変じゃないか?」
「あーあー、明確な嘘はな。だから、あれだ、『行けたら行く』的な。そういうのでなんとかしてる」
なるほど、どうとでもとれるワードで切り抜けるのか。
ん? じゃあ、もしかしたら、アホの言動が普段わけわからん位アホなのもそれが理由か?
俺は、いいんちょから受け取ったポカ◯を飲むアホを見る。
「あー、このポカ◯が、アイドルの汗だったらなー。もっと元気でるのに」
いや、アホはアホだった。
「夏輝」
「ん?」
アホが手を差し出してくる。
思わず握る。なに、もしかしてウ〇コでも持ってる?
「おれはな、お前を親友だと思ってるぜ」
「ん?」
アホが手を引く。手を見るがウ〇コはない。なんだそれ?
「……あ」
なんだそれ。おい。
電気流れなかったぞ。
嘘じゃないってか。
おい、アホ。
お前、アホだろ。
励まし方、下手かよ。
アホ。
ポカ◯のCMみたいなことするんじゃないよ。
「……男の友情か、なんか嫉妬しちゃうな」
振り返ると、美少女がいた。
爽やかなショートカット、大きな瞳、ボンキュッボンに長い足。
ポカ◯のCMに出てもおかしくない見た目の美少女。
「夏輝の為に
実写版鬼◯の刃の◯惨様やれるんじゃないかって中身の理不尽の権化。
クィーンオブ残念美少女。
武藤愛さんの登場です!
「教えてくれて、ありがとね! ふるすくん!」
「はい! どういたしまして!」
おぃいいいい! アホォオオオ! めっちゃいい顔してるやんけ!
「ね、夏輝。誰が夏輝困らせたの? あたしが『滅っ』してあげるから……!」
『めっ!』だよね? かわいいあれだよね?
「『はナマナ』でもあったんだ。ナツキ困らせるヤツに、マナ『滅殺の波動』ってのに目覚めてて」
おい! 夢野きらり、お前格ゲーやってんな!
殺◯の波動パクってんじゃねえか!
「サア、ドイツノ心ノ臓、止メテクレヨウ……!」
なになに!? ダンジョンの
「ピヨピヨ……」
おい、顔青くして急にピヨってんじゃねえぞ!
どーすんだ、ポカ〇どころか、首狩りじゃねえか!
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