俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第24話 変態、姉にウマ乗られるのを止められず弟オワタ
第24話 変態、姉にウマ乗られるのを止められず弟オワタ
「で、どういうこと?」
長く美しい黒髪が垂れ下がり、花のような香りがふわりと漂う。
吸い込まれそうな漆黒の瞳に映るは馬乗りになられた冴えない男子高校生。
「で、どういうことでしょうか?」
馬乗りになられた男子高校生もまた問いかける。
何故馬乗りになられているのか?
彼女に声を掛けられた。手を引かれた。抱きしめられた。馬乗り。
分からなかった。
彼女に声を掛けられた。手を引かれた。抱きしめられた。馬乗り。
……分からなかった。
脇腹あたりにあたる太ももの柔らかさが男子高校の思考を邪魔する。
「で、どういうこと?」
美女は、鼻がくっつきそうな近さで男子高校生に問いかける。
黒く艶やかな長髪が垂れ下がり、漆黒のカーテンを作り出す。
その中には、彼女と男の顔しかなく、互いに互いしか見えない。
「で、どういうことでしょうか?」
男、男子高校生には何も分からない。
彼女が何を言ってるのか。
「で、どういう「もうええわー―――!!!」」
不毛な姉botとの会話に思わずツッコミを入れる俺、男子高校生こと、更科夏輝。
そして、不毛な姉botこと、姉、更科春菜。
俺は、髪に隠されて見えない彼女の両肩をどんと押す。
だが動かない!
ぽたりと俺の頬に血が一滴落ちる。
ハアハア言いながら鼻血を流す美女。
「ご、ごめんね……舐めるね」
「無礼るなよ」
「そ、そうね……ふき取る」
ウマの娘の皇帝張りの圧をかけ、馬乗りになった姉をどかす。
通じてはなかったみたいだが。
姉は慌ててティッシュを取りに行く。
ここで前回までのあらすじ。
妹に予知夢で俺が上級冒険者に囲まれている未来を見たと言われる。
分かっちゃいるが俺の望む平凡な未来終了。発狂。逃亡。
姉に声を掛けられた。手を引かれた。抱きしめられた。馬乗り。
鼻血を拭く姉 ←イマココ!
「で、どういうこと?」
俺は溜息をおもっくそ吐く。
こうなると姉は梃子でも動かない。
姉は俺を真っ直ぐ見ながらスマホの、俺のラ! なスクショを見せてくる。
「こっちこそマジでどういうことぉおおおおおお!?」
「スクショは覚えたって言ったでしょ」
「そっちじゃねぇよぉううううううううううう!」
「友達に頼んで、アンタの情報が随時流れてくるアプリを作ってもらった」
ともだちぃいいいいいいい! その人、米花町に住んでる天才発明家かなんかかな!?
「開発延期二年ちょっとかかったわ」
開発えんきぃいいいい! え? 本当に俺のアプリ?
一輝の息子探すアプリじゃなくてウマの娘育てるアプリじゃないの?
「大体(自主規制)円程かかったわ」
かねもちぃいいいいい! 流石、【黒の魔女】!
もう俺、姉のウマになろうかしら!? 姉、バ主。
「あ、違った。こ、これは、観賞用」
姉が見せる画像を間違えたらしい。あわてる姉はかわいい。
っていうか、観賞用ってなんぞ?
「これよ」
姉が見せた画像は、俺が銀髪の美女・美少女姉妹に迫られている写真だった。
「な、何故これを……? これはアホのスマホが壊れてからの……」
「秋菜の念写よ。送ってもらったの」
いもうとぉおおおおおお! 俺を売ったのか!? いくらだ!? 取り分寄越せ、せめて!
っていうか、姉画像保存しらんのか? スクショの一つ覚えでドヤァしてんのか、 かわいいな、ちくせう。
「だれ、この女」
しかし、何故私は今修羅場みたいなこと言われてるのかしら。
「あの、ダンジョン庁の氷室さんです……」
「それは知ってる。あれは埋まらせる。こっちの女は?」
埋まらせるんだぁあ、そうなんだぁああ。
姉が指さす俺に迫る涙目の銀髪美少女。
「これ、あげるから」
姉は真っ赤な細い何かを指にぶら下げて差し出してきた。
逆の手で何故か股を押さえながらもじもじしてる。
赤い何か
俺はすぐさま目を『暗黒蝙蝠』に【変態】し、魔力感知を高める代わりに視力低下させる。
「もしかして、見えてないの? これはパン」
「話します」
ニンジンだ。
パン?
パン〇ィーみたいなニンジンだ。
って、姉は言おうとしたんだ。
きっとそうだ。
あれは。赤いニンジンだ。三倍速くなれるんだ。
そうに違いない。
馬乗りも馬繋がりの前フリだったんだ。
フリがきいてるなあ。
「じゃあ、お礼にあげる」
「いえ、あの」
「代わりに、アンタの」
「写真の銀髪少女ですが」
タダでくれるがいつの間にか交換になっていた。
恐るべき悪徳商法。みんなも気を付けよう。
もらいそうになった赤いパンテ……ニンジン、クーリングオフ。
姉がしぶしぶ履いている。
「えー、と……【狂戦士】です」
「は?」
「【狂戦士】です。皆さまご存じの迷惑系冒険者の」
「は?」
「【狂戦士】です。ソロ冒険者で、他の冒険者にも喧嘩売ってくる」
「は?」
パターンが少なすぎる姉botをアンインストールしたいんですが。ていうか、こっちのbotの開発急いでよ! 姉のともだち!
まあ、理解しがたいだろうし、このことを説明するにはあの時の、【小鬼の洞窟】で俺のラ! が曝された後の話をしなければならないだろう。
ああ、思い出したくねえなあ……。
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