俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第23話 変態、盗撮されて更に夢に出演オワタ
第23話 変態、盗撮されて更に夢に出演オワタ
「おにいちゃん、どう?」
「ん? うん、上手に描けたね」
小さなツインテールの少女は、僕に絵を見せてくる。
それは家族6人の絵。
みんな楽しそうに笑っている。
もっともっと小さい頃の妹は、今よりももっともっと喋るのが得意じゃなかった。
特に男の子相手だと震えて喋れなくなる。
自分だけ変だと妹は落ち込み、みんなと距離を取るようになった。
家族とも。
妹はいつもおうちで絵を描いていた。
一人でも楽しそうに。
でも、僕はそれが嫌だった。
一人でも楽しいならそれでもいい。
でも、楽しそうに、見えるように、彼女はそう振舞っているように見えた。
「上手だね」
僕は妹に話しかける。
必死に絵を描くことに集中しようとしていたのか、妹はビクッと肩を震わせ、こちらを見ようとしない。
けど、僕は諦めない。
「その赤い服は僕かな?」
ハッとこちらを振り向き、慌てて絵の方に向き直る。
そして……しばらく間があって、妹はこくりと頷いた。
「黒い服がお姉ちゃんで、ピンクが秋菜で、青が……」
僕が一人一人当てていくと妹の耳はどんどん赤くなっていった。
「上手だね」
僕がもう一度そう言うと妹は泣き出した。
そして、僕に抱きつき、寝ちゃうまで泣き続けた。
妹の身体は熱くて今にも溶けてしまいそうで僕はぎゅっと抱きしめた。
それから、彼女は僕に絵を見せてくるようになった。
「おにいちゃん、どう?」
「ん? うん、上手に描けたね」
僕がそう言うと妹は笑ってくれた。
そして、また絵を描いて僕に見せてくれた。
色んな見たものをいっぱいいっぱい。
違うことを言って欲しいのか、彼女は外にも出るようになった。
そして、色んなものを見つけては僕に絵で教えてくれた。
小学生に上がると妹は母の影響でカメラに興味を持った。
母親のカメラを借りて、写真を撮っては僕に見せてくれた。
妹の写真は家族の写真が多かった。
色んな感情の色んな顔を僕に見せてくれた。
泣き顔の姉の画像を見せてきた時もあった。
そして、彼女は僕の袖を掴む。
僕は、その掴んだ手を外して、頭を撫でてあげる。
妹は、自分の言葉をあまり話さない。
多分、彼女の感情を表す言葉が彼女の中にないからだと思う。
だから、写真で僕に伝えてくれた。
たすけてって。
僕達は姉の所に行き、泣いていた理由を聞き、姉が笑ってくれるまで傍にいた。
部屋を出ると妹が抱きついてきた。
そして、写真を撮ってくれた。
姉と僕達が笑っている写真。
ありがとうって言いたいのだと思った。
「ありがと」
妹が喋った。
いつも普段話をしないわけじゃない。
でも、感情を伝えようとすると止まってしまう妹が感謝の言葉を言ってくれた。
僕は妹に抱きついてわんわん泣いた。
身体が熱かった。でも、溶けてたまるか、消えてしまうもんかと思った。
妹は笑っていた。僕は写真を撮るのを忘れていたけれど、その笑顔は絶対に忘れないだろう。
はい、以上幼き頃の美しい妹との思い出でした。
「うへへへへ~」
はい、こちら汚い妹の現在です。
俺のラ! な写真に頬ずりをしています!
いや、なんかおかしいなっていうのは気づいてた。
家族写真の中でも俺の比率がどんどん増えてくなって思ってた。
妹の部屋のコルクボードにみんなの写真があるのに、俺だけ壁で、なんだ仲間外れか!? 泣くぞ! と思った数日後、コルクボードを囲む俺の写真の整列に戦慄。泣くぞ!
そして、妹が固有スキル【念者】に目覚め、それを俺達家族に伝えた時、俺は思ったね。
最悪の適材適所ですよ! かみさま社長って!
妹は俺を念写し続けた。
プリントアウトは、紙に手をかざしたら出来るらしい。便利ね。
風呂場とトイレだけは死守した。
魔力防御、抵抗を高めれば念写自体は防げるので、全力で妹の念写を防いだ。
いや、普通憩いの場じゃね? と思った俺は土下座して、妹に風呂場とトイレだけは勘弁して下せえと頼んだ。
すると、妹は天使のような微笑みで。
「じゃあ、一か月に一回撮影会で」
悪魔の一言を言い放った。
なので、毎月20日は秋菜様感謝デー。○オンかよ。
秋菜様感謝デーには俺の撮影会が行われます。なんでだよ。
そして、引くほどいいカメラで、引くほどいいロケーションで、引くほどの数を撮ってくる。
「あのー、なんで、そんなにお金を持っていらっしゃるんですかね?」
ある日、俺がそう尋ねると、妹はノーモーションでスマホの映像を出してきた。
それは、秋菜が特例冒険者として、あるチームのヘルプに入っている映像だった。
ぽーん
『何故この仕事を引き受けたんですか?』
秋菜のバストショットが入り、声が聞こえる。
『にいさんのためです。にいさんの全てをわたしがとってあげたい。その為にはお金が要るんです』
○ロフェッショナル風映像だった。
更科秋菜、おしごとの流儀だった。
そして、途中気が付いたが、多分一人でやってる。
カメラ浮かべて、質問もだたテロップが流れるだけ。あと、なんでか声が『
そして、映像では、ダンジョンの
ボスは、
馬に乗り機動力を活かしつつ、チームを翻弄するデュラハン。
しかし、そのデュラハンの動きがどんどんと悪くなっていく。
秋菜の仕業だ。
魔法用スマホを念力により、複数操作し、攻撃魔法で移動範囲を制限し、罠魔法で足元を泥濘にし、更にデバフ魔法でステータスを落としていく。
デュラハンもチームで最も危険な人物を理解し狙うが、己の身体さえも自由に動かす秋菜には届かない。
桜色の念力で複数の魔法用スマホを浮かべ、同時に術式を入力しながら魔法攻撃を繰り出す妹は純粋にかっこよく、かわいらしく、まるで妖精のようにも見えた。
ぽーん
『お兄さん、惚れ直してくれるんじゃないですか?』
『そうだと、いいんですけど』
演出が腹立った。ぽーんうるせえな。いや、本物は好きだよ。あと、多分自分にぽーんされたらうれしいよ。
そして、デュラハンを見事撃退し、カメラに向かってピースする妹は年相応の可愛らしい女の子だった。
ぽーん
『あなたにとって、兄とは?』
『全てです。自分の人生を懸けてとりたいんです』
○ガシカオが流れ、俺の頬に涙が流れた。
そして、テロップ、どん。
『プロアニトイッショニナル』
怖ぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええし! 語呂わるぅううううううううううううう!
ということがあって、俺はとられるんなら『撮られる』のが一番マシだと撮影会を大人しく受け入れている。
なので、念写は控えてくれていると思ったのだが……。
「どういうことでしょうか?」
とりあえず、妹を正気に戻し、膝つき合わせて話し合う。
ただ、妹よ、俺のラ! な写真を膝の上において話すな。
なんか遺影みたいだし、遺影がラ! なのはマジ勘弁。
しかし、妹は無視して話し出す。
「その、予知夢を久しぶりに、見て……危険を感じて……」
妹の固有スキル【念者】の中で『予知夢』、つまり、未来を見る夢だけは、コントロール出来ないらしく、本人曰く何か大きな出来事だとみることが多いらしい。
「ほう、どんな夢だ」
「大変な夢だったの」
「大変? お前がどんな目に?」
「ううん、にいさんが」
ん? 俺が?
「お、俺が?」
「にいさんが」
「なんで?」
「多分……変態がバレたから」
「なななな~なななな~なななななんなの~?」
「にいさん、こんらんしすぎてジョイマ○が出てる」
いきなり出てきてごめーん。
「あのね、にいさんが囲まれてるの」
「それが誰かが大事だよ。一体誰だい? SAY!」
「え~と、S級やA級の冒険者達に」
「え? なんだって?」
「上級冒険者達」
教えてくれてありがとうオリゴ糖おい武藤。
それ、
……更科探すな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます