俺の固有スキルが『変態』だってことがSNSで曝されバズりまくって人生オワタ。予想通り国のお偉いさんや超絶美女がやってきた。今更隠してももう遅い、よなあ。はあ。
第10話 変態、クラスでハブられ幼馴染に避けられお偉いさんに捕まりマジオワタ
第10話 変態、クラスでハブられ幼馴染に避けられお偉いさんに捕まりマジオワタ
その日の教室は異常な雰囲気だった。
いや、まあ、たぶん俺が来るまでは正常な雰囲気だったんだろう。
俺が入ってきたとたん、ざわつく教室。
俺は何か空気が違うな程度で気にせずに席につこうとすると、円城がニヤケ顔曝してやってくる。
「お前のお陰でめちゃくちゃバズったわ。ありがとな!」
爆笑しながら円城がその呟きを見せてきて俺は顔が真っ青になっていたことだろう。
「おま……! なんてことしてくれたんだ!」
俺の魂からの叫びを聞いて円城は顔をゆがめて笑う。性格悪!
「いや~、まさか更科が変態だったとはな~、幼馴染の愛ちゃんは知ってるのかな~?」
「……! アイツ知ってるのか!?」
「いや、オレは言ってねえけどさ、もうSNSで拡散されまくってるんだよな~」
頭を抱える俺。
まさか円城の持っていた魔法道具が本物だったなんて!
そして、円城が着火したことで、教室も遠慮がなくなってくる。
「おい、変態。近寄ってくんなよ」
「更科君って、変態だったんだ……」
「ヤバくない? なに固有スキル【変態】って……」
「そんな最悪なスキルじゃなくて普通のスキルでよかったわ」
これまで俺はクラスでも人畜無害な普通の生徒で通っていたと思う。
けど、【変態】がバレただけでこれだ。
学校って怖いな。
そんなことを他人事のように思いながら俺はクラスを飛び出す。
終わった。
俺の青春、いや、人生は終わったんだ。
その日、俺は初めて学校をサボった。
行く当てなく街を歩いた。
家には帰れない。
帰ればあの姉妹になんといわれるか。
日も暮れ始めた頃、気づけば俺はあのコンビニにやってきていた。
我ながら分かりやすい。
理々に会いたい。
「いらっしゃいませー!」
ミディアムボブを揺らしながら理々が笑顔で接客をしていた。
ちらりとこちらを見た気がしたが忙しいのかすぐに仕事へと戻っていった。
俺は、スポドリを一本持ってレジへと向かう。
理々は、笑顔だ。
でも、どこかいつもと違う。
「いらっしゃいませー」
「あの、さ……」
「ポイントカードはお持ちですか?」
「え? あ、いや、持ってない、です……」
「150円でーす」
「あの……」
「ありがとうございましたー」
「あの」
「……すみません、今仕事中なのでー」
幼馴染ってのも考えものだ。
これだけで分かった。
理々は俺を拒絶している。
変態と幼馴染なんて嫌だと思っているのだろう。
「あのな、俺のスキルは……」
「触らないで! 変態!」
店内に理々の声が響き渡る。
そして、静まり返り、ざわつき始める。
「おい、あいつって……」
「マジか……きっしょ」
「俺だったら死ぬわ」
俺もさすがにSNSをチェックした。
円城に見せられた時点で3万リツブヤイートされてたあの呟きは更に拡散され7万になっていた。
固有スキルに関する呟きなら、結構な冒険者が見ていることだろう。
ここは、ダンジョン近くのコンビニだ。冒険者が多い。
ほとんどの奴らが見ているのだろう。
俺も高校生だ。
メンタル強めの芸能人とかなら平気かもしれないが、この視線は辛い。
さっさと出よう。
そんな時に俺の前に立ったのが昨日も会った【風騎士】だ。
「よお、変態君」
嬉しそうに笑っている。
「見たよ、ツブヤイート。大変だね、固有スキルが変態だなんて!」
声デカいな。わざとか。
「愛も引いてたよー」
やったぜ。
「オレも引いたわ」
やったぜ。
「二度と愛に近づくな」
やったぜ。
「近づけば、分かるな?」
やったるぜ。
俺は小さく会釈し、出ていこうとする。
そしたら、何が気に入らないのか【風騎士】が肩を掴んでくる。
「おい、変態! 変態!」
変態変態言うな。
俺のライフポイントはもうゼロよ!
だから、殴ってくるな。痛いのはお前の拳だけだ!
「いってえ……てめえ、なんの魔法を使った!?」
うるせえな、使ってねえよ、スキルだけだよ。
あーもー、何もかも終わった。
俺はもう自分の命を捨てることまで覚悟し始めていた。
その時、猛スピードの高そうな車がこちらに走ってくるではないか。
嗚呼、なるほど異世界に転生すればいいのか……。
俺がそんなことを思いながらぼーっとその車を眺めていると、車は直前で急ブレーキをかけ俺の目の前で止まる。いや、止まってない。ちょっと当たったんですけど。
気付けば肩が軽い。【風騎士】が腰を抜かしている。
「な、な、な、なんだよ! いきなり! 危ないだろ!」
【風騎士】が顔を真っ赤にして怒っている。
俺は顔を真っ青にして泣きかけている。
「小物が。黙れ」
車のドアが開かれ、声が聞こえる。
ほら、もう、怖い。
現れたのは、白髪というより銀髪の超絶美女。
冷たいその目は【風騎士】を捕え、射殺さんとばかりに睨みつけている。
「じょ、女帝氷室……!」
【女帝】。それは日本ダンジョン攻略における最初のパーティーに選抜された一人。
名前を氷室レイラ。北欧かどっかの血を引いてるらしい。
「ダンジョン庁戦略グループのリーダー氷室です。更科夏輝さんですね」
氷室さんが、俺にとても丁寧な口調で話しかけてくる。
「ええ……まあ、はい」
あいまいな雰囲気を出す。これで見逃してくれ!
「一緒にお越しいただけますか?」
だが、にげられない!
「え、と……何処に?」
「まあ、私と貴方の仲です。小手調べに行きましょうか貴方と出会ったA級ダンジョンにでも……! ねえ、『身体の性質や状態を自在に変化させる事の出来る』固有スキル【変態】の持ち主、更科夏輝くん……!」
あ、やっぱりバレてた。
俺はやはり覚悟を決めなければならないらしい。
ダンジョン攻略の最前線に挑むS級攻略冒険者になる覚悟を。
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