第4話 変態、親父の息子のお陰で煩悩タイムオワタ

 二年前に笑顔でこの世を去ったおばあちゃんと二度目の別れを終えて、俺帰還。

 保健室を出た所で、差し込む光の眩しさに目を細める。


 空が青い。涙が出てくる。


 愛が生み出した箱の中のモンスターを喰らった俺はスキル【暴食】持ちではないので、死んだ。

 今回のはやばかった。内臓強化しても死にかけるとはもはや暗殺では。

 当の暗殺者は、ニコニコしながらこちらを見ている。暗殺失敗したのに。


「おいしかった?」

「おかしかった」

「お菓子? お菓子じゃないよ、ばくだんおむすびだよ」

「そうか、おむすびはどっか外出してたみたいだけどな」


 ていうか、アレおむすびだったんだ。ほぼ液体だったけど。


「えへへ、食べてくれてありがとね」


 かわいい。

 それは認めよう。

 だが、それだけだ。


「愛様、もうお弁当はつくってこなくてよいですよ」

「え? なんだって?」

「いや、お弁当はもういいので」

「え? なんだって?」

「申し訳ないし」

「え? なんだって?」

「いや、大変でしょ」

「え? なんだって?」

「お弁当うれしいよ」

「えへへ、ありがと」

「でも、もういいから」

「え? なんだって?」

「いや、お弁当はもういいので」

「え? なんだって?」

「申し訳ないし」

「え? なんだって?」

「いや、大変でしょ」

「え? なんだって?」


 これ以上続けると読者に怒られるだろう。やめとこう。


「愛那様のお胸のおサイズは?」

「エーなんだって……って、違うよ! もっとあるよ!」


 慌てて否定される愛様。まあ、そうだろう。びっくりするほどデカいもの。


「触ってみる!?」

「みない!」


 我、男性高校生ぞ。

 勿論、興味はある。大きいし。

 ただ、触ればもう逃げられない。大きいけど。


「夏輝なら、いいのに」


 親父! オラに減気を!

 俺は昔目撃してしまった親父のむすこを思い浮かべ、むすこのむすこを落ち着かせた。

 手を出したら本当に終わる。

 なんてったって、今、愛は大人気JK冒険者なのだ。

 その彼氏にでもなれば注目が集まる。

 そして、俺の固有スキルが【変態】だとバレたら……

 終わる。間違いなく俺の人生は終わる。


 だから、愛の好意はありがたいが受け取れない。


「ねえ、ハグしよ」


 愛の行為は受け取れない。


「じゃあ、それよりもっとすごいことする?」


 愛の交〇は受け取れないィイイイイイ!!


「……あは、冗談冗談。さ、さあ、早く教室戻ろ」


 真っ赤な顔で愛は前かがみの俺の手を引きながら教室へと連れていく。


 しかし、俺はその時、気づいていなかった。

 嫉妬に満ちた目でこちらを見ていた男の存在に。

 だって、前かがみだったんだ、しょうがないじゃないか。

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