第4話 死刑囚、呪いの人形に仲間入り

『ねえ!ババア!置いてかないで!やめて!』

 男は叫ぶ。

「すぐにケーキを持ってくるわね」

 男の声は届かない。

『ケーキいらないから!ねえってば!!ババア!!』

「みんな仲良くね」

 おばあちゃんは座敷を出ていく。

『ババア!!!』

 取り残された男。隣には禍々しい雰囲気の人形二体。

 男はつらいよ。


『いやだ~!!!』

『うるさいわね』

『ぐえっ』

 ぬいぐるみの体では動けない。いやだいやだと叫んでいると、罵倒とともに硬い拳が飛んでくる。

 ぼてり、と男は倒れた。ぬぐるみなので起き上がれず視界は天井を向く。

『新人のくせに文句ばっかり言ってるんじゃないわよ!』

 声の主が男の視界に入った。

 カールした金髪に青い目、陶器のように白い(というか陶器そのもの)肌。

 西洋人形だ。

『ひいぃっっっ』

 その無機質で不気味な顔を間近に迫られ、男は悲鳴を上げる。

『たすけて!!!』

『ひどい言い様ね!』

 と今度は蹴りを入れられた。

『私みたいにかわいらしいレディの隣にいることができるのよ、誇りに思いなさい」

 ばさっ、と西洋人形は巻き毛の金髪をひるがえす。

『なにがかわいらしっ』

 文句を言おうとした男の体(ぬいぐるみ)が宙に浮かぶ。

『な、なんだっ?!』

 ギリギリとぬいぐるみを締め付けるのは、黒く、長い、髪だ。

『ひぃっ』

 また悲鳴を上げる男。

 しかしぬいぐるみはそのまま、ぽてんと元の場所へ元のまま座らされた。

『へ?』

『ちょっとあんた!私の獲物に勝手に手出してんじゃないわよ!』

 西洋人形が文句を言う先は、ぬいぐるみの隣の隣、日本人形だ。

『相変わらずの根暗ね!』

『……』

 にぎやかな西洋人形と対照に、日本人形は黙している。

『いい度胸ね!今日という今日は決着をつけてやるわ!』

『……』

 なぜか対話が成立し始まった喧嘩。

 二人(?)の喧嘩は、おばあちゃんがケーキを持ってくるまで続いた。

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