第2話 死刑囚、下げ渡される

「ん~やっぱかわいくなかったかも~」

「そうか?」

『テメエさんざん言いやがってぶっ殺すぞくそ女!!!』

 頑張って取ったぬいぐるみを彼女に下げ渡された彼氏は、結構いい顔してるけどな、と小脇に挟む。

『くそっもっと丁寧に持ちやがれ!!!』

 ぎゅむっと乱暴な挟み方に抗議するも、やはりその声は誰にも届かない。


『俺は一体、どんな状況なんだ……』

 カップルに引き連れられて、ぬいぐるみとなった男は頭を抱える。

 やはり自分がぬいぐるみになってしまったことは、覆りようのない事実だった。

 いったいどのようなプロセスでこうなったのかは不明だが。

 カップルの買い物(主に彼女の洋服)に強制的に付き合わされながら、目の前の鏡に映った自分と自問自答する。


 そこに、たったかと子供が近寄ってきた。

「くまさん」

「す、すみません」

 こどもが手を伸ばそうとして、その親が止めに入っていた。

『なんだ!このクソガキは!』

 子供は赤い熊のぬいぐるみをもの欲しそうに見つめている。まだ小さな子供だ、べちゃりとよだれがついた口周りに男はぞっとした。

「なんか欲しそうだし、くれてやれば~」

 彼女の方が提案した。

『やめろ!クソ女!』

 男は罵倒する。こんな子供に渡されたら最後、動けないまま叩かれ引きずられ投げられ踏みつぶされ、ボロ雑巾のように扱われるに違いない。そして最後にはゴミ箱いきだ。

 そんな扱いは嫌だ!

「いや」

 男の願いが届いたのか、彼氏のほうは返事を濁す。

「もう渡す先は決めてんだわ」

「え~誰に渡すの~」

 彼女がぷくっと嫉妬を表しながら彼氏の腕に絡みつく。

 ドスドスと彼女のネイルが尖った指に突かれながら彼氏はこたえる。

「ばあちゃんだよ、俺の」

「あーね」

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