告白 side瑠衣
冬休みが訪れるころには、織は元の距離に戻っていた。いつものようにつかず離れずの距離。織は冬休みの課題をもって僕の家を訪れていた。織の家には炬燵がないから、我が家の炬燵で勉強をするのが毎年の恒例だ。息抜きにみかんを食べたり、暖かさで訪れる眠気に逆らわずに寝たり。
「あー、ねむ」
「寝たらいいんじゃない?」
「いや、今日のノルマは終わらせたい」
「そっか、じゃあこたつからでて勉強する?」
「いや、ここから出るのはな」
「じゃあ、いっそのこと買い物行こうか。コンビニでアイス買ってこよう?」
「こんな時期にアイスか」
「炬燵でアイスは至福だよ」
「む、それなら致し方ない。よし、行くぞ」
ありがとうございましたー
コンビニの店員の声を後ろに店を出た。
「やっぱり外は寒いな」
息が白くなる。
「織、荷物かして」
「いや、重くないし、君にはお金を払ってもらったんだ。これくらいさせてくれ」
「女の子に持たせているのはばつがわるいから」
そういって織の手から袋を取り上げる。が、織は荷物の取っ手を放そうとしない。
「おい、それやめろ」
「ん?」
「私を女扱いすることだ」
「ああ、そっか。ごめん」
織は女扱いされることを極端に嫌う。
「じゃあ、僕がアイスを持っていたいから、とかでどうかな」
「なら仕方ないな」
織はフッと笑い、素直に荷物を渡した。
「寒いね」
「寒いな」
「織、手出して」
「なんだ」
織が素直に手を差し出す。僕はその手を握る。
「おい、何するんだ」
「なにって、寒いから」
「カイロ持ってるからそれをつかえ」
「えー、織あったかいからいいよ」
「私が嫌なんだ」
なんでこんな日に手袋をしていないんだ。
織がぶつぶつ文句を言いながら手を振りほどこうとしているが、僕はむしろ強く握った。
「おり、織」
「なんだ。なんでむしろ強く握ってくるんだ」
「僕と手をつなぐの嫌なの?」
「いやじゃないが」
「じゃあ、なんで放そうとするの?」
「だって、君が」
「僕が?」
「君の方が女性に触れるのがダメなんだろう」
確かに。ある時期から僕は女性に触れるのが苦手になった。いや、女性というよりも人との接触が苦手なのだ。潔癖というかなんというか、握手とか、指先が触れるだけで吐き気がするのはもはや恐怖症と呼んだ方がいいものだ。
「ね、織。手袋とってみて」
「は? やだよこんなに寒いのに」
「いいから。お願い」
織がしぶしぶと手袋を外す。その手を取ってみる。
「うん。やっぱり、織なら大丈夫だ」
僕が手を取った時は顔を赤くしていたが、途端に顔色を青いものに変えていた。
「……もう、いいだろう。放せ」
「え、」
「君が私を女として見ていないことはわかったから。手を放せ」
そういうと織は僕の手を振り払った。
「今回は私だったからよかったものを。他の子におんなじことするなよ」
「しないよ」
「そうか。ならいい」
「織だけなんだ」
「何がだ?」
「僕が触れても大丈夫な人」
「そうか、よかったな」
「男も女も関係ない。友達の励だって無理。両親だって鳥肌が立つ。織だけなんだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます