あの子と

 初めの予感のとおり、私たちは本当によく気が合った。食べ物の好みから、興味を持つもの、かわいいものよりもかっこいいものを好むところまで。唯一の想定外は彼女が男の子だったということだ。彼は母親と姉の趣味によって中性的な服をよく着ていた。かわいいけど、かわいすぎない。ジェンダーレスとかいうらしい、そんな装いが多かった。

 そんな彼に対して私はかわいらしさなんてかけらもないようなそんな服を着ることが多かった。何せ兄が二人もいるのだ。私は兄のおさがりの服を着るのが好きだったし、それが普通だったのだ。

 当時の私たちを見て一目で正確に性別を判別できる人はほとんどいなかった。みんな彼を見てお嬢ちゃんと呼び、私を見て坊主と呼ぶ。私は背も高い方だったから、小柄な彼を見て女の子と間違えてしまうのも無理はない。まあ、私があまりに間違えられすぎて彼がむくれることがよくあったが、そんな姿もかわいらしくて役得だと思っていたことは秘密だ。


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