予感


 嫌な予感というか、悪寒がした。

 その理由はわからないけど、授業中に感じたことのない気持ち悪い寒気を感じたが、どうやら風邪を引いた風でもない。

 

 どちらかといえば、ジメッとした視線をずっと浴びている感じだ。

 もしかしたらだけど、先輩と付き合ったことに対して嫉妬の目を向けられているのかもしれない。

 

 まあ、学校中の連中の憧れである氷女乃先輩に男ができたなんて、それだけで大ニュースだし、その相手が俺のような帰宅部の年下とくれば誰も納得なんていかないだろう。


 ただ、納得されなくても事実なんだ。

 俺は先輩の彼氏だ。

 だからこそもっと自慢したいし、祝ってもらいたいし惚気たい。

 

 でもなあ。


「……」


 どろっとした正体不明の視線以外にも、あちこちから視線を感じる。


 特に、今まで俺なんかになんの興味も示してこなかった女子たちからの視線が慣れない。


 あれこれ聞きたいことがあるのはよくわかる。

 わかるけど、俺は残念ながらみんなとお話ができないんだ。


 禁止されてるから。

 目を合わすのもご法度だそうだ。

 まあ、先輩以外の女の人に興味なんてないし仲良くなろうとも考えないけど、意図的に無視するってのもなかなか難しいことなんだと実感する。


 学校、居心地が悪いなあ。

 先輩に毎日告白している時は、朝が待ち遠しくて仕方なかったけど、今は早く学校が終わらないかなってことばかり考えてる。


 早く帰りたいな。

 早く、会いたい。


 先輩、何してるんだろう。



「……染谷君、かっこいい」


 授業なんてとてもじゃないけど受けられない。

 体調不良を伝えて教室を出てから、こっそり彼の教室が見える、部室棟まで来てここから双眼鏡で彼の姿を確認する。


 沈黙を守ってる彼を見ると、胸がドキドキする。

 ちゃんと、女の子と目も合わせてない。


 でも。


「……私より近くに女の子たちがいる」


 許せない。


 教室、行かないと。


 

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