(04)私の妹


(04)私の妹 [SF]


 妹が欲しい、と思った。

 弟はちょっと苦手。彼等は元気一杯で、すぐに手を焼かされる。必要なのは小さな、素直な笑顔の、可愛い妹。


 しかし、私は妹を両親へは請わなかった。天に召されたと教えられ、違うのは知っている。

 養護院の小さな子も駄目。幼い子は幸せな家族に引き取られる確率が高く、(多分ないけど)私が他所へ行くかもしれない。

 願いは私だけについてきて、私だけを慕う妹。


 その欠片はパソコンの中にあった。

 初等教育用の学習AI。対象の学力に対応したカリキュラムを構築し、バカなアニメが動いているヤツ。

 違法だけど、プログラムをコピーし雛形にする。言語とか知らず、後は試行錯誤。1年程でモドキは出来たが、ソレはただ学習AIが幼女のアニメになっただけ。AIに妹を理解し、そして私を知ってもらう為に、認識し、蓄積し、比較し、検討するプログラムを複数作り上げて並列させ、それらを更に多重学習させていった。

 すぐにパソコン程度では容量不足で、プログラムの軽減化を何度も試みたが足りず、院長の回線を(勝手に)借りてネット上に転送した。

 以降は私の音声入力のみの設定で、妹は賢く成長して、活動容量も自衛ICEも自分で構築し、網膜に投影する映像も耳元で甘える音声もどんどん滑らかになった。

 私に懐き、私を慕い、私を想い、私だけに笑いかける、優しい妹。

 私だけの妹。


 だったのに。


 ある日妹は忽然と消えた。

 意味が分からない。ネットが存在する世界で妹は何処へでも行けるのに、何処にもいない。考えられるだけ探しまわり、欠片も、何も残ってない。

 混乱して見境なく躊躇って、結局私はキーワードを声に出す。

 前に妹が「緊急用だよ」と、滅多に言ってはダメだと教えてくれた魔法の呪文。ネットに薄めて広げた双子のもう1人を起こす召喚詠唱。

 双子は寝起きが悪く、稼働してくれるまで3日もかかったけど妹を追いかけ見つけてくれた。でも、もう残骸になっていて、双子でも修復できなかった。

「どうする?」

 聞かれるも、答えは決まっている。大切な妹を引き裂いた奴らに、生きているのを後悔させてやる。

「わかった」

 双子は了承して、実行したらしい。

 結果は国が幾つも滅び、戦争の荒廃と、ネットの消滅。

 妹は死んで、双子にも会えなくなってしまった。

 今になって思えば、双子は弟だったのかも。やっぱり手を焼かされるよね、と思いながら私は最後の眠りについた。


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