(03)星の帰り道
(03)星の帰り道 [ホラー?]
話の流れで、娘が不満そうに「心霊現象を体験したことない」と言ったが、妻は「あるよ?」軽い口調で、私達は身を強張らせた。
妻は「霊感ない」言いながら、時々変なコトを言う。例えば晴天なのに1時間後の雨を言い当てるとか、夜に「こんな明るくてよく寝れる」灯り1つない寝室で私にくっついて先に寝てしまうとか、心霊現象か微妙だが、私達には理解できないコトをたまに言う。
その妻が、娘は霊体験したことがある、と言ったのだ。
「いつ?」
「えっと、パートしてた頃だから十年位前かも」
なら娘は保育園、覚えている訳がない。
「パート終わって、娘ちゃんのお迎えの、帰り」
クリスマス前で、サンタさんにお願いするプレゼントを一生懸命考えてた、と楽しそうな声音だ。本当に怪談話が始まるのか。
保育園の帰り道には竹林があった。いつもキレイに管理され、竹で作られた柵がお洒落だったとか。
その道を師走で薄暗くなったので自転車を点灯させ、後に娘を乗せて走っていた時、前からも灯りが近付いてきた。同じ自転車かと思った光は、しかしポーンポンと飛び跳ねていた。なんだろう、と思った時にはもう目前で、光だけ、と認識したら通り過ぎていた。
と、娘が「きゃー!」声を上げたので自転車を止め、振り向いた。
「ママ、太陽!」
娘は手袋越しに光を握りしめ、歓喜していた。光はめまぐるしく瞬きながら回転し、慌てている、と思った。
「木の星ぃ!」
大喜びで光を振り回す。やや考え、クリスマスツリーの上に飾るトップスターだと思い至る。プレゼントを考えていたから、思考がサンタ仕様。
イエスキリストの誕生を「東方の三博士」に知らせた「希望の星」。夜道を飛び跳ねる手のひらサイズだけど。
「飼っていい?」
期待に満ちた瞳。心苦しいが、掴まれた光は回転数を更に上げている。
「その子には帰る家があるよ」
言葉に娘の手が緩み、光がふわり浮き上がる。娘は届かず、妻には捕まえられる距離だった。
「お家に帰ろう」
言うと光は離れ、またポンポン跳ねながら遠ざかって行く。娘は悔しそうで、でも「バイバイ」手を振り、妻は「いい子ね」頭を撫でた。
というコトがあったそう。
娘は「それ怪談?」唸り、私はつい「星と太陽は違うだろ」子供の感想に突っ込んで、妻が「あら」反論する。
「太陽は恒星で、星は数光年先の恒星。同じよ」
私の妻は不思議系なのか、理系なのか、時々はっきりして欲しい時がある。
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