第二回 日本三大稲荷の一つ(諸説あり)

稲荷こんこん、お狐様。

あなたの周りにもお稲荷様、ありますか?


日本三大稲荷、というものをご存じでしょうか。

世界的に有名な伏見稲荷大社は外せませんが、

実はそれ以外は諸説あり。


愛知県豊川市の豊川稲荷。

茨城県笠間市の笠間稲荷。

佐賀県鹿島市の祐徳稲荷。

他にも色々。


そんな中、岐阜にもその候補があるのです。

それが今回の訪問先。


『千代保稲荷神社』


さて、読み方クイズですね。

あ、ちよほいなり、ですよ?

今回は愛称を考えて頂きましょう。












はい、では答え合わせです。

正解は、


『おちょぼさん』


でした。


千代保稲荷。

お千代保稲荷。

お千代保さん。

おちょほさん。

おちょぼさん。


という変遷なのでしょうか?

何にせよ、地元の方は正式名称には馴染みが無いと思います。

ほぼ100%おちょぼさん呼びだと思います(調査してない当社調べ)


そんなお稲荷さんへご挨拶に。

おちょぼさんは、岐阜県海津市平田町三郷に在ります。




海津市は西濃地域の南端、愛知県と三重県と接しており、木曽きそ長良ながら揖斐いび

木曾三川きそさんせんの合流地点。


古くから水害に悩まされた地域であり、1700年代には薩摩藩士が幕命を受けて、

この三川の治水工事に従事、病気や幕府への抗議のための自害などで、なんと

80名以上が死亡する宝暦ほうれき治水事件が発生した過去があります。

この事から、岐阜・西濃地域の人は鹿児島薩摩の人に親近感があるのだとか。

私は岐阜市出身ですが、このお話を小学生の頃に聞いた覚えがあります。




話が脱線しました。


おちょぼさんに到着。


無料駐車場もありますが、今回は鳥居前町とりいまえまちの南入口前の有料駐車場へ。

事前調査で野菜が貰える所があると知り、これは利用せねば、と思ったわけです。

全部の駐車場がそうではなく、一ヶ所だけですね。

ちなみに私は駐車料金400円で大根一本貰いました。


公共交通機関で訪問する場合はちょっと手間がかかりますが、

岐阜羽島駅で海津市コミュニティバス「海津羽島線」に乗って、

お千代保稲荷バス停で下車、となります。

アクセスの良い最寄り駅は無いので、駅から徒歩というのは現実的では無いですね。




南入口には大きな朱塗りの鳥居が参拝者をお出迎え。

その先に伸びているのは鳥居前町。


おおよそ600mほどの北東方向に緩やかにカーブした道の左右には、

古さが滲む建物が立ち並んでいる。

そんな建物の中には、串カツや川魚料理などを出す、年季が入ったお食事処。

通りを歩いていると風に乗って、どて煮の赤味噌の香りが流れてくる。

お腹が減る、何とも良い匂い。


一先ず参拝しに行こう。




ん?

こんな所に鳥居が?


通りを北に向かって歩いていると、突然左手に朱塗りの鳥居が姿を現した。

おちょぼさん―――千代保稲荷はまだ先のはず。


気になるな、ちょっと寄ってみよう。



二重に建てられた鳥居と白いのぼり。

鳥居には『荷席かせき稲荷神社』の文字。

奥には更に朱い鳥居が立ち並んでいる。


足を踏み入れ、少し歩くとすぐに社が見えた。


境内にあるのは柄杓ひしゃくすらない手水舎てみずやと由来が書かれた真新しい看板、

そして一対の稲荷像に護られた神域に立つ社。

二間にけん四方、二坪くらいだろうか?

決して大きな社ではない。


看板の由来を見るに、1500年代半ばに佐々木源氏の流れを汲む早川氏によって、

移設される形でこの地に建立されたようだ。


お賽銭を供え、二拝二拍手一拝。


よく見ると社には多くの名刺が置かれている。

この神社に参拝しに来た企業の方々の名刺だ。

稲荷と言えば商売繁盛。

祈願するのは、さもありなん。


私が何を祈ったか?

特に何も考えていなかった。



通りに戻り、再び北に向けて歩いて行く。

古い建物の間に周囲とは異なる真新しい建物も見て取れる。

そこに入るのは今時の若者に向けたであろうな食べ物だ。

一先ず参拝を先にするが、後でここにも寄ってみよう。



通りをそこそこ歩き、左手に朱塗りの欄干が見えた。

足を止めずに近づき、そして到着。


千代保稲荷神社おちょぼさん


鳥居をくぐるとすぐ右手に手水舎。

今度は柄杓がたくさん置いてある。

そのうちの一つを取り、水をすくって手にかけ、口をゆすぐ。


その横ではおばあちゃんがある物を売っている。

50円出してそれを買い、参道を進む。


階段を少し上ると燈明場とうみょうばがあった。

朱塗りでガラス戸があり、内側に蝋燭を刺す場所がある。

先程おばあちゃんから買った内の一つ、蝋燭を出して、

他の蝋燭から火を貰い、献灯する。


右手には先ほどの社よりもずっと大きい社殿が建っている。

そちらに歩き、参拝者の列に並ぶ。

横からでも参拝出来る、と書いてあるが、やはり正面からしたいではないか。


私の番が来た。


先程買ったもう一つ。

それを賽銭箱の手前に設置された木製の箱にそっと置く。


そこには大量の『お揚げ』が置かれていた。

お稲荷さんだからこそ、のお供え物である。


お賽銭も供えて、再び祈りを捧げる。

今度は何を祈ったか?


執筆している全ての人に幸運を


と、祈っておいた。

何かいい事が起きるかもしれないね。




さて、参拝も終わったので次はグルメレポだ。

行く店の一つは既に決めている。


おちょぼさんから少し北に歩くとその店はある。

正直美味しそうな匂いと店頭の屋台スペースが目に入るので、

ほぼ間違いなく、誰でも気になるだろう。


『串カツ 玉家』さん。


おちょぼさんで串カツと言うとここだろう。

屋台のようになっている店頭の立ち食い場所と、

腰を掛けて食事ができる店内がある。

どちらにするか?


そんなものは決まっている。

立ち食い一択だ。


近づくと即座に声を掛けられた。

一人と伝えるとすぐに少量のキャベツが載った皿を渡された。


ここのルールは簡単。

揚げられた串カツと煮込まれているどて煮串は勝手に取って食べればいい。

一本一律110円、後清算方式。

実に自由だ。


串カツはどんどん揚げたてが置かれていく。

どて煮串は目の前で煮込まれている。


つまり激熱である。

皆さん、口内火傷注意するように!

(経験者談)


串カツは衣はサクサク、中の豚肉はしっかり旨い。

どて煮串は煮込まれてぷるっぷるである。


串カツはバットに入れられているソースか、

どて煮が煮込まれている赤味噌の池に漬けることが出来る。

当然だが二度漬け禁止である。


やる人はいないと思うが、どて煮串をソースに付けるのも禁止だぞ?


寒風吹きすさぶ中、熱々に噛り付く。

何と美味しい事か。

私はとりあえず13本で終了。



代金を支払って店を後にする。

来た道を戻り、先程目に入った真新しい店を目指す。


稲荷を越えて、しばらく歩いて到着。


なんともピンクピンクした外観が物凄く目を惹く。


『おちょぼいもこ』さん。


店頭に置かれたパネルが名物を主張する。

これはレポートしなければ!


店内に入ると様々なお菓子が並び、最奥に店主さんが私を待ち構えている。

そこにはイートインスペースが設置されていた。


実は非常に残念な事だが、現在のおちょぼさんでは食べ歩きは禁止。

串物やこうした店の品を持って歩けないのは残念だが、

落ち着いて食べられるのは良いことかもしれない。


目的の物を注文する。

値段は750円。(だったと思う)


店主さんがカウンター下からそれを取り出し、専用の台に乗せる。

砂糖をかけて、取り出したのはバーナー。

ぼわぁ、と炎が吹きつける音がする。


そして包みに入れられて渡された。

店主さんから「15秒くらいでカリカリになりますから」の一言。


このお店の名物は『密芋ブリュレ』だ。


一本のさつまいもの上部をキャラメリゼしてカリカリに。

そのすぐ下の芋の中にはカスタードクリーム。

さつまいも自体も美味しい。


あっという間に一本食べきったが、これは予想以上にお腹に溜まる。

串カツ13本の後に食べるのは間違いだろう。

私は大丈夫だが、職の細い方ならこれだけでお腹いっぱいだ。


店主さんに礼を言って店を後にする。




おちょぼさんはずっとここにあり、地域の人に親しまれてきた。

そしてその周りの店もそれと共に歩んできた。

古き流れを汲んでいる。


反面、若者に向けた店も増えている。

新しい風も伝統と共に歩もうとしている。

温故知新、という言葉の字のままの姿がここには有ったように思う。


皆さんも是非一度訪ねてみてはいかがでしょうか?

なお、年末年始は途轍もない人出になるのでご注意!




追記

近くに道の駅クレール平田もあるので、そこで農産品など買うのも良いですよ。

私は140円で白菜一玉買ってきました。

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