第11話 つばさくん、再び

 私の部屋に中学生三年生になったつばさくんが訪ねてきた。

 ママから真由先生に戻った今も、こうして半年に一回くらい私の部屋を訪れ、すき焼きを食べ、泊まっていくのを、博さんも黙認してくれていた。


 つばさくんの身長はとっくに私を追い越し、声も低く変わっていた。

「おー、またおっきくなったねー、どう、もうおちんちんに毛は生えた?」

「とっくだよ、もうマスだってかけるぜ」

「ほんとー、見てみたーい」


「そうだ、先生、エッチさせてよ。クラスの男子で、誰が一番早く経験するか競争してんだよ」

 冗談っぽく語る彼のことばの中に、本気が滲んでいるのを感じた。そうか、彼もそういうことを考える歳になったんだ、いや、私が気づかなかっただけで、もう前から私のことをそういう目で見ていたのかもしれない、

「そうだなー、結婚を前提にお付き合いしてくれるならいいよ」と、ここは大人の余裕でかわしておく。

「えー、先生と僕じゃ全然年が違うじゃない」

「たった22歳しか違わないよ」


 まだ子供だと思っていたのにつばさくんが突然そんなことを言い出すから、私は、この愛しい元息子の、少年から大人になりかけの今だけの身体を思うさま観察したい、この目に焼き付けておきたいという衝動を抑えられなくなった。

「それより、久しぶりに一緒にお風呂入ろうよ」

「え、いいけど」

 思いがけない私の提案に、彼の返事に緊張が混じった。

 

 食事を終えて、私は彼を浴室に誘った。先に脱衣場で服を脱ぎ、リビングに向かって「早くおいでよ」と声をかけた。

「何隠しているのよ。毛の生えたおちんちん、ちゃんと見せてよ」

 おずおずと姿を現した彼を私は湯船につかりながら存分に観察した。そして窮屈な洗い場でその身体をすみずみまで洗ってあげた。

 最初は恥ずかしがっていた彼も、途中からはすっかり私に身を委ねた。湯船のふちに座らせて、大人になりかかった彼のおちんちんをを洗った。それはボディソープで泡だった私の手の中で勢いよく精を飛ばした。


 変わってしまった二人の関係性に危うさを感じながらも、いつものようにベッドの横に布団を敷いた。案の定、彼がそういう話題を振ってくる。

「僕が子供の頃、僕が寝ている隣で、先生とパ、親父、エッチしてたんだよね」

「そうだねー。つばさくんはいつもすやすや眠ってたよ」

「それって、なんか傷つくよなー」

 やはり青い欲望は歯止めが利かない。私と博さんが絡み合う姿を妄想したのだろう、パジャマの前をとんがらせた彼が、布団から抜け出てベッドに上がってきた。

「せ、せんせい、おれ、、、せんせいと、、、」

 

 そして私も、愛おしさと、彼のことをもっと知ってみたいという好奇心を押し留めることができなかった。

 「いい、絶対に今夜だけだからね」

 私はパジャマを脱いで全裸になると、慌ててパジャマを脱ぎ捨てた彼の身体を抱きしめた。 

 狭いベッドの上で、私は彼の若い肢体を、指や、舌や、身体のいろいろな部分を使って、存分に慈しんだ。

 もうこれ以上は、というところで、私は、私の上につばさくんを誘った。ようやく私と身体をつなげたものの、どうしていいかわからない彼が私に必死にしがみついてきた。私が動くと、やがて彼は私の中にたっぷりとその若い精子を放った。

 

 私の隣ですこやかな寝息を立てているつばさくんの頭をなでていると、私の腹の中で不思議な感触があった。今、彼の精子が私の卵子をとらえた、そんな気がして私はお腹にそっと手を当てた。

 もし、こどもができたらどうしよう。

「産みたい」と思った。

 そしたら思い切って博さんのところに帰ろうかな。正直に話せは、多分博さんは受け入れてくれるだろう。

 でも、そうすると、産まれてくる子は、本当はつばさくんのこどもで博さんの孫なのに、博さんのこどもでつばさくんの弟か妹ってことになるのか。

 ややこしいな。

 でも、まあ、いいか、どっちにしても私のこどもであることは変わりない。


 これはさすがに紗理奈や美和にも呆れられるだろうなー。 

 いつまでたっても、私の人生。波乱万丈だ。


(終)


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猟奇的な真由 廣丸 豪 @rascalgo5

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