第9話 風間博の決心
私は自己嫌悪に悶々とした日々を送っていた。
二度目の大失態は、ある意味ゲロまみれになって介抱された一回目の時以上だ。一回目とておしっこの介助までされるという、女性として完全に再起不能の大失態だが、二度目のはさらにその上を行くというか、そもそもあれは強姦、もはや人間失格の性犯罪者だ。
そんな時、黒須パイセンから入れ替わり大作戦の結果報告を受けた。
一回戦を終えて目隠しを外した時の園長先生の驚きぶりと言ったら、それはもう大変なものだったそうだ。
それでも、開き直ったのか、それとも黒須パイセンの巨乳に性欲をたぎらせてしまったのか、先生は二回戦に及んだ。それも二回目は先生の好きにしていいという私との約束通り、彼女のダイナマイトバディを思う存分、様々な体位で堪能したらしい。その結果二度にわたって中出ししてしまった園長先生は、鉄板の安全日は私であって黒須先生はその限りではないということに思い至り、さらに狼狽したそうだ。
「焦って確認してくる様子がかわいいので、しばらくは生理が遅れていることにしようと思っています」
この二人がうまくいく確率は高くはないだろう。それでもあきらかに一皮むけた感の黒須パイセンをみて、なるほどこういう荒療治もありだなと納得した。彼女が身に着けたしたたかさが少しうらやましくも感じた。
それに比べて、私の気分は、再び深海の奥深く沈んだままだ。ああ、いっそ深海魚にでもなってしまいたいとベッドをごろごろ転がっていた時に、スマホが鳴った。全く持って思いがけないことに、つばさくんパパからだった。
十秒ほどの逡巡の後、ようやくスマホのボタンに触れた。スマホの向こうから、懐かしいつばさくんパパの声が聞こえてくる。
「あの、すみませんが、もう一度私たちとすき焼きをご一緒していただけませんか」
合わせる顔など全くない私は、食事の最中もつばさくんパパと目をあわせることができなかった。明らかに様子のおかしい私にはお構いなしに、つばさくんは今までと同じようにはしゃぎまわり、食事が終わるとうとうとしはじめた。
つばさくんを寝かしつけたところで声をかけられた。
「あの、先日のことなんですけど、」
私はとっさに椅子から下りてその場に土下座をした。
「重ね重ね申し訳ありませんでした。十分に反省していますので、どうか警察に通報するのだけは、、」
「そのことなんですけど、真由先生は、子供を産むのは痛いからいやだとおっしゃいましたよね」
え、そっちですか?
キョトンとする私に、意を決して、博さんが言葉を紡ぎだす。
「でも、やはり私たちは、つばさの弟か妹が欲しいと思っているんです。それで、その、真由先生、生んでくれないでしょうか」
深海に沈んでいた私の心が急速浮上を開始した。私はいつもの私を取り戻し、モードは「穴があったら入りたい」から「私の穴に入れて」に急転換した。
「善は急げと言いますよ。早速今から作りましょう」
私は彼の手を取って寝室に誘い、すやすやと寝息をたてるつばさくんの隣の布団で抱き着いた。
今度は、彼も抵抗しなかった。私は慣れた手つきで、彼はぎこちない手つきで、お互いの服を一枚ずつ脱がしていく。
前戯もそこそこに、彼が上になって身体をつなげた。
前回と違ってカチカチではあったけど、テクの方は今一つで、時間も前回同様三分ほどで終わってしまった。イケなかったけど、でも私はイクのとは全く違う安心感に包まれ、十分に満足していた。
ま、持ち物は悪くないし、長い付き合いになるのだから、テクの方はこれから仕込んでいけばいいかな。
あ、そうだ、紗理奈と美和に祝勝会もやってもらわないとな。
「これで彼女らとも昔のような親友に戻れそう」
博さんに胸の中で、私はそんなことを考えていた。
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