幼馴染は嫉妬する

「湊、ここに正座しなさい」


やはり隠し通すことはできなかった。

クソ!あともう少しだったのに……


般若のような顔をした美琴にビビって、俺は素直にリビングで正座した。

……そもそも美琴とは付き合ってもいないのに、どうしてこんなに罪悪感があるんだろう?


「なんで嘘ついたの?」

「嘘ついてねえし」

「隠そうとしてたでしょ?」

「隠してない」

「嘘つき!あたしが部屋に入るの阻止したくせに!」


おいおい。なんで俺の部屋に入るのが前提なんだよ。

彼女でもないのに。


「あのー彼女さん。全部私のせいなんです。私が勝手に押しかけただけなんです。ミナトンは悪くないです」


津島さんが俺を庇ってくれる。


「ミ、ミナトン……?」

「あ、湊さんのあだ名で」

「もうあだ名で呼ぶ仲なのね……」


この世の終わりと言わんばかりに、美琴は天を仰いだ。


「それに、あなたの服は……湊の服?」

「あ、これですか?湊さんの服を借りまして」


津島さんは俺のシャツを着てきた。

だぶだぶの感じがかわいい。


「か、彼シャツ……!なんてうらやま……いやらしいの!」

「ごめんなさい!洗濯して返します!」


はあーと美琴がため息をついた。


「津島さんが謝ることないよ。美琴は彼女じゃないから。ただの幼馴染で、昔からイカれた奴なんだ」

「なんだと!湊を心配して朝ごはん作ってあげようと思ったのに、女を連れ込んでいたなんて……」

「別に心配しなくていいから」

「……わかった。今から朝ごはん作るから、待ってて。話はまた夜にしよう」


なんでそうなるんだよ?

どうしても朝ごはんを作る気らしい。

美琴は料理上手いから有難いが、今日はやめてほしい。


津島さんは着替えて、帰る支度した。


「……じゃあ、私はこれで。ミナトン。またね」

「またね。ミツキン」

「み、ミツキン?」


俺が地雷を踏んだことを察知した津島さんは、凄まじいスピードで部屋を出て行った。


……さて、ここからが本番だ。

美琴はキレると何をするかわからない。

しかし、本当に理不尽だぜ。

彼女でもないのになんでこんなにうるさく言われて……


「湊、見て」


キッチンで料理をしていた美琴が、近づいてきて……俺に抱きついた。


「おい、何にして……」

「私も、負けてないから!」

「はあ?」

「……会社行くまで、まだ時間あるでしょ?」




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