幼馴染の襲来

ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!


クソ!何回鳴らすつもりだ!

完全に近所迷惑だろ……


「湊ー!まだ寝てるのー!早く起きないと遅刻しちゃうよー!」


寝てるフリをしてなんとか誤魔化すか……

俺はベッドの中で息をいそめた。


ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!


鬼のようにインターホン鳴らしてくる。


「湊ー!いるんでしょ!早く出なさい!」


もう出るしかねえな。

津島さんを起こさないと。

俺は身体をゆすった。


「ミツキン、起きて!」

「ううん……むにゃむにゃ……」


どんなにゆすっても全然起きない。

……仕方ない。

俺は腹を括った。

美琴とは付き合ってるわけじゃないんだ。別に隠す必要ないじゃないか。

せめて少しでもバレるのを遅らせるため、布団で津島さんを覆った。もしかしたら10000分の1の確率でバレずに済むかも。


……よし。ドアを開けるぞ。


「こんな朝からなんだよ?美琴」

「やっと出てきた!なんだよ?じゃないでしょ!朝ごはん作ってあげるから入れて」

「つーか、なんでここにいるんだよ?」

「今日、引っ越して来たのよ」

「は?引越し?」

「ふふ♡今日からあたしたち、またお隣さんだよ!」


ニコニコしながら、俺に言う美琴。

しばらく見ない間に、大人ぽっくなっていた。

ストレートのさらさら黒髪。

ブラウスから、たわわな胸がチラチラ見える。


「あらら〜久しぶりに会った幼馴染の魅力に、やられちゃったか?」

「いやいや、相変わらずガキだなーと思って」

「なんだと!せっかくご飯作りにきたのにー」


ぷくーっと、頬を膨らませる。

大人ぽっくなったけど、中身は昔の美琴のままだ。


「朝ごはんなら自分で作るからいいよ。ありがとな。土日に飲みに行こうぜ。じゃ、俺は会社があるから」


俺がドアを閉めようとすると、


ガっ!


美琴がドアに足を入れた。


「なんだよ?」

「なーんか、怪しいなー」

「怪しいって……何もしてねえよ」


美琴は昔から勘がいい。

人狼も大富豪も、いつも美琴に負けていた。


「くんくん。くんくん」


ドアに鼻を入れて、匂いを嗅ぎ始めた。


「おい、何して……」

「うーん。変な匂いがするね。甘酸っぱい匂い。これは……女の子の匂いかな?」

「俺みたいな陰キャ非モテの部屋に、女の子がいるわけ——」

「ミナトーン!誰か来たの?」


津島さんの声が聞こえた。

もちろん、美琴にも聞こえた。


終わった。

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