ギャルと鍋と間違い

≪へー!湊、彼女と住んでるんだ?≫

≪そういうわけじゃ……もう切るわ。また話そうぜ。じゃあなー!≫

≪こら!待て!切るな——≫


俺は無理やり電話を切った。


「今の人、もしかしてミナトンの彼女?」

「そんなんじゃないよ。ただの幼馴染」

「本当?怪しいなー?」


つんつんと、俺を突いてくる津島さん。

さりげなく、「湊っち」から「ミナトン」に呼び方変わってるし。

まるでポケモ○みたいな名前だ……


「さっそくご飯作るねー」


津島さんはエプロンをつけて、キッチンに立った。

あれ?俺の家にエプロンなんてないはずじゃ……


「かわいいでしょ?ついでに買ってきたの!」


ヒマワリの絵が書いてある、グリーンのエプロンだ。

明るくて津島さんによく似合っている。


「似合ってる?」

「とっても似合ってる」

「わ!うれしいっちゃ!」


天使のような優しい笑顔だ。

エプロンに胸のラインがくっきり出ている。

かなり大きなものをお持ちのようだ。

まさに神に選ばれた存在……


「ミナトンのスマホ、めっちゃ鳴ってるよ」

「あ、ヤバ!」


幼馴染の美琴から10回も着信が来ていた。


「うわ!めっちゃ鬼電じゃん!早く彼女さんにかけてあげなよ」

「いいよ。また今度で」


そう言ってるそばから、またかかってきた。


「早く出てあげて。私は作ってるから」

「ああ……」


俺は仕方なく、ベランダで電話に出た。


≪なんで出ないのよおおおおおおおおおおおおお!≫

≪うわ!≫


いきなりの叫びに、俺はスマホから耳を離した。

耳がキンキンするぜ。


≪いきなりなんだよ?≫

≪なんだよ、じゃないでしょ!説明して!≫

≪何を?≫

≪なんで家に女を連れ込んでいるのか?≫

≪話すと長くなるんだが……≫

≪全部、話しなさい。時間ならあるから≫


俺は昨日、渋谷で倒れたギャルを助けたこと。それからギャルが財布を届けてくれて、お礼に部屋の掃除してくれたことを話した。


≪そんなAVみたいな話、信じろって言うの?≫

≪でも本当のことだ≫

≪湊の嘘つき!死ね!≫


なんで美琴にキレられないといけないんだ?

美琴はただの幼馴染で、彼女でもないのに。


≪別に変なことしてないから≫

≪はあ?そんな言い訳、通用しない。大人の男女が同じ部屋にいて、やることやらないわけないじゃない!どこまでやったの?キスはしたの?それから先は?≫

≪キスはしたな……≫

 

初対面で津島さんとキスしたよな……

あ、ヤバい。本当のこと言ってしまった。


≪キス……したんだ≫

≪いや、あれは事故みたいなもので≫


なんで言い訳してるんだ?俺は。


≪……わかった。一刻も早く湊のそばに行かないとダメね。また話しましょう≫

≪お、おう……またな≫

≪待っててね≫


なんだかよくわからんが、電話が切れた。


「ミナトンー!ご飯できたよ!」


◇◇◇


「お鍋作ったっちゃ!」

「うお!すげえ美味そう!」


津島さんが鍋を作ってくれた。

いろいろな野菜と、牛肉が入っている。

最近はコンビニ弁当で夕食を済ませていた俺には有り難い食事だ。


「よそっちゃうねー」


小皿に俺の分をよそってくれる。


「う、ぬぐい!」


熱いっていう意味かな?


「大丈夫?」

「ん。大丈夫ー!」


エプロン姿で、髪をかき上げる姿が、すげえ色っぽい。

うなじのところが白くてきれいだ。

金髪が湯気に触れて、キラキラしている。


「はい。どーぞ!」


野菜と肉と豆腐。

栄養のバランスを考えてくれていた。


「へへへ。たんげめぇよ!」


鍋からよそう時、少し前かがみになるから、胸が上からチラリと見えた。

かなりおっぱいは大きいな……たわわに実っている。 

たぷんと揺れて、エロいぜ。


「たーんと食べて!」

「いただきまーす」


すげえうまい!


「おいしいよ」

「本当?」

「うん。めっちゃくちゃ美味い……久ぶりにこんな暖かい料理を食べたよ」

「うれしいっちゃ……」


津島さんの顔が赤くなった。

目を潤ませて、俺を見つめている。

小さなピンクの唇と、右目の下の泣きぼくろがすごく……そそる。


「あたしも食べようっと!」


津島さんは顔を背けて、食べ始めた。


……変な雰囲気になっている。

これって、まさか。

いけるやつか?


「ほら。もっと食べて」


津島さんはガンガン俺の皿によそってくる。

なるべく俺と目を合わさないようにして。


「お酒も、飲む?」

「お、ビールじゃん」


缶ビールも買ってきてくれた。


ヤバいな……このまま飲めば、「間違い」が起きるかもしれない。


「MAOのえっちな同人誌、私も持っているんだけど」

「ぶ!」


俺はビールを吹き出してしまった。


「うわ!大丈夫?」


津島さんが俺の口をティッシュで拭いてくれる。


「もおー!ミナトン。子どもみたい」

「すまん」

「いいよ。ミナトンのお世話するの楽しい」

「マジか」

「ミナトンと一緒にいると安心できるから」


安心できるか。

俺のほうはさっきからドキドキしまくりなのだが。

下のほうが元気になってるし……

そう言えば、聞きたいことがあるんだ。


「昨日は……どうしてあんな道端で倒れてたの?」

「あ、それねー」

「言いたくない?」

「ううん。ミナトンには聞いてほしいな」


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