第17話 そして、本人たる娘の意思表示
マスターに促された清美は、自分の思うところを述べた。
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皆さん、私なんかのためにご心配下さいまして、ありがとうございます。
この度、皆さんのおかげで、高等学校を卒業できます。
あとは、卒業式の日に学校に行くだけのところまで、ようやくたどり着きました。
確かに、皆さんのご心配のところ、私も正直、大阪という大都会への憧れなどまったくないと言えば大ウソになりますが、憧れよりむしろ不安の方が正直大きいです。
街に出て解放感のあまり羽目を外しかねないというのも、私自身、よくわかっています。岡山にこのままあと1年か2年いても、やっぱり、どこか羽目を外しかねないところが自分の心の中にあることも、よくわかっています。
私自身はさほど解放感に浸れているわけでもないつもりですが、学校に行かなくて済むようになってこの数日間、やっぱり、抑圧から解放されたような思いがありまして、空いている時間に、貯めているお金を持って街中で買い物に出ました。
いろいろなものを見て、あれも欲しいこれも欲しいという思いも湧きあがりましたけど、確かにこのまま大阪に出てしまえば、それが爆発してしまいかねないなと、そんなことを思いました。
結局、さして物も買わず、紅茶とケーキだけ頼んで、それを食べて戻ってきましたけど、我ながらよく抑えられたなと、部屋に戻って、ふと思ったほどです。
何だか、自分自身のこれからおかれる環境というもので味わえるものと、それに伴う恐ろしさを、一度に、身をもって感じさせられました。
もしよろしければ、あと1年少々、皆さんに合格がいただけるまで、こちらでお世話になることで、岡山でお世話になった皆様への恩返しをさせてください。
晴れて合格がいただけましたら、それから、大阪の父のもとに行って、さらに仕事に励む所存です。
どうか皆さん、よろしくお願いいたします。
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