本人の意思や、いかに

第16話 ようやく、意思の合致が・・・

 岡山氏の願いに、下川夫妻も本田夫妻も、特に異議はないようである。

 それを言うならむしろ「渡りに船」のようなところさえ、あるという。

 特に本田夫妻の娘の陽子は、来年で大学を卒業し、教師になる見込み。

 その間、新たな従業員を雇って引継ぎさせたいと思っているところ、清美がさらに1年引続いて勤めてくれれば、それもスムーズにいくから。

 下川夫妻の本屋の方も、後継の従業員が間に合っていない。

 とはいえ、これから手配していけば、この1年かそこらもあれば、こちらもスムーズに引継ぎができる。それまでの間清美に残ってもらえるなら、実にありがたい。まして彼女は両者にとって、単なる従業員というだけではなく、経理を通じて経営面でもきちんとした指標を作ってくれる「人材」である。

 そんな「人材」を、中途半端な形で大阪の父親のもとに送り出しては、むしろこちらが先方に申し訳ないという思いを、両者とも抱いていたところであった。


 本田夫妻が厨房から出てきて、ウエイトレスの父親の前に立った。

 次に意向を述べたのは、もう一人のウエイトレスの父親であった。


「岡山さん、そういうことでしたら、娘さんをもう1年、うちと下川さんの方でお預かりさせていただきたい。来年の年度末を終えて時機が来ましたら、清美ちゃんを大阪のお父様のところに「お返し」いたします。私どもが娘さんを鍛えるというのはむしろ、おこがましいというものです。岡山さん、あなたの娘さんのお力、あと1年ほど、お借りしたく存じます。清美ちゃんさえ、よければ・・・」


 ここで、厨房で片付けなどをしていたウエイトレス姿の勤労少女が、彼らのいるテーブルの前にやってきた。

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