どこまでも広がる、何もない純白の大地。そこにただひとつ、深く根を下ろし聳え立つ大樹。源樹と呼ばれるようになったそれは、やがて鮮やかな黄色い花をつけ、大地に多くの種子を蒔くのですが——。
冒頭から、寂しくも雄大で美しい光景がはっきりと脳裏に浮かぶ、とても力強いその文章に思わず惹きこまれます。
読み進むにつれて、ふと、その力強さに軽やかさと切なさが入り混じり、そして最後には息を詰めて、一体この物語はどこへゆくのだろうと見守ってしまいました。
人ではないものたちの不思議な営みは、それでも儚いすべての命への讃歌のようで。
なんとはなしに、当たり前の日々が実はとても尊いものなのだ、というようなことを改めて考えてしまう物語でした。