カナリアとの再会


 翌週、強制的に立てさせられたプランでデートをすることになり、建前でも自分が立てたからと予定通りきて彼女を待った。


 一時間ほど待っても来なかったので、「当てつけかよ」と自分の罪を棚に上げ、身体を回して帰ろうとした。が、すぐに足を止めた。それもそのはずだ。目の前に彼女が居たからだ。


「いたのかよ」と自分は悪態を付き嫌な顔をしたと思う。彼女は澄ました顔をして「何時間そこにいるのかなと、観察してイタ」と正気を疑うようなことを発言。


「居たんだったら素直に出て来い。時間の無駄だ」と、説得力が無いこと滑った。


 キレられてもおかしくないはずなのに、蛍は「うちは嬉しかったゾ」と微笑んで見せた。


「何言ってんだ」


 さすがの自分も混乱に似た引け目を感じた。けれども、その後に続いた言葉を聞いて、思わず腑に落ちてしまった。


「だって、一時間もウチが来ることを期待して待っていたんダロ」


 と、恥ずかしげもなく口にした。その瞬間、自分は良くも悪くも笑いが込み上げてきて、吹き出してしまった。


「アハハまったく可笑しなことをいうな。てっことは、お前は自分が来てくれるのを八時間も期待して待っていたのかよ」

「ええ、でも、さすがに十八時は越えられないと思ったから帰ったけどネ」

「マジで……」


 淀みなく彼女はそう発言するから一瞬、あれ?これって怒られるべきだよなと、知識と感覚のズレを感じた。なんだけど、蛍の笑顔を見ていたらどうでもよくなった。


 その後、飯食って「あんたは信用デキる」と蛍の家まで連れてかれ、そこであの『金糸雀』と対峙した。間違えるはずはない。


「やっぱりあの金糸雀だ」

「綺麗でしょ。絶対物凄く愛された金糸雀ダゾ。うちもそのくらい愛してくれる人に出逢いたいナ~」と、溶けたアイスみたいなことを言ってたのを覚えている。


 この金糸雀について話したとき、蛍は「やっぱり、運命の金糸雀だった」とまるで旧友にでも会ったかのようにはしゃぎ回り、家から電話がかかるまで会話に付き合った。それ以降、勉強を教えたり、時には事件に巻き込まれて警察や馴染めの探偵と協力して事件を解決したりと、刺激的で充足した日常を過ごすことができた。


 このまま彼女と一生過ごしていくのかなと思っていた。しかし、卒業式が終わったあと病院に訪れたら上嶋蛍は帰らぬ人になっていた。当時はその現実が受け入れられず、自我を失うほどに泣き崩れた。一度は自暴自棄になって大学なんて知るかよと、家の者に当たったこともあった。


 けれども、彼女が実質最後に「もし、ウチがいなくなっても人を嫌いになるなよ。いくら人をはじいても良いガ、オマエに『助けを求める者』と『好きだよといってくれる人』は絶対に拒むな。約束できるカ?」問いかけられたことを思い出した。


 その瞬間『約束は守らないといけないな』と思い、何とかして大学に通い始めた。


 とまあ、そこで何が起きたかはもう話したからそろそろ本題としよう。

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