初めての彼女、上嶋ほたる
高校に入ってすぐのこと。何の目標もない無気力な中学生だった自分は、なんとなく商業科の道に進んでいた
その学校には商業科の他にも普通科や調理科、看護科といったいろんな学科が存在し、学科外の知識も大切であろうと学校の考えがあったため、他の学科との講習も盛んだった。一環として毎朝礼拝堂に集い、くだらない先生たちの話を聞き、終わったあとは定期的に食事を振る舞われる交流会が行われる。
いちいち参加面倒臭かったが、そのおかげて今でも交流ある知り合いができたからなんやかんや良かったと思っている。
初めての交流会では、最も受験が受かりやすい普通科の子や将来の商売も考え親睦を深めようとする調理科の人間などが中心に話しかけてきた。自分の名前を聞いて名家の子と知るや否やほとんどの奴らは目の色を変えて接してくるのが多かった印象。
そんな中、遠目から睨む普通科の子がいて口の動きから「くだらん」と、無意識的に読み取ってしまい目を惹いた。
ある程度人がはけた後その子に話しかけた。彼女はしばらく自分を見つめたと思ったら、突然ニヤニヤと笑いだし「お前、意外と女々しい顔をしているナ」と可笑しなことを言い出したから、なんだこの異星人はと奇妙な印象を受けた。
その子は上嶋蛍と名乗り、特にそのあとは会話が盛り上がることもなく交流会は終わり、普通科の連中に何度か小突かれて、話かけなければ良かったと後悔した。
せめての救いがあったと言えば、クラスの人間の多くは真面目な性格だったから特に茶化されることもなく、地味に関係のこじれを引き起こす日直の仕事が、雑用マスターのおかけで潰れていたから、意外と無傷に充実した生活を送れていた。
学校生活が始まって一週間。最も恋愛話の花が咲き始める時期に、無理やりカップルを作ってデートしようとかいう、高校生の悪乗りに乗せられてしまったことがある。その時にクジ引きをやらされて、蛍と一緒に出掛けるハメになった。
どうせ、この時だけのネタだと軽く考えていて、当日行かないという人として最低なことをしてしまった。
後日、クジを引いたメンバーからコテンパンにされ「八時間も待たせて蛍が可哀そう」とか「男として最低」「約束も守れないのかよ」と中学の時に女子に言われて聞きなれ単語をばかりが並んでいたと記憶がある。だけど、蛍は悲しんだり、怒ったりするわけもなく、すげなく自分に「次はオマエが計画を立ててくれないカ」と淡々と次のことを指定してきた。
ガヤたちは「優しい」とか「今度は裏切るなよ」と釘を打たれて赦された。
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