第7話⁂王様の愛人⁂


「シチズンシティー」の中でもセレブ中のセレブ達ばかりの、「ハイソサエティ-エリア」に二十数年前に現れた絶世の美女マリリンは……どうも……王様が他の星に旅行した時に知り合った女性らしいが、ハッキリした事は分からない。


 その星と言うのは「ビューティー星」と言う星らしいのだが、真意の程は分からない。本当にそんな星ってあるの?


 この星「セルフィッシュ星」の猛者たちが、あれだけ果敢に宇宙探検に繰り出しているのも関わらず、そんな星がある事など一度たりとも聞いた事が無い。


 それも……名前のごとく美貌の星なので、究極の美人ぞろいと話に聞いている。


 血気盛んな若者猛者たちが、そんな美味しい星を見逃す筈が無いのだが?


 その絶世の美女マリリンの出現によって、一気に息を吹き返した「ハイソサエティ-エリア」なのだが、 二十数年前までは……なぁ~んか…冴えない・・・セレブといっても……しょうもない成金たちのるつぼで、元々はしがない農作業や畜産で細々と蓄えたお金を元手に、宝くじが当たったとか、高齢の親が車に跳ねられ死亡保険金が下りて、セレブ階級の仲間入りが出来たとか、運良くギャンブルで大金を手にしたとか・・


 だから…お洒落をして着飾ってはいるが……なぁ~んか……チグハグ。


 昨日まで農作業と家畜の世話に追われていた農民に、高級なダイヤや真珠を、これでもかと、しわだらけの首や農作業でボロボロに荒れた指に付けても宝石が泣くだけ。エステや整形でメンテナンスをしないと………。


 それに……姿勢の悪い、腰の曲がり掛けたおばさんに、貴婦人の様なドレスを着せても……とてもじゃないが、只の豚に真珠。


 こんなんじゃ……いくら「ハイソサエティ-エリア」と言っても、品位もへったくれも有ったもんじゃ無い。これでは一気に成金になった只の血迷った集団にしか映らない。


 ……そんな只の勘違いエセ「ハイソサエティ-エリア」に、二十数年前に現れた絶世の美女マリリンの出現によって、にわかに活気付き、王様の愛人絶世の美女マリリンを一目見ようと他の星の観光客が、まるで映画スタ―にでも会いに来たように、愛人宅を包囲している。

 

 だが……このマリリンにはとんでもない秘密が……?

 


 ◆▽◆

 この「シチズンシティー」は環境が良い事から、他の星からの観光客が後を絶たない。

 この星はまず第一に住みやすい環境と、昼夜の美しい景色が売りである。


 日中は空が地球と違いレインボウの空となる。赤、だいだい、黄、緑、青、あい、紫。それが一面空を覆い「シチズンシティー」が、一段と華やかになる。


 夜の「シチズンシティー」の宇宙空間は、すみれ色の星屑のかたまりや、さくら色の星屑のかたまりが鳥の羽のように交互に広がり渦を巻いて、まさに色鮮やかな星屑の風車と言ったところだ。


 更にもう一つの観光名所が酪農演芸場である。

 賢い牛や豚に芸をさせると言うもの。


 舞台に立った牛たちが笑顔を振りまき、お客様が「お手!」と言って手を出すと、お手をするらしいのだが「まさか?」


 ええええええええええええ⁈ナナナナ ナント!牛が懸命に顔を強張らせ目をつぶっている様な、口角を上げている様な、何とも言えない……でも……?よくよく見ると……笑顔に見えなくもない。


 更には牛たちが一列に並んで、モ―ウ、モ―ウ、モ―ウ、モ―ウと高音から順番に低音まで出して一番簡単な童謡「ふるさと」のワンフレ-ズを繰り返し歌っている。


 牛たちにすれば必死だ。いつ食われるか分かったもんじゃ無い。

 その為なら、顔を強張らせ笑顔を作ったり、お手をする事などお安い御用。


 自分たちの生死が掛かっているので、必死に愛想を振りまいてお客様に媚びている。全く、最近の牛たちもチャッカリしている。



 更には、豚の演芸もある。


 だが……困った事に……豚の演芸の場合は倍率が非常に高い。

 その理由は、配役が極力少ない為だ。


 演目は三匹の子豚。豚三匹とオオカミの四匹だけである。


 家畜として食べられたくない豚たちの中には、業者にワイロを送って役をゲットしようと企む豚まで現れている始末。要は配役に選ばれれば、食べられなくて済むからだ。


 更には激しい役の争奪戦が繰り広げられて、殺し合いにまで発展する始末。

 そこで酪農演芸場社長の計らいで、エキストラが追加された。


 アフレコ、声の吹き替えである。

 アフレコのブタたちも大変だ。


「オオカミさん怖い!キャ————ッ!」これだけの言葉をブタがしゃべるのは至難の業。


 それでも…家畜として食べられるよりはマシ。命がけで芸に打ち込んでいる。

「ブ-ブ-」としか言えないブタが、どのようにして、この難局を乗り越えたのか?


 どうも……鼻にテープを張り「ブ-ブ-」言わない様にして、口には、わっかを入れて発音できるように涙ぐましい努力の末、何とか分かるくらいに話せるようになった。


 それだけ……豚さん達も食べられたくないのだ。

 アフレコだけでは少な過ぎるので、それとコーラスも追加された。


 まぁ「ブ-ブ-」と雑音にしかならないとは思われるが、酪農演芸場社長も豚たちの熱意にほだされOKを出した。


それでも……酪農演芸場はいつも長蛇の列が出来て、この星一の観光名所となり、大層な人気を博している


◆▽◆

それでも……絶世の美女マリリンは一体何者なのか?






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